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メルカリ子会社 「メルカリShops」本格展開、先行出店は好調に推移

2021年10月14日 13:00

 メルカリ子会社で新規事業の企画開発を手掛けるソウゾウは10月7日、簡単にネットショップを開設できるプラットフォーム「メルカリShops」の本格提供を開始した。個人・法人を問わず出店が可能となるほか、「メルカリ」の配送サービス「らくらくメルカリ便」にも対応し、販売可能な商品の幅も拡大する。

 7月28日から試験提供を開始していた。同社の石川佑樹CEO(=顔写真)は、事業者からの反応について「想定以上の反響があった。実際に使ってもらう中で、売れる体験をしてもらい、『簡単に出品できる』という点も伝わっているのではないか。非常に手応えを感じている」と述べた。

 クリエイターや生産者、小規模事業者を中心に先行出店を受け付けており、約2カ月間で、農家、漁師、街の飲食店、地方の特産品、ハンドメイド、アパレル、雑貨など、日本全国津々浦々の個人・法人がネットショップを開設している。老舗和菓子屋や伝統工芸品を扱う店などの出店もあった。

 このうち、初めてネット販売を手掛ける店舗は57%。初めてネット販売に取り組んだ、ある山形県のショップは、1カ月で月商1000万円を達成した。また、60%以上が地方から発送されていた。出店者からは「出品・販売が『メルカリ』の延長線上で簡単だった」「すぐに売れたので嬉しかった」「同じものを出品するのに在庫数を増やすだけなので、再出品に時間が掛からずとても便利だった」といった声があったという。

 プレオープン期間の出店者数や売上額の平均、今後の出店者数の目標については非公表。石川CEOは「初めての人でも使えるようにハードルを下げた点や、独自の集客策無しでも売れるという体験をサービスとして提供していくことで、1店舗あたりの月商を上げていきたい」とする。

 本格展開にあたり、機能を拡充した。らくらくメルカリ便に対応したことで、配送料は全国一律料金となったほか、匿名配送に対応、あて名書きは不要となった。また、酒類の取り扱いを開始。今後もカテゴリーを拡充していく。さらに、フォロー機能を設けたことで、フォローした店舗が出品すると通知が届くようになった。

 今後は、送り状の一括発行手続きをはじめ、大口個数の対応を可能にするなど、らくらくメルカリ便を事業者向けに機能改善。クール便にも対応する。その他、メルカリアプリとは別に、店舗のウェブページを作れるようにするほか、まとめて配送先情報のダウンロードや、一括商品登録ができるようにするなど、パソコンでの出品管理にも対応する。

 10月7日~12月31日まで、全出店者対象に販売手数料を無料とする。また、「デジタルの日」にあわせて、10月7日~10月13日まで、東京・渋谷のセンター街周辺の空き店舗シャッター4カ所に、メルカリShops出店者の実店舗を再現した”3D店舗”を設けた(=写真)。

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 同日開催された発表会では、先行出店で売り上げを伸ばしている店舗が紹介された。熊本県の果物農家「ハナウタカジツ」は、3日で20万円を売り上げた。専門店とコラボレーションした果実を使ったクラフトコーラも人気となっている。同店の片山和洋氏は「自社通販サイトも運営しているが、自社サイトは『山の上の一軒家』のようなもので、集客はとても難しい。メルカリShopsは『メルカリ』2000万人ユーザー向けに売れるので、店を知ってもらうきっかけが多いのではないかと思い、出店した。これまで全く接点の無かった人たちと出会えるのはとても魅力的だ」と話す。

 スマホアプリ上での買い物であることから、文字を大きく表記することで目立たせているという。また、「農家がおすすめする農家を紹介すれば、良い商品に出会えるのではないか」という考えから、発送する際に友人の農家のショップカードを入れるといった工夫もしている。

 片山氏は「農作業中でも対応できるので、スマホ上で完結するのはすごく便利。顧客からのレビューに対して、店舗側から何か反応ができるようになると良いのではないか」とする。

 岐阜県のトマト農家「まるかじり農園」は、初めてのネット販売となるが、6日間で約10万円を売り上げた。同店の「岐阜県高山市のふるさと納税返礼品にエントリーしたが、『次の販売につなげるためには通販サイトが必要だ』という妻からのアドバイスがあり、ECを検討していた。仮想モールはセールへの対応などが大変だし、なるべく手間のかからない手法を考えていたところ、タイミング良くメルカリShopsが始まった」(同店の石垣拓氏)。

 やはり、スマホで完結している点が便利という。畑にいる際に品切れになった場合でも、在庫を追加するといった対応が即時できるためだ。トマトを入れるためのオリジナルデザインの箱を用意したり、「食べ頃のトマトの見分け方」を記したチラシを同梱したりといった工夫をしている。

 トマトは年間通して生産できないことから、今後は青いトマトを使った商品や、トマトによる染め物などを販売することで、「ネット販売を活用し、1年中稼げる仕組みを構築したい」という。
 
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