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GROUND 「AMR」を実運用、人と協働型の物流ロボット、ピッキング生産性2倍に

2019年10月24日 15:00

 GROUNDは、開発を進めてきた倉庫内でのピッキング作業用の「自律型協働ロボット Autonomous MobileRobot(AMR)」(写真㊤)の実際の運用を間もなく始める。人(作業員)とロボットが倉庫内の動線を共有してピッキング作業を効率的に行えるようにするもので、作業員1人当たりにロボット3台を割り当てることでピッキング作業の生産性を2倍に引き上げることができるという。衣料品ECのフルフィルメントサービスなどを展開するダイヤモンドヘッドが11月に30台を導入し、国内初となるAMRの実稼働に取り組む。今後は中堅規模のアパレルや日用雑貨のEC事業者へ広めていく考え。

 AMRは多種の商品を格納している複数の棚から注文商品をピッキングする作業を人と協働して効率化を図るロボット。人件費の高騰をはじめ、人材確保が困難になっている状況の中でピッキング作業の省力化、作業の軽減化につなげられるソリューションとして提供する。

 導入先は倉庫の通路幅(棚と棚との間の幅)が1・3メートル(AMRが他のAMRと接触せず行き来できる幅)あれば運用が可能。倉庫内のロケーションを大幅な変更や特別な工事を施さず(返却時の復旧が不要)に運用できるのが大きな特徴だ。このため導入も短期間で行えるほか、倉庫の賃貸期間が短い場合に別の拠点へ移動しても迅速に移設して再稼働できる。GROUNDが推奨している物流ロボットの次世型物流シェアリングモデルやサブスクリプションにも有効な設備としている。

 AMRと人とのピッキング作業の流れは、まず倉庫管理システム(WMS)から複数の顧客のオーダーデータをクラウドを介してAMRへ引き渡す。この際、ピッキングに関するデータは複数のAMRが一定の箇所に集中したり、人の動きが多くなったりしないようアルゴリズムによって最適化して3台のAMRが稼働するようにデータ配分を行うという。なおクラウドを介することでサーバーが不要となり、コスト低減につなげることができるという。次に作業員はAMRに搭載した顧客ごとに分けた複数のバスケットに貼付したバーコードをAMRに搭載したスキャナーで読み取る(バスケットとオーダーの紐づけを行う)。

 3台のAMRは、ピッキングすべき商品のある棚の前まで自律走行して移動。作業員は、1台のAMRが移動した棚まで進み、AMRに備えたタブレットのモニターに表示した商品(商品の名称と写真)と個数、該当バスケットを確認して、その商品をピッキングすする。

 そして、その商品をスキャナーで読み取り確認ボタンを押しバスケットへ投入する。なお違った商品をスキャンした場合、確認ボタンが押すことができないようになってミスを防ぐ仕組みになっている。

 この作業が終了するとAMRは次のピッキングする商品の棚へと移動するが、作業員はこのAMRを追跡する必要はなく、近くでピッキングを待機している別のAMRのところ移動して同様にピッキングする(写真㊦)。

 このAMRの移動と作業員のピッキングを繰り返すのが基本的な作業工程となる。熟練を要する作業でなく、ピッキングミスも抑制できることから、その日に初めて作業に携わるような人であっても10~15分で習得可能。作業員の教育が不要で、初めてのアルバイトも即戦力とすることができるという。

 従来のピッキングはハンディーターミナルなどを片手にカートを押し該当商品のある棚を探し当てながらというのが一般的だったが、そのような手間を省き2倍の生産性の実現をARMで可能にするという。

 AMRは積載重量の上限が45キログラム、速度は秒速1・3メートル。充電時間2時間で8時間の稼働ができる。導入費用は1台当たり約350万円から。1つのケースとして、30台を導入した場合は総額約1億円程度の費用となり、年間のランニングコストは1500万円程度。30台導入することで、従来20人の作業員を半数の10人削減してピッキング作業が行えることになる。

 GROUNDはAMRの開発を昨年8月から始めた。約1300平方メートル(約400坪)の倉庫で実証実験を行い、1人に対して最適なロボット台数の割り出しや、商品カテゴリーの違いによる1オーダー当たりの点数の相違なども配慮してAMRの有効な利用法を検証してきた。その結果、作業員1人とAMR3台での運用が最適と判断した。

 同社の主力商品である可搬式棚を移動させる物流ロボット「バトラー」は規模が大きい事業者向けのモデルだが、AMRは迅速に導入できる点や施設の特別な工事が不要なことから、中堅規模の事業者も取り入れやすいモデルとして普及を目指す。

 
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