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〈有力ECの「メルカリ」戦略〉①「甲羅組」の伝食は「売上金」需要取り込む、年齢層は大きく変わらず

2025年 4月24日 12:00

 カニなどを販売する「越前かに職人甲羅組」の伝食が、フリマアプリ「メルカリ」上のECプラットフォーム「メルカリShops」で売り上げを伸ばしている。2月には、メルカリShopsにおける優秀店舗を表彰する「メルカリShopsアワード2024」において、総合3位を受賞。「メルカリ」における「売上金」の使い道として、同社が扱う海産物の需要が高まっているようだ。

 同社がメルカリShopsに出店したのは2022年10月。もともと「メルカリ」で不用品を販売する機会の多かった、通信販売部通販運営企画課・福地志穂美課長代理の発案だという。「『メルカリ』で何か売れると『売上金はどうしようか』となる。銀行口座に振り込むと手数料がかかってしまうわけで、私自身は貯まった売上金を『メルカリ』での購入に充てていた。他にもそういう人は多いだろうから、甲羅組としてメルカリShopsに出店すれば、購入するというよりも、売上金と『交換』する需要が生まれるのではないかと考えた」と振り返る。まだ食品を販売するEC事業者の出店が多くなかったことも後押しとなったという。

 「新規顧客を獲得したいのはもちろんだが、いつもは楽天市場やヤフーショッピングで購入しているユーザーでも、『メルカリ』の売上金の使い道に困ったら1つの経済圏にこだわらず、当社の商品と『交換』できるような仕組みが作りたかった。例えば、ちょっと値段高くて手出なかったカニがあったとして、大掃除を頑張って不用品が『メルカリ』で売れたし、売上金で交換しよう、となってくれれば」(福地氏、以下同)。

 22年10月に出店してから、売り上げはすぐに伸びたという。「他の仮想モールはリピーターが70%程度を占めることが多いが、メルカリShopsの場合は新規がほぼ半数を占めている」のが大きな特徴だ。もちろん、新規の中には他の仮想モールで購入経験のあるユーザーも多く含まれているとみられるが、当初の目的は達しているようだ。

 顧客層としては、「もっと若いかと思っていたが、ふたを開けてみれば、40代以降が多い他の仮想モールより、やや平均年齢が低い程度」で、30代後半が目立つという。

 一方、購入単価については、Qoo10を除く他の仮想モール店舗に比べると、かなり低くなっている。福地氏は「売上金を使う目的ということもあるのか、安い商品を探しているユーザーが多い傾向にある。他の仮想モールはカニが売れる時期は購入単価1万円を超えることもあるが、メルカリShopsは頑張っても4000円程度。2~3000円という月もあるので、とにかく数をこなすしかないという印象だ」と明かす。

 特に、昨年は「訳ありホタテ」が好調に推移。カニに関しても、そのまま1杯買うというよりも、ほぐした身のパック商品などが売れ筋。「他の仮想モールでは売れるのに、メルカリShopsではあまり動かない」という商品も珍しくない。福地氏は「年齢層の問題かと思っていたが、『お金の出どころ』が大きいのではないか」と分析。つまり「売上金ありき」で購入するユーザーが非常に多い、ということだ。

 単価が著しく低いということへの社内での評価はどうなのか。「『単価の向上』が議題に挙がることもあるが、それは顧客次第という面が大きい。それよりも『他の仮想モールであまり動いてない商品が売れるのであれば、そちらで伸ばしていけば良いのでは』という雰囲気になってきている」。(つづく)
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