中堅アパレルのフランドルは、経営戦略の重点テーマにEC強化を掲げ、現状は1割程度のEC化率を中期的に3割に引き上げる。ECへの在庫投入拡大はもちろん、オムニチャネル化に向けたシステム面や人材面、商品面のそれぞれで投資を行っていく。自社通販サイトの売り上げ拡大を目指して「会員を徹底的に優遇して囲い込む」と語る栗田貴史社長(=写真)に、足もとの取り組み状況や自社ECの方向性などについて聞いた。 (聞き手は本紙記者・神崎郁夫)
――販路別の売上高構成比は。
「主販路の百貨店は大手が店舗閉鎖を相次いで発表するなど厳しい事業環境が続いている。当社は百貨店での売り上げが80%を占めていたが、今は60%程度だ。アウトレットやファッションビル(FB)、ショッピングセンター(SC)が約30%で、ECは10%程度にとどまっている。中期ビジョンではECを強化して全体の30%に引き上げ、百貨店が35%、FBとSCなどで35%と販売チャネルのバランスをとっていく」――自社通販サイトの現状は。
「8年前に『フランドルオンラインストア』を開設し、数値目標だけを与えてECの拡大に取り組んできたが、担当部署だけの頑張りで目標を達成するのは難しくなっている。会社全体として、ウェブで商売をするための戦略立案や意識改革、在庫配分も含めて取り組まないとEC化率は上がらない」――ECの売り上げは伸びているのか。
「今期(17年2月期)は、ブランド統廃合の影響や在庫配分の問題もあって上期は大きく凹んだ。下期は専門知識がある人材の登用や、商材面などのテコ入れも行い、戻してきている」
――組織面は。
「昨年7月にEC強化に向けたプロジェクトを発足させた。企画、営業などの役員やEC担当者が参加し、具体的な目標設定や課題抽出と解決策をほぼ隔週で話し合い、会社全体として動けるようにした。下期が始まった9月には、EC部門を社長直轄としたことで、全従業員に『ECにもっと踏み込む』というメッセージを発信した」――社員のベクトルはすぐに合ったのか。
「当初はハレーション(副作用)があった。これまでの取引先や売り上げ、自分の部下などを守りたい気持ちは分かるが、業績を伸ばすためにはチャネルの軸足を移すことが必要で、各ブランドには会社の将来像を示しながら一から説明し、意識改革というか、巻き込んでいくことにした。ただ、在庫がなければ始まらないので、まずは大号令をかけてECの在庫配分を増やした」
――店頭販売員の意識改革も不可欠だ。
「昨年10月に、店頭スタッフが自ら撮ったスタイリング写真を自社通販サイトに投稿できるアプリを導入した。コーデ画像経由でどれくらい通販サイトの売り上げに貢献したか把握でき、店舗やスタッフを表彰することで、投稿のモチベーションにもつながる。今年から本格始動するので、スタイリング写真というコンテンツ資産を店頭でも活用していきたい」――オムニ化に向けた基盤整備の現状は。
「在庫連動や顧客情報の統合といった基礎的な部分がまだ整っていない。ネット用の在庫はファッションECモールとの連携を本格化させているところだ」――ECへの投資は。
「在庫連携などを強化するためにもシステム投資は欠かせない。今年中にも会社の基幹システムとECシステムのつなぎ込みを実施したい。外部からスペシャリストを採用したり、商品面への投資も必要になる。ECの成長スピードを速める上で、ファッションEC専業を買収することも選択肢としてはあり得る」――自社ECでは品ぞろえを広げている。
「自社のファッションブランド以外では、取引先の織物工場が展開する犬用のレインコートや、フェアトレードのバラなども販売している。工場が発信するファクトリーブランドはウェブとの親和性も高いし、ファッションに近いところではコスメなどもあればいい。『良い商品を適正な価格で提供する』という当社のポリシーに賛同してもらえる企業とのコラボは積極的に行い、コンテンツを増やしていく」
――自社ブランドのEC限定品などは。
「昨年、SC向けブランド『クリアインプレッション』のほぼ全商品で13号、15号という大きいサイズをEC限定で展開したところ、ブランドのEC売り上げが前年比で約60%伸びた。実店舗では百貨店などの売り場が縮小していて、欧米のファストファッションにとられている市場だ。買い上げ率や顧客定着率も高く、サイズのマーケットはもっと開拓していく」――素材を含めた商品開発に力を注いでいる。
「ファストファッションが上陸した時点で、デザインで稼げる時代は終わった。消費者から求められる以上のスペックで商品を出さなければダメ。ECで買いやすい価格帯の商品開発も行うが、その場合もクオリティーは競合が展開する商品よりも上質で、その価格でできる最大限の物作りを行うのが当社の考え方だ。ゆくゆくは、既存の自社ブランドとバッティングしない、単品アイテムに特化したウェブ専用ブランドを開発し、ボリュームプライスゾーンに打って出てワンアイテムで稼ぐような展開も面白い」
――自社ECの会員獲得策については。
「『フランドルオンラインストア』の会員は徹底的に優遇していく。明らかに便利であるとか、差別化されていないと大手のECモールには勝てない。年始のセールでは、初日の1月1日だけは自社EC会員限定でサイトに入れるようにし、さらに、上位顧客は優先的に入場できるようにした。初日のEC売り上げは昨年よりも60%伸びた。徹底的に差別していくことを明示することでファッションECモールからもユーザーを取り込みたい。事前に告知をすることで、新規会員登録数も伸びた。
――販路別の売上高構成比は。
「主販路の百貨店は大手が店舗閉鎖を相次いで発表するなど厳しい事業環境が続いている。当社は百貨店での売り上げが80%を占めていたが、今は60%程度だ。アウトレットやファッションビル(FB)、ショッピングセンター(SC)が約30%で、ECは10%程度にとどまっている。中期ビジョンではECを強化して全体の30%に引き上げ、百貨店が35%、FBとSCなどで35%と販売チャネルのバランスをとっていく」
――自社通販サイトの現状は。
「8年前に『フランドルオンラインストア』を開設し、数値目標だけを与えてECの拡大に取り組んできたが、担当部署だけの頑張りで目標を達成するのは難しくなっている。会社全体として、ウェブで商売をするための戦略立案や意識改革、在庫配分も含めて取り組まないとEC化率は上がらない」
――ECの売り上げは伸びているのか。
「今期(17年2月期)は、ブランド統廃合の影響や在庫配分の問題もあって上期は大きく凹んだ。下期は専門知識がある人材の登用や、商材面などのテコ入れも行い、戻してきている」
――組織面は。
「昨年7月にEC強化に向けたプロジェクトを発足させた。企画、営業などの役員やEC担当者が参加し、具体的な目標設定や課題抽出と解決策をほぼ隔週で話し合い、会社全体として動けるようにした。下期が始まった9月には、EC部門を社長直轄としたことで、全従業員に『ECにもっと踏み込む』というメッセージを発信した」
――社員のベクトルはすぐに合ったのか。
「当初はハレーション(副作用)があった。これまでの取引先や売り上げ、自分の部下などを守りたい気持ちは分かるが、業績を伸ばすためにはチャネルの軸足を移すことが必要で、各ブランドには会社の将来像を示しながら一から説明し、意識改革というか、巻き込んでいくことにした。ただ、在庫がなければ始まらないので、まずは大号令をかけてECの在庫配分を増やした」
――店頭販売員の意識改革も不可欠だ。
「昨年10月に、店頭スタッフが自ら撮ったスタイリング写真を自社通販サイトに投稿できるアプリを導入した。コーデ画像経由でどれくらい通販サイトの売り上げに貢献したか把握でき、店舗やスタッフを表彰することで、投稿のモチベーションにもつながる。今年から本格始動するので、スタイリング写真というコンテンツ資産を店頭でも活用していきたい」
――オムニ化に向けた基盤整備の現状は。
「在庫連動や顧客情報の統合といった基礎的な部分がまだ整っていない。ネット用の在庫はファッションECモールとの連携を本格化させているところだ」
――ECへの投資は。
「在庫連携などを強化するためにもシステム投資は欠かせない。今年中にも会社の基幹システムとECシステムのつなぎ込みを実施したい。外部からスペシャリストを採用したり、商品面への投資も必要になる。ECの成長スピードを速める上で、ファッションEC専業を買収することも選択肢としてはあり得る」
――自社ECでは品ぞろえを広げている。
「自社のファッションブランド以外では、取引先の織物工場が展開する犬用のレインコートや、フェアトレードのバラなども販売している。工場が発信するファクトリーブランドはウェブとの親和性も高いし、ファッションに近いところではコスメなどもあればいい。『良い商品を適正な価格で提供する』という当社のポリシーに賛同してもらえる企業とのコラボは積極的に行い、コンテンツを増やしていく」
――自社ブランドのEC限定品などは。
「昨年、SC向けブランド『クリアインプレッション』のほぼ全商品で13号、15号という大きいサイズをEC限定で展開したところ、ブランドのEC売り上げが前年比で約60%伸びた。実店舗では百貨店などの売り場が縮小していて、欧米のファストファッションにとられている市場だ。買い上げ率や顧客定着率も高く、サイズのマーケットはもっと開拓していく」
――素材を含めた商品開発に力を注いでいる。
「ファストファッションが上陸した時点で、デザインで稼げる時代は終わった。消費者から求められる以上のスペックで商品を出さなければダメ。ECで買いやすい価格帯の商品開発も行うが、その場合もクオリティーは競合が展開する商品よりも上質で、その価格でできる最大限の物作りを行うのが当社の考え方だ。ゆくゆくは、既存の自社ブランドとバッティングしない、単品アイテムに特化したウェブ専用ブランドを開発し、ボリュームプライスゾーンに打って出てワンアイテムで稼ぐような展開も面白い」
――自社ECの会員獲得策については。
「『フランドルオンラインストア』の会員は徹底的に優遇していく。明らかに便利であるとか、差別化されていないと大手のECモールには勝てない。年始のセールでは、初日の1月1日だけは自社EC会員限定でサイトに入れるようにし、さらに、上位顧客は優先的に入場できるようにした。初日のEC売り上げは昨年よりも60%伸びた。徹底的に差別していくことを明示することでファッションECモールからもユーザーを取り込みたい。事前に告知をすることで、新規会員登録数も伸びた。