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世界文化社、通販事業の前期と今期戦略 前期はECと店販が2桁増収

2016年 6月 9日 10:21

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世界文化社の2016年3月期の通販売上高は前年比微増の29億円強で着地した。主力のカタログはほぼ横ばいだったものの、ECと店頭小売りが2桁増となったことで増収を確保した。

 カタログの売り場面積(ページ数×部数)は前年とほぼ同水準で、基幹カタログの発行回数も年8回を維持した。紙媒体では「家庭画報 特選ファッション プルミエ」が健闘した。同カタログは、雑誌「家庭画報」で紹介するファッションの"匂い"がする商品が多いことに加え、手が届きやすい価格帯のため、幅広い通販顧客に支持された。とくに、生地で勝負できる服が多く、他社商材と比べて柄物が少ないのも特徴という。

 ECについては、今年1月に通販サイトを刷新。カテゴリーの分類やトップページの写真の大きさを見直すなどした結果、初速ではPVが約2倍となり、足もとまでの平均値でも従来の2割増で推移しているほか、トップページからの直帰率も刷新前の約4割から2割程度に減少するなど一定の成果が得られており、今後はコンバージョンにつなげることが課題だ。

 店頭小売りは、オリジナル即席麺「家庭画報のえびめん」が売り上げをけん引。同商品は家庭画報のブランド戦略に沿って、14年3月から高級スーパーを中心に展開しており、店頭でも固定客が増えているようだ。

 ボトルネックだった原材料についても、取引先に設備・人員を強化してもらうことで、「えびめん」のファンに届けられるようにしてきている。

 同社は「えびめん」の広告出稿も開始。前期は松竹歌舞伎会の会報誌やJAグループの家庭雑誌などでテストを行った。直近では東急沿線の情報誌「サルース」にも出稿。通販誘導に加え、東急沿線の「えびめん」取り扱い店を記載して送客を図ったところ、当該店では「えびめん」が3日間で売り切れるなどの成果があったという。

 また、昨年12月からは新規通販顧客の開拓に向けて広告代理店を通じた他社媒体へのチラシ同梱をスタート。旅行会社やカード会社の会員誌、送付物に「えびめん」や、新たに始めたリピート通販商材の「家庭画報の熟成酵素」(画像)など、訴求力の高いオリジナル商品を提案した。

 「熟成酵素」は昨年秋に販売を始めたリピート商材の第一弾で、従来型の企画や商品政策だけでは成長性が低いことから、単品通販のビジネスに着手。定期的なリピート購入が期待できる商材を持つことで通販事業の幅を広げたい考えで、「他社の事例も研究しながら粘り強く取り組みたい」(岡部徳彦通販事業本部本部長)としている。

CRMも強化へ

 今期のカタログ発刊計画は前年と同じ8回を予定。季節性を加味して発刊時期の微調整を行う。また、紙媒体の魅力を高めるためにも、食品などでは出版社の強みである目利き力や表現力を生かすとともに、データ解析を重視し、商品サイクルの中でPDCAを素早く回せるようにする。

 ただ、紙媒体は気候や流行の変化などのリスクを受けやすいため、リスクヘッジの面からもEC強化に努める。同社では、カタログ顧客にメルマガを送付するなどしてEC誘導を図っているが、主要顧客層は60代後半のため、アクティブシニアや一世代若い層の獲得が課題で、今後は顧客の裾野を広げるためにもECの独自企画を展開することも視野にある。

 また、昨年4月に創刊した上位顧客専用のカタログ「家庭画報クラスL」については、今年4月に第3号(約3500部)を発刊し、売り上げは2桁増と好調だ。過去2回の検証を踏まえ、第3号は"旅"を意識した誌面とし、ファッション商材の構成比を高める一方、前期は高額品が多過ぎた反省を生かして価格帯は若干抑えた。

 同社は、「クラスL」の取り組みでCRM強化のヒントを得たことから、今後は誌面作りや価格政策だけでなく、配送やコンタクトセンターでの顧客対応などソフト面を含めてCRMの全体戦略に生かしていく。

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