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ネットプライスドットコム・再浮上なるか?②  "価格以外の価値"を

2012年11月15日 14:10

 2期連続の連結赤字となり苦闘を続けているネットプライスドットコムだが、佐藤社長は「今期に関しては自分たちの中で成長しか考えていない」と話す。グループ全体のテーマを「再拡大」として臨む今期(2013年9月期)は、「もがき苦しみいろいろやってきたことを、すべて事業成果につなげていく年」(佐藤社長)と位置付ける。黒字転換を目指す同社の戦略について、グループの中で売上高構成比55・5%を占める主力企業ネットプライスの取り組みを通して見ていく。

 前回取り上げたように、ネットプライスは昨年4月から前期末(12年9月)まで1年半かけて事業モデルの転換を行ってきた。価格だけではなく、"価格以外の価値"を提供することで顧客に喜んでもらい、結果的にネット販売事業で他社と差別化を図るのが狙いだ。

 "価格以外の価値"の提供として取り組んでいるのが、オリジナル商品の強化。顧客の声を取り入れながらメーカーと共同開発している商品群で、前期末時点で全体の受注比率で8・4%を占めている。他では扱わない商材を展開することでサイトの独自性を高め、商品粗利率を改善する狙いがある。実際、9月末の商品粗利率を見ると36・1%と1年前に比べ2・5ポイント上昇している。

 オリジナル商品の展開では、健康食品や化粧品といった商材で購入した顧客をリピートにつなげる仕掛けにも着手。9月から同社では初めて定期購入の仕組みを導入した。定期購入は「送料無料・10%OFF」とし、オリジナル商品の継続的な販売につなげていく考え。

 このように「提供価値の転換」(佐藤社長)に取り組んでいるネットプライス。もっとも、価格での訴求を捨てたわけではない。「価格と価値のバランスが大事」(同)というように、単に商品のオリジナリティだけを追求するのではなく、価格訴求により購買活動を促進させる戦略をとっている。

 例えば購入数量が増えるほど価格が安くなる「ギャザリング」や、「24バリュー」というタイムセールなど同社が得意とする「安売り」の仕掛けを活用して集客のフックにすることで、高単価の商品や粗利率の高いオリジナル商品のまとめ買いにつなげようというわけだ。

 実際、昨年から5000円以上購入で送料を無料にしていることもあり、「ギャザリング」などで単価の安い商品を買った顧客が送料を無料にしようと粗利の高い商品を合わせて購入するケースが増えており、1年間でまとめ買いの点数は20%程度増加しているようだ。

 佐藤社長は前期について「提供する商品の価値についてボケていたものを定め直した。それは大層時間がかかり、覚悟がいる転換だった。成長に向けて必要なことをやり切れたと思っている」と振り返る。

 「安売り」路線からの方針転換は「売り上げが半分になってもいいと腹を決めていた」(佐藤社長)という大きな決断。果たしてそれが「英断」となるか、あるいは「誤算」となるか。10月に入ってから数値的には好調としているが、いずれにせよ年末商戦の成否が今後の浮沈を占う1つのカギとなりそうだ。(つづく)

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