丸井は、強化カテゴリーのシューズを軸にしたオムニチャネル戦略で成果が出始めている。ナノ・オプトメディアが9月16日に開催した「ネット&スマートフォンコマース2016」でオムニ戦略について語った丸井の臼井毅オムニチャネル事業本部部長の講演から一部を抜粋して紹介する。
06年にスタートした同社の通販サイト「マルイウェブチャネル」は10周年を迎え、1日当たり約30万人が訪問し、年間約1億アクセスとなっている。EC売上高は16年3月期が約200億円となり、店舗で展開する食品やレストラン、カフェを除く全社売り上げに占めるEC化率は約10%で、プライベートブランド(PB)商品に限るとEC化率は22%まで高まっている。
この10年を3つに区切ると、EC開設からの5年間が第1フェーズで、実店舗やカードといったグループの資源を徹底的に活用してウェブ集客とEC会員化を図ってきた。具体的には、店頭精算時にEC利用の有無を確認し、利用がなければECで使用できるレシートクーポンを発行する取り組みを実施。今でも年間約5万人がレシートクーポン経由でECの新規会員になっている。
また、早い時期から実店舗とECの在庫連携を開始。EC在庫が欠品している場合は店頭在庫を引き当てており、店舗からEC倉庫に出荷する工程を経て、購入者に商品を届ける。その際、売り上げ成果は出荷店舗に反映することでブランド、ショップの協力を得ており、現在、1日当たり約1000点が店頭在庫を活用しているという。
丸井では、店舗で実際に商品を確認してから受け取れる「店舗受け取りサービス」を実施しているが、店頭で商品を受け取ったユーザーの30%が別の商品も購入しているほか、確認した商品をキャンセルした会員でも40%が別の商品を購入するなど、実店舗への送客効果が出ている。
また、通販サイトでは商品の店頭在庫の有無をリアルタイムで確認できるようにしており、同機能は1日当たり約1万クリックされ、とくにシューズなどSKU数の多いものほど事前に確認したいニーズが高いようだ。例えば、PB商品で人気の「ラクチンきれいブーツ」の場合、店頭在庫表示を確認したユーザーの11%が1週間以内に実店舗で当該商品を購入しているという。
丸井では、こうしたオムニ施策を推進するために、店頭取り扱い商品の約半数をリアルタイムで単品管理しており、取引先のアイテムで約40%、PBでは100%対応している。
半数が靴を購入
次いで、12~15年の第2フェーズでは、ECのアクティブ会員が100万人を突破。CRMの発想が浸透し、ECにおけるカスタマージャーニーマップに沿った施策の実施やツールを導入してきた。丸井のECでは、シューズをきっかけに関係が始まる会員は継続率が20%程度高まるのに加え、シューズだけでなく、アパレル商材などの複数アイテムを購入する顧客はさらに継続率が2倍になり、カード入会にもつながって、さらなるLTV(顧客生涯価値)の向上が図れるという。
こうした状況も踏まえ、同社ではシューズの品ぞろえを拡充しており、PB商品、取引先の商品を含めて3万~4万点を常時販売するほか、靴の送料と返品送料を無料にした"ラクチン便"を展開していることもあり、初めて「マルイウェブチャネル」を利用したユーザーの47%がシューズを購入しているようだ。
また、同社ではAIを活用したレコメンドエンジンをチームラボと組んで実現。店舗の購買履歴やECの閲覧・購入履歴、カード情報、商品基幹情報をDMP(データマネジメントプラットフォーム)に流し込んだ上で各ユーザーにレコメンドしており、導入から1年半でEC購入者のレコメンド閲覧率52%、レコメンド商品を購入した顧客が27%、レコメンドで1受注当たりの買い上げ点数20%増などの成果が得られているとする。
16年からの第3フェーズでは、EC利用のカギとなるシューズを軸にオムニ施策を強化。PBの婦人靴「ラクチンきれいシューズ」の体験ストアを全国のショッピングセンターを中心に展開中だ(画像)。
体験ストアは短期間のイベント出店で、人気商品すべてで20・5センチ~26・0センチまでの12サイズのサンプルを展示し、自由に試着できるようにしている。必要であれば靴に精通したスタッフが接客してぴったりの一足を提案。商品は店のタブレットや来店客のモバイル端末から注文し、後日、丸井のEC倉庫から自宅に送料無料で届ける。丸井では、体験ストアの成果が出ていることから、今年は専任チームが約60カ所を回る予定で、丸井店舗のないエリアではEC送客につなげる。