NHK「クローズアップ現代」の波紋 日健栄協声明に加盟社から不満、企業広告「鵜呑みにするな」は見当違い
10月8日に放送されたNHKの「クローズアップ現代」が健康食品業界に波紋を呼んでいる。健食の健康被害にフォーカスした内容に、通販各社は顧客対応に追われたが、番組に対する見解を発表した日本健康・栄養食品協会(日健栄協)の対応が物議をかもしている。本来、加盟社の立場に配慮すべき協会だが、番組に賛意を示しているとも取れるどっちつかずの対応。業界総意を代表する団体として資質に瑕疵があることを露呈させた。
まず、番組内容を振り返ってみたい。同日のテーマは「どうつきあうサプリメント 明らかになる"健康被害"」。「友人からダイエットに良いと勧められて...」とαリポ酸を含む健食を飲んだ女性の健康被害を説明する下りから始まる。
これを受けた司会者は、日本医師会に健康被害の症例が毎月報告されていると説明。医師会は「効能効果や相互作用の検証が必要だが野放しで宣伝されている」と懸念を示し、スタジオゲストとして登場した梅垣敬三氏(国立健康・栄養研究所)も「錠剤・カプセルの形状から医薬品と同じような印象を受け、治療に使うケースもある」と解説する。
最後に健食との付き合い方を問われ「バランスの取れた食事や運動が基本。商品情報を鵜呑みにせず冷静に受け止めてほしい」(梅垣氏)と締めた。
健食の受託製造を行うある事業者は「剤形が誤解を与え安全性が担保できないなら"表示制度を整備すれば良い"ということになってしまう。そうした本質的な議論に踏み込めないから『錠剤・カプセルが駄目』とお茶を濁している」と番組制作に不満を口にする。
だが、この放送は単なる番組批判に留まらず、通販各社は問合せ対応に追われた。ある健食通販事業者では「番組放送中から対応に追われ問い合わせは30件前後あった」とする。一方で「数件程度」(メーカー系健食通販)だったところも。ただこれは今年6月にNHKの「おはよう日本」で似たような放送がされたため。「前回多くの問合せを受けたため今回は反響がなかった」(同)とする。
番組を受けてNHKに寄せられた意見は288件。今月5日から11日の集計中トップだった。
一方、日健栄協はこの放送に対する声明を発表したが、これが事業者心理を逆なでする事態に発展している。
声明は放送や梅垣氏の発言を大筋認めた上で『企業広告を鵜呑みにせず、正しい選択と使い方をしてください』というもの。この対応に「広告が商業主義一辺倒で嘘を並べ立てていると言わんばかり」(前出の健食通販事業者)といった不満の声が上がっている。
一方で『不明な点は企業の相談室に問合せ下さい』と丸投げ。協会に声明の趣旨を問うと、「これまで協会は業界に対する指摘に沈黙してきたが、今後は加盟社のために対応するという意思表示」(健康食品部)という。だがこれでは"やぶへび"だ。
例えば『鵜呑みにしないで』という部分。「一部悪質業者による行き過ぎの面がある」(同)とするが、これでは加盟社に悪質業者が存在すると取られてもおかしくない。本来、加盟社への配慮を第一とすべきだが「他に言いたいこともあるが、反論すると色んな意見を持つ方がいて(問題になる)」という。
協会が言う"色んな方"が誰を指すのか、最後まで明快な答えはなかった。が、厚生労働省や国の研究機関で働く梅垣氏、日本医師会や大手マスコミの反発を恐れたことが背景に想像できないか。
NHKの放送に始まる一連の騒動を機に、事業者として健食の相互作用分野で顧客対応を強化することも必要だ。ただ、一方で事業者は協会を中心に形成されてきた"業界"意識を改める必要があるだろう。今回の対応は、現状で協会が業界総意を代表する団体になり得ず、健食に業界が存在しないことを認識させるものだからだ。
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これを受けた司会者は、日本医師会に健康被害の症例が毎月報告されていると説明。医師会は「効能効果や相互作用の検証が必要だが野放しで宣伝されている」と懸念を示し、スタジオゲストとして登場した梅垣敬三氏(国立健康・栄養研究所)も「錠剤・カプセルの形状から医薬品と同じような印象を受け、治療に使うケースもある」と解説する。
最後に健食との付き合い方を問われ「バランスの取れた食事や運動が基本。商品情報を鵜呑みにせず冷静に受け止めてほしい」(梅垣氏)と締めた。
健食の受託製造を行うある事業者は「剤形が誤解を与え安全性が担保できないなら"表示制度を整備すれば良い"ということになってしまう。そうした本質的な議論に踏み込めないから『錠剤・カプセルが駄目』とお茶を濁している」と番組制作に不満を口にする。
だが、この放送は単なる番組批判に留まらず、通販各社は問合せ対応に追われた。ある健食通販事業者では「番組放送中から対応に追われ問い合わせは30件前後あった」とする。一方で「数件程度」(メーカー系健食通販)だったところも。ただこれは今年6月にNHKの「おはよう日本」で似たような放送がされたため。「前回多くの問合せを受けたため今回は反響がなかった」(同)とする。
番組を受けてNHKに寄せられた意見は288件。今月5日から11日の集計中トップだった。
一方、日健栄協はこの放送に対する声明を発表したが、これが事業者心理を逆なでする事態に発展している。
声明は放送や梅垣氏の発言を大筋認めた上で『企業広告を鵜呑みにせず、正しい選択と使い方をしてください』というもの。この対応に「広告が商業主義一辺倒で嘘を並べ立てていると言わんばかり」(前出の健食通販事業者)といった不満の声が上がっている。
一方で『不明な点は企業の相談室に問合せ下さい』と丸投げ。協会に声明の趣旨を問うと、「これまで協会は業界に対する指摘に沈黙してきたが、今後は加盟社のために対応するという意思表示」(健康食品部)という。だがこれでは"やぶへび"だ。
例えば『鵜呑みにしないで』という部分。「一部悪質業者による行き過ぎの面がある」(同)とするが、これでは加盟社に悪質業者が存在すると取られてもおかしくない。本来、加盟社への配慮を第一とすべきだが「他に言いたいこともあるが、反論すると色んな意見を持つ方がいて(問題になる)」という。
協会が言う"色んな方"が誰を指すのか、最後まで明快な答えはなかった。が、厚生労働省や国の研究機関で働く梅垣氏、日本医師会や大手マスコミの反発を恐れたことが背景に想像できないか。
NHKの放送に始まる一連の騒動を機に、事業者として健食の相互作用分野で顧客対応を強化することも必要だ。ただ、一方で事業者は協会を中心に形成されてきた"業界"意識を改める必要があるだろう。今回の対応は、現状で協会が業界総意を代表する団体になり得ず、健食に業界が存在しないことを認識させるものだからだ。