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受託製造大手4社が健食の新団体発足 「組織的提言」と「相互扶助」目的

2025年 2月20日 12:00

 健康食品の新団体が今年1月に発足した。発起人は、業界最大手のアピなど、受託製造大手4社。業界の諸課題や、共通の経営課題に協働で取り組む。ただ、団体の役割はあくまで受託製造企業の立場から行う「組織的な提言」と「相互扶助」。他の関連団体が行う認証事業などの収益事業、品質や安全性に関わる自主基準の策定などは想定していない。

 
 団体は、「日本健康食品工業会」(=日健工)。発起人は、受託製造大手のアピ、三生医薬、アリメント工業、AFC-HDアムスライフサイエンスの4社。役員は、会長にアピの野々垣孝彦社長、専務理事に三生医薬の今村朗社長など、4社による4人体制を敷く。3月の正式発足後、正会員企業との協議で役員体制、役員の選任を改めて協議する。

 正会員企業は、受託製造企業に限定する。健食の受託製造企業は、200を超えるとされるが、これまで約20社に参加を募り、ほぼ同数が加盟する見通し。「数は追わない。20社ほどで市場規模の大半を占め、十分な発信力を持てる」(今村氏)とする。

 団体は、健食の安全性向上や消費者の信頼向上に向けた①調査・提言活動、②受託製造業全体の底上げ、③広報活動の強化、④共通する経営課題解決に向けた協働――を目的にする。

 調査・提言活動では、機能性表示食品制度など業界の諸課題に関する調査、法規制や品質管理基準の見直しに関係する課題で、組織的な見解を発信していく。国内外の他の業界団体との連携関係も築き、専門的知見から行政当局との調整にも動く。一方で、ガイドライン策定等の取り組みには、「まずは受託製造業界の底上げが優先」(野々垣氏)と慎重な姿勢を示す。

 受託製造業の底上げでは、品質管理技術に関する調査研究、会員企業間の知見共有に向けた研修を行う。消費者向けに、健食の必要性や有用性に関する情報発信、利用方法の啓発も行う。

 受託製造企業共通の経営課題にも協働で取り組む。原材料やエネルギーコストの値上げ、機能性表示食品の制度改正のほか、廃棄物処理や共同物流、原料の共同購入も視野に入れる。「切磋琢磨した競争は変わりないが、横の連携は可能」(野々垣氏)、「不足した原料の供給責任を負う中で、一定程度融通しあえる」(今村氏)と話す。

 販売企業との間で発生する問題は、共通する課題や統一的な対応が必要なケースもあるとみられる。「個社で判断が異なるケースについて、団体として一定の見解を示すこともできるかもしれない」(同)とする。

 団体の発足は、2年ほど前から検討していた。小林製薬の紅麹による健康被害問題を受けて取り組みを加速した。年会費は、正会員が36万円(入会金別)、販売業など賛助会員が12万円。

 
健食新団体の行方
存在感示せるか

 受託製造大手4社は、「日本健康食品工業会」を立ち上げた。乱立する健食の業界団体で存在感を発揮するには、より具体的な目標が必要になりそうだ。

 健康と食品懇話会、薬業健康食品研究会、CRN JAPAN、AIFN――。健康食品業界は、食品系や製薬系、原料・製造、外資中心など、設立経緯の異なる団体が多くある。

 最大規模は、日本健康・栄養食品協会(=日健栄協)だが、最近はGMPなど認証ビジネスの運用が中心で、存在感は薄い。過去に団体統一の構想も浮上してきたが、成功していない。今は、「緩やかな連帯」を掲げ、各団体を会員とする健康食品産業協議会(=健産協)が意見集約など表立った活動を担う。

 「個社の意見にとどまり、製造業界の総意として発信する仕組み自体がなかった」。発足会見で、日健工専務理事の今村朗氏はそう話した。各企業は複数の団体に加盟するが、専門的知見を活かせる局面でも受託製造統一の見解を示せなかった。「主体的に行動し、リーダーシップを発揮すべき」(今村氏)と、設立意義を強調する。

 主だった活動は、提言と共通課題の解決。品質に重要な関わりがあるものの、既存団体が行うGMP認証や自主基準作成等には手をつけず、「各団体は否定しない」(野々垣孝彦氏)。原料・製造がルーツのCRN JAPANも存続する。

 健食業界で過去に例のない健康被害問題を受けた団体発足に、通販企業からは、「大手も製品製造を受託製造企業に依存する。安全性向上に向けた活性化は歓迎」、「バリューチェーンで果たす役割は大きい」と、肯定的な意見が聞かれる。

 一方で、「一枚岩になれればいいが、政治・行政との調整で各団体の思惑が異なるといけない」、「強烈なリーダーシップを発揮できればよいが、いちサークルのようにならないか」、「カルテルのよう」との声も聞かれる。

 既存団体との調整はこれから。業界最大規模の日健栄協、健産協とは事前に対話の機会を設けた。日本通信販売協会など小売団体との連携は、「協議の上で検討」(今村氏)。4社で発足したのは、「設立を迅速・効率的に進めるため、経営陣間の信頼関係、地理的な利便性を考慮した」(同)とするが、企業間の調整も必要になる。

 会見では、紅麹事件を防げたかを問われ、「原料受け入れ段階でどこまでチェックするかは極めて難しい」(同)と話した。業界の横の連携を強め、信頼回復につなげることができるか改めて問われる。
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