DoCLASSE(ドゥクラッセ)は6月22日、東京・新宿のファッションビル「新宿アルタ」にグループの大型店舗を開設した。統一感のある店舗デザインや新たな商品の見せ方、幅広い品ぞろえなどで新規顧客層の開拓にも挑み、当該店で2019年7月期にアパレルブランド「ドゥクラッセ」のレディースで9億5000万円、メンズで2億5000万円、婦人靴の「フィットフィット」で2億2000万円、合計14億2000万円の売上高を目標とする。
同社は前期(17年7月期)のグループ売上高が前年比35%増の210億円に拡大。とくに主力ブランドのドゥクラッセは通販売り上げの比率が高いものの、ブランド認知向上や新客開拓、スケールメリット追求などを目指して実店舗の拡大にも本腰を入れている。
ただ、ドゥクラッセ1店舗当たりの売り上げは約1億6000万円、平均売り場面積は約115平方メートルで、有名セレクトショップやファストファッションブランドと比較すると大きな差があるという。
そこで、ドゥクラッセは店舗の大型化を推進。今回の新店は新宿アルタ1階の大部分を占めており、婦人服が約340平方メートル、紳士服が約142平方メートル、婦人靴が約70平方メートル、合計面積は約552平方メートルと過去最大の店舗で、同店の成功を足がかりに大都市での大型店開発に力を注ぐ。
新宿アルタ店のドゥクラッセについては、婦人服の商品面では売り場が広い分、各カテゴリーで従来店舗よりも品ぞろえの幅を広げる。商品自体は既存ターゲット層(ミドルエイジ)向けだが、若干若めの消費者にも受け入れられやすいスタイルで表現する。
VMDの面では、若めの層にも響きやすい少しトレンド寄りのファッションアイテムをマネキンが着用して見せる商品ステージを設置(画像(上))。店の入り口正面から奥のメンズ売り場に向けて一直線に商品ステージを並べ、ステージの高さを徐々に高くすることで奥まで見通しがきく工夫をしている。また、メンズ売り場には夫婦で来店した男性客が休憩できるコーナーも設けている。
店舗オペレーションについては、ファストファッションブランドで大型店の運営に慣れた人材を新たに採用したほか、ドゥクラッセだけでスタッフ20人体制で臨む。
一方のフィットフィットも都内の既存店から精鋭を新店に集めて8人体制でスタート。次の成長に向けた店作りとして、婦人靴の売り場もドゥクラッセとの統一感を持たせつつ、ブランドカラーの赤が印象的な売り場とした。これまでもドゥクラッセと隣接した店舗展開はあるがグループで一体化した店舗は初めてで、靴に合わせた服や、服に合わせた靴も提案し、両ブランドで相互送客につなげる。
また、新宿アルタ店では靴がよりきれいに見える陳列を意識。靴を棚に一列に並べるのではなく、"しずく"をモチーフにした什器で見せたり、カテゴリーの近いアイテムを同じエリアに配置することで、好きなテイストの靴を探しやすくする工夫も施した(画像(下))。
商品面では、フィットフィットの主要顧客層は40~60代女性だが、少し若い層の開拓も狙い、通販チャネルと新宿アルタ店だけで展開する商品として、夏らしい水玉のようなパンチングがさわやかなウエッジサンダルとフラットパンプニーカーの2型を投入。フィットフィットは税別9900円~1万3000円くらいの靴が多いが、両アイテムは同8900円とより試しやすい価格で提案する。
新宿アルタ店は19年7月期にグループ合計14億円強の売上高を目標に掲げる。西の旗艦店として店舗事業をけん引する大丸梅田店はドゥクラッセが年商約6億円、フィットフィットが同約3億円規模だが、乗降客数世界一と言われる新宿駅近くに立地し、店前通行量の多い新宿アルタのポテンシャルや売り場面積を考慮し、新店では大丸梅田店を大きく上回る売り上げを目指す。
アルタで第二の青春を
<林社長との一問一答>
過去最大面積の店舗を開設したドゥクラッセの林恵子社長(写真)に、新宿アルタ店にかける思いや新たな挑戦などを聞いた。
――新宿アルタに店舗を開設した。
「いまの50代が20代だった頃の新宿はディスコやジャズ喫茶もあってイケてる街だったみんなが新宿アルタの前で待ち合わせをした。その年代は子どもも巣立ち、夫婦ふたりの生活に戻って第二の青春を楽しむとき。新店は『またアルタで逢おうね!』を合言葉に第二の青春を輝かせる手助けができたらいい」
――過去最大面積の店舗だ。
「ブランドの世界観が出せるお店を目指している。当社は単品として強い商材と、スタイリングで面白くなるアイテムの2種類がある。通販カタログではそのふたつを同時に表現できるが、当社が展開するほとんどの実店舗では坪数が足りず、十分に特徴を打ち出せていない。大型店を開設することで分かりやすくなる。カタログを見なくても、"実年齢で輝く"というブランドコンセプトを体現できるお店にしたい」
――買いやすい価格帯も強みのひとつだ。
「当社ブランドの価格帯であれば、自由に商品を見て試着をしてもらった上で、今までチャレンジしたことのないスタイリングやアイテムにも挑戦しやすい。若者の特権ではなく、幅広い年齢層にファッションを楽しんでもらいたい。意外性のあるスタイリングも提案し、お客様から『ドキドキする』『わくわくする』と言われるお店を目指す」
――MDや見せ方だけでなく、オペレーションも大変だ。
「ここまで大きなお店は初めてで、オペレーションも含めて大変だが、創業してからの11年間、初めてのことばかりだった。最初からうまくいくとは思っていない。やり続けて少しずつ前進すればいい。大丸梅田店も最初は自信がなかった。失敗ばかりでも、ひとつずつ学習することで何か新しいものが見えてくると信じて突き進んできた」
――18年7月期はグループで売上高282億円を掲げるが、順調に伸びていると聞く。
「実店舗が増えていることもあるが、物作りを頑張っている。『良い商品を安く』という部分では以前よりも少しは力がついてきたし、その価値を伝える能力も進歩してきている。あとは、お客様が欲しいときに欲しい商品がないといけないが、ここは非常に奥が深く、少しずつだがさまざまなやり方をトライ&エラーで挑戦している。こうした取り組みがすべてそろってきたことが、順調な業績につながっている」
――さらなる成長に向けた課題は。
「新聞広告に本格的に取り組んで約4年が経ち、広告活用の仕方はうまくなってきた。お客様のことを理解し各部署の連携も良くなってきた。一方で、新聞は年配の人しか読まない媒体になってきていて、想定以上に高年齢に片寄っている。顧客層として45歳~65歳をメインにしたいが、想定よりも年配の方が増えている。新聞を活用しながら、実店舗やECでも新客をしっかり獲得しなければいけないし、テレビCMなども検討していく」