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注目分野の通販の状況は?<ジャンル別通販売上高ランキング>

2024年 8月22日 12:00

 通販新聞社は8月、「第82回通販・通教売上高ランキング調査」を実施し、売上上位300社の通販売上高を調査し、ランキングを発表した(第1952号参照)。当該ランキングの中から、「総合通販」「家電」「家具」「メーカー系通販」を展開する上位の通販実施企業の直近の売上高を記載したランキング表を掲載しつつ、各分野の主要プレイヤーの状況と各市場の動向などを見ていく。

 
TV通販は堅調、総合大手は苦戦

<総合通販>

 テレビや紙媒体での総合通販(インターネット通販専業除く)を展開する通販事業者のうち、売上高上位10社を抜粋した。その中から注目すべき各社の前期の状況を見ていく。

 1位のジュピターショップチャンネルはファッションに特化した専用スタジオを活用した演出面の工夫による訴求力アップなどで主力のファッションアイテムの売れ行きが伸びた。コロナ禍の収束に伴う外出需要の高まりから化粧品や阪急交通社と連携して前年から本格化したクルーズや国内・海外旅行の売り上げも伸びた。加えて、ウェブ広告の展開を強化したことなどで新規顧客獲得も堅調で増収に寄与した。

 3位のベルーナは主力事業となるアパレル・雑貨事業は2桁減収に。円安や原材料・資材価格高騰の影響で、仕入れ原価とカタログ・チラシ等の紙媒体費用が上昇。値上げや紙媒体の発行数量抑制を行ったことで、単価は上昇したものの、受注件数は鈍化。さらに、紙媒体の数量を抑えたことで、新規顧客と稼働顧客数が減った。化粧品健康食品事業は、化粧品通販のオージオでは国内ECの新規顧客獲得が好調だったこと、国内卸売り販売が拡大したことにより増収増益に。健康食品のリフレでは、通販の定期顧客数が減少したことなどで減収だった。

 4位のスクロールは生協を中心とした通販事業は減収だった。ただ、原材料や資源価格の高騰、円安といった逆風がある中、販売価格のコントロールに取り組んだことに加え、商品供給率の改善により、受注が落ち込むなかでも前年同期を上回る売上総利益を確保した。eコマース事業は大幅減収。アウトドア・キャンプ用品のナチュラムでは、市場が縮小し、需給バランスが悪化している影響を受けた。ブランド品やブランド化粧品を扱うAXESでは、実店舗や大手仮想モールに出店するブランド公式店舗を含めた競争の激化により苦戦が続いている。

 6位のDINOS CORPORATION(ディノス)はファッションや食品の売上高は前年実績を超えて堅調だったが、通販カタログで家具・インテリア商品などリビング系商材が苦戦したほか、テレビ通販では美容健康カテゴリーが苦戦。販促費抑制を狙って通販カタログの発行部数を抑えたことなども減収に影響した。

 8位の千趣会は基幹の通販事業で販促費を高コストのカタログ中心からデジタルと融合させたプロモーションにシフトして効率化を図ったが、費用は削減されたものの、売上高は想定の効果を得られずに大きく落とした。粗利率改善を目的とした商品の絞り込みが過去の売れ筋に偏重し、新商品投入数や品ぞろえの魅力が低下したことが影響した。また、約2年半前に発生したシステムトラブル以降、購入会員数の減少に歯止めがかかっておらず、購入会員数、新規・復活購入会員数、継続購入会員数ともマイナスとなった。


ビック・上新は2桁減 <家電>

 主に家電を販売する小売り企業(メーカー直販やパソコン専門は除く)を売上高順に10位まで抜粋した。

 1位のジャパネットホールディングスは家電では引き続き、エアコンや掃除機などを中心に堅調に売り上げを伸ばした。家電以外では食品頒布会やウォーターサ―バーなども好調な売れ行きだった。また、コロナ禍の影響で前年は催行を休止していたクルーズ旅行も当期は13回実施して4万人以上が参加、クルーズ単体の売上高は約100億円となるなど好調だった。

 2位ヨドバシカメラは2年連続の減収となっていたが、前期は増収を達成。送料値上げや送料無料ラインを引き上げる通販サイトが少なくない中、同社通販サイトは全品無料配送サービスを維持している。

 3位ヤマダホールディングスは、グループ全体における、EC関連売上高の推定値。子会社ヤマダデンキにおける「ネット事業・テレビショッピング事業」の売上高(仮想モール店含む)は857億1900万円だった。仮想モール「楽天市場」の優秀店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2023」において、グランプリを初受賞するなど、仮想モール店は好調に推移。グループEC売上高も増収になったとみられる。今期も増収を目指しており、中長期的には全社売上高の20%まで構成比率を高めたい考えだ。

 4位ビックカメラは2桁減収に。”巣ごもり需要”の反動減があった。ただ、医薬品や日用品、コンタクトレンズといった非家電商材のほか、電池や電源タップなど、購買頻度の高い商品の売り上げを高めることを大きなテーマとして取り組んだ結果、こうした商材は軒並み2桁以上の増収だったという。

 5位ノジマは前年のEC売上高(360億円)から大きく伸びているが、これは算出方法の違いによる。今回掲載したのは、EC含めたインターネット事業全体の売上高となっている。

 6位上新電機は期初予想を大きく下回る結果に。同社では自社通販サイトを中心とした構造改革による、収益力の強化に取り組んでおり、規模の拡大からシフトしたことで売上高は減ったものの、収益力については改善しているという。今期のネット通販事業においては、4月よりネットで注文した商品の実店舗受け取りサービスの本格稼働を開始。パートナー企業を活用することで、家電の全国配送・設置も行う。また、昨年10月に増床した東京物流センターにおいては、6月よりネット通販向け商品の出荷を開始した。

 7位エクスプライスはホームセンター大手・DCMホールディングスの子会社。「第82回通販・通教売上高ランキング」には、DCMHDの通販売上高(23年2月期)を掲載したが、今回のジャンル別売上高にはエクスプライスの売上高(24年1月期)を掲載した。



ニトリが首位を独走 <家具>


 家具・インテリア商品の通販を実施している企業では、ニトリホールディングスが2024年3月期の「国内ニトリ事業」の通販売上高で871億円となり、2位に3倍以上の大差をつけて首位となった。

 前年度が13カ月の変則決算であっため、前年比較で見ると4・3%のマイナスだった。海外も含めた通販事業の売上高についても前年比4・0%減の885億円となっている。全社売り上げに占める海外も含めた通販事業の売り上げ構成比は、同横ばいの11・1%だった。当期は歴史的な円安を起因とした原材料費や物流費など各種コストの上昇問題もあって、実店舗も含めて販売が低迷した。今後の巻き返しに向けては、ライブコマースサービスの強化を実施している。開始当初の22年度はおおむね週に2回のペースで行っていたが、当期からは週3回の配信を定型化。年間で合計132回の配信を行い、見せ方についても切り抜き動画の自動作成機能を搭載するなど工夫を図っている。

 また、EC機能を持つ公式アプリの会員数についても純増が続いており、3月末時点では前年比20・7%増の1933万人を突破。今期末のアプリ会員数では2200万人を計画している。なお、グループ会社なども含めた日本国内全体でのEC売上高は、25年に1500億円を達成することを目指す。

 2位にはタンスのゲンがランクイン。23年7月期の売上高は前年比8・0%増の263億5000万円となった。当期はアマゾンの「販売事業者アワード2023」において、インテリア部門のカテゴリー賞を受賞。売り場としても、ANAグループが手掛ける仮想モールの「ANA Mall」に新規出店するなど販路拡大を進めている。

 3位のベガコーポレーションは24年3月期の売上高が前年比5・4%減の160億6300万円だった。当期は各事業ともに下半期以降は利益重視の施策に転換を図ったため、販促費やマーケティングコストなどを削減。それに伴い、アクセス数や流通総額が減少した。一方で、今期については関東初の実店舗を開設するなど、リアル販路の開拓を強化している。

 4位となったジェネレーションパスは、仮想モールや自社通販サイトなどでネット販売を行う「ECマーケティング事業」について、23年10月期の売上高が前年比2・8%増の128億3000万円だった。当期は主にヤフーショッピングでの売り上げが減少した影響を受けたが、各種セールや夏物新商品の継続的な導入などで家具・生活雑貨が好調となり増収。一方で、利益面は円安をはじめ、仕入価額や物流コストの上昇もあって、前年同期を下回った。

 5位となったのはぼん家具で、24年4月期の売上高は推定で約60億円。為替変動などによる原価高騰に対して価格改定を実施したことや、出店している仮想モール自体の成長鈍化などの影響を受けたが、アマゾンでの売り上げ拡大や新規カテゴリーとして発売した照明、キッズ用収納品などが好調に推移したという。



小林製薬問題、市場に打撃 <メーカー系通販>

 メーカー系通販は、サントリーウエルネスが売上高1000億円を超えて成長を維持する。「紅麹」による健康被害問題を受け、機能性表示食品制度の規制強化など事業環境も変化する。

 「メーカー系通販」は、これまで流通ルートを中心に展開し、通販に参入した企業を主な対象にする。

 サントリーウエルネスは今年6月、機能性表示食品「セサミンバイタル」を発売。中高年層向けに「疲労感の軽減」をうたう機能性表示で、抗疲労市場の開拓に乗り出す。

 「疲労回復」は大正製薬がリポビタンD(指定医薬部外品)で強みを持つ。一方の大正製薬は今年4月に非上場化。疲労回復のほか、内臓脂肪減少薬など強みを持つ大衆薬の展開強化を図っていく。

 今年3月には、小林製薬製造の「紅麹」による健康被害問題が起きた。製品回収の公表や、疑いを含め死亡例等の正確な報告に2カ月を要したずさんな対応で、影響は業界全体に及んだ。

 定期解約は、今年3月の回収公表の会見以降伸び始めた。複数社が一時的な影響とみるものの、影響の長期化から広告投資が行えず、新規獲得に影響の出る企業や、LTV向上を図る企業もある。現在も、原因究明は途上にある。

 小林製薬の報告遅延を受け、機能性表示食品制度も規制が強化さる。健康被害報告は、「医師の診断」を前提に因果関係が不明なものも含め報告が必要になる。品質管理基準である健康食品GMPも、届出条件に規定することで実質的に義務化される。

 カゴメ(約131億円)、キリンホールディングス(本紙推定・110億円)、森永製菓(109億円)、アサヒグループ食品(本紙推定・100億円)が続く。



 
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