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緑のTシャツを着た女性が姿見のようなディスプレイの前に立ってタッチパネルを操作すると、Tシャツの色や胸元のデザインが様々に変化し、場合によってはランダムに一定の周期で色が変わっていく。変化するのはあくまで緑のTシャツだけでスカートなどは着用している状態のままだ(写真)。
この技術は、凸版印刷がドイツのフラウンホーファーHHI研究所と共同で開発したバーチャルフィッティングシステムで、Tシャツ胸元の四角の枠内にAR(拡張現実)技術を活用し、デザインのパターンを変えている。シャツ全体の色はグリーンバックの合成技術を使っている。
この2つの技術を融合させることで、カメラに写ったユーザーの身体に合わせて服の画像をディスプレイ上で合成し、擬似的に試着が体験できるというわけだ。
このバーチャルフィッティングシステムは今のところ導入先を探している段階だが、店頭に設置した際には何度も着替える必要がないため試着の手間が減るほか、店頭にない商品でも試着ができることから商品在庫の効率化などが見込めるという。ランダムに様々な服を試着することで、今まで身に着けたことがない服との"予期せぬ出会い"が生じる可能性もある。
凸版印刷ではアパレル業界などに向けシステムのパッケージ販売とアプリケーションのソフト販売を予定している。
さらに、将来的には通販での応用も視野に入れる。例えばPCカメラやiPadなどのタブレット端末を使うことで、自宅にいながら服の試着ができるようになる。凸版印刷によると、仕組み上は、ソフトウエアをインストールすれば自宅でも簡単に使用できるという。ユーザーは自宅にいながら試着でき、企業側は返品率の低減などの効果が見込めそうだ。
ただ、その際にハードルとなるのが、ユーザーがこのシステムを使うために緑色の服を着る必要があることだ。つまり通販展開する企業が専用の服をユーザーに送り、実際に着用してもらわなければならない。この作業がユーザーのモチベーションにどのような影響を及ぼすかがカギとなるかもしれない。
また、今回のデモでTシャツを着用していたのは、形状がシンプルという理由がある。例えば、上着などではボタンや襟が服ごとに異なるため細かな形状を追えないという。つまり現状では、形状を認識してリアルな画像を見せることができる衣服の種類に限界があるようだ。
とはいえ、眼鏡ブランドが展開するPCカメラを使った"試着"や、カメラに映る部屋に家電の3D画像を合成して調和の度合いを確認できるものなどARを活用して通販に応用する事例が出てきている。今回のバーチャル試着も今後、通販に活用されていく可能性もありそうで、注目したいところだ。