コールセンターで電話以外のチャネルであるノンボイスの領域を取り巻く動きを見ていくと、SMS(ショートメッセージサービス)やチャット、音声認識など様々な方面での動きが見られるが、無料通信アプリ「LINE」を使った取り組みもその一例だ。スマホの普及に伴いLINEは一般ユーザー同士のコミュニケーションだけでなく、企業が個人と関係を結ぶためのツールとして利用が広がっている。
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「ノンボイス系でPCを対象とする時代は終わった」。トランスコスモスでLINEの運用支援などを担当しているソーシャルメディアサービス部の所年雄部長はこう指摘する。「スマホに対してどれだけノンボイスサポートを提供できるかが我々にとって重要になってくる」と所氏。
そうした方向性のもとLINEに着目し、サービスメニューに加えてきた。例えばLINEを通じて、ユーザーは企業のアカウントに対して、困った時にメッセージを送る。「電子レンジの調子がおかしい」。LINEで友達と会話するのと同じように企業の担当者と会話する。場合によっては写真をスマホで撮ってそのまま送ることができるのもLINEの特徴だ。ユーザーの声を受けた企業側はFAQのURLを送り、スマホでそのページを見てもらい、電子レンジのエラーを解除してもらう。
こうした利用法は年齢的にはLINEを頻繁に使う10、20、30代で相性が良いとみられる。一方で40、50代はウェブサイトのサポートページが有効で、さらにその上の年代になると電話が使われるようだ。
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トラコスの戦略としては、企業が顧客とコミュニケーションするための様々なチャネルを用意している。
「ちょっと聞きたい」という程度の問い合わせにはチャットやLINEで対応。もっと"ゆるい"ニーズにはフェイスブックやツイッターで情報を発信し拾ってもらう。自分で夜中に探したいといったユーザーや、コールセンターが開いている時間に電話できないという場合はサポートページから見てもらう。
このように「ユーザーの問い合わせ欲求に合わせてチャネルを用意し、好きなところで問い合わせをしてもらう」(所氏)という方針。問い合わせの内容は一元管理し、電話で問い合わせがあった内容の続きをチャットでもLINEでも継続して対応できる。
オペレーターについても、LINEや他のソーシャルメディアの場合は電話と比べて「対応する資質が異なる」と所氏は指摘する。同社では130人程度のソーシャル専用のスタッフがいるが、採用には「性格テスト」を行っているという。
例えばストレス耐性。コールセンターでは顧客の声を"無視する"ということはできないが、ソーシャルメディアのサポート業務では時として無視することが重要になるという。つまり対応しなくてもいい相手がいる。その時は"スルー"する。そのためにはストレス耐性が必要になるというわけだ。
こうしてソーシャルメディア運営の専門部隊を作ってノウハウを貯め、それを既存のセンターに応用していくというのが、トラコスが描く人材活用のイメージだ。
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同社によると、LINEやツイッターの運用の引き合いが増えているという。所氏は「電話がゼロになることはないが、電話だけがコミュニケーション手段じゃないという時代になる」と述べる。その上で、電話のボリュームが相対的に減り、その反面、メールやチャット、LINE、ソーシャルメディアなどのノンボイス系が増え、「チャネルのサポートシェアは変わっていくのではないか」と予想する。
そんな折、LINE社が8月7日に人工知能を使って企業がユーザーと会話できるサービスを発表した。トラコスはその運用パートナーに選ばれた。
チャットの相手が"人間"ではないという状況がいよいよ本格化していく。電話以外のコミュニケーション手段が今後ますます発展していくことが予想される。それに歩調を合わせるために、テレマーケティング事業者の取り組みも一層熱を帯びていきそうだ。