ディー・エヌ・エーでは7月1日付で、EC事業本部ショッピングモール事業部の事業部長に田中慎也氏が就任した。ショッピング統括部の統括部長を務めていた久我剛人氏は、EC事業本部に新設されたオンライングロッサリー事業部の事業部長となり、食品・日用品関連事業を担当。田中氏は仮想モール「DeNAショッピング」「auショッピングモール」を統括する。田中事業部長に就任後の取り組みや、同社仮想モールの課題などを聞いた。
DeNAショッピングの現状をどう分析する。
「フィーチャーフォン時代は若年層に強く、他社と差別化できており、言うなれば『エッジが立っていた』わけだ。ところが、スマートフォン時代になってエッジが立ちづらくなり、うまく取り込めていない。auショッピングモールを中心に、30~40代男女などさまざまな年齢層の顧客がいるのに、モールとしては若年層向けのアパレルに偏りがちになっており、バランスを取らなければならない」
「今までは『結果的に若年層に強かった』のであり、今はその部分が強みとして成り立っていない。例えばクルーズの『ショップリスト』に代表されるように、的を絞ったバーティカルなサービスがトレンドとなっているが、こうしたエッジの立ったサービスと比較すると集客面で劣っている部分がある。総合モールとしてのありかたを再定義しなければならない」
集客で劣っている面とは。
「DeNAショッピングへ来店するための理由付けが弱い。総合モールとしての体裁をどこまで維持するかという問題はあるが、エッジの立ったサービスを提供し、他社のバーティカルなサービスに負けないようにしなければいけない。食品・日用品での取り組みもその一つだが、それ以外の領域でも『これを買うならDeNAショッピング』という世界観を築く必要がある。全体最適というよりも、部分最適でエッジを作ることを意識している。総合モールの形を崩すつもりはないが、エッジが立った専門店の集合体が理想だ」
具体的にどんな取り組みをしているのか。
「モール内に埋もれている商材を当社が見付けて積極的にアピールする。これまでの企画やキャンペーンは若年層向けに偏りがちで、例えば男性なら『オラオラ系』などが対象となったり、色がついていた。今後は男女・年齢別にセグメントを細かく切って出し分けたり、企画の本数自体を増やしたりしていく。プラットフォーマーとしての公平性は担保するが、『自分たちが売りたいもの』を押し出すための組織変更を進めている」
「また、DeNAショッピングとauショッピングモールの顧客層はまったく違うので、色分けをもっときちんとする必要がある。これまでは男女で企画を出し分けるくらいで、例えば若い層にはアパレル、上の年齢層にはグルメ、といったアプローチができていなかった。auウォレットも含めて、KDDIさんのリソースは強力なので、しっかり活かしたい。auショッピングモールのトラフィックは増えているが、まだまだ伸びる余地はあると思う」
DeNAが売りたいものとは。
「これまでは店舗が売りたい商品を広告などで支援してきたわけだが、モール主体の企画やセールをスピーディーに進めていったり、『こんな商品はありませんか』など、担当のアドバイザーが商材ベースで店舗と話をして、売れ筋商品を発掘したり、といった取り組みを進めていく」
店舗担当のアドバイザーで変えた部分は。
「モールの流通額を伸ばしたり、色を付けたりといった部分に人を投入する。商品を発掘するなど、流通企画的な仕事をするアドバイザーについては、大手を中心に担当店舗を1人40~50程度に絞った。それ以外の中小店舗を担当するアドバイザーは担当店舗が増えている。ただ、後者もコミュニケーションの回数は増やして、小さめの広告を買っていただくなど、きちんと支援していく」
(つづく)