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男性用育毛剤EC市場は横ばい推移に、クリニック・医薬品と競争激化

2024年12月12日 12:00

 男性用育毛剤EC市場の競争環境が激化している。クリニックや医薬品など、周辺領域の広告露出が増加。市場は、横ばい推移の中で参入も増えている。

 市場全体は、コロナ禍に他社がCMを控えたタイミングで、広告露出を増やしたファーマフーズ、ウェブマーケティングに強みを持つソーシャルテックがけん引した。ただ、近年は、広告費の高騰、参入企業の増加を受け、多くの企業が低価格の初回オファーで新規獲得を進めるなど、競争が激化する。

 市場の停滞は、広告市場の環境変化も影響する。19年以降は、グーグルの検索アルゴリズムの改定で検索上位表示の難易度が上がった。改正薬機法施行(21年)、アフィリエイト広告など表示管理責任強化(22年)を受けた広告審査の厳格化も響く。こうした中で、多くの企業が、投資フェーズから保守的な事業運営に変化している。明確な効果をうたいやすい医薬品、AGA治療クリニックがアフィリエイト広告による広告露出を強化し始めたことも、育毛剤の獲得効率悪化の要因になっている。「今後も10億円以下の企業など、資本力の弱い中小事業者の淘汰が進む」、「市場規模はピークの8割ほどまで縮小」とみる事業者もいる。

 育毛剤単体の売上高で、ファーマフーズは、279億円(22年7月期、ウェブ以外を含む)をピークに減収に転じた。ソーシャルテックは、23年3月期に過去最高の新規顧客を獲得し50億円(23年3月期)と躍進したが、前期は前年比8・5%減の46億円。収益向上を目的に、戦略的に広告コストを抑えた。

 SNSを中心に認知を高めてきたのは、「REDEN」を展開する美元。イメージキャラクターに雨上がり決死隊の宮迫博之さんを起用した。拡散力が強く、20~30代など若年世代にリーチしやすいユーチューブのタイアップ施策で成長した。

 一方で、ユーチューブ施策には、継続率の課題が残る。また、SNSの浸透に伴い、炎上リスクからここ数年、タイアップや動画の二次利用コストは上昇している。

 美元も、広告規制、広告単価の高騰を受けて新規獲得が伸び悩むなど、一時期は月商で3分の1程度まで落ち込んだという。現在は、LTVを重視したCRM施策の見直し、これを前提にした広告露出で、売り上げもピークと同水準にまで回復しているとみられる。

 ファーマフーズは、前期(24年3月期)に主力の「ニューモ育毛剤」の定期顧客数が、前年比約6割となる約28万人と大きく減少した。現在は、発毛促進など明確な効果をうたえる医薬品「ニューZ」の展開を強化。効果実感の薄い顧客への提案、既存製品の減収を補う。

 ソーシャルテックは、初回の低価格オファー以降、2本(2カ月)単位で商品を届ける「エコ配送」を提案。原価削減で販売価格を抑え、継続利用を促す。

 外部ECの比率も2~3割に増えているとみられる。今後はアフィリエイト広告を中心とした自社通販、外部EC、流通卸の強化で、各販路に適した商品を投入していく。外部ECでは、まつ毛美容液の販売を予定している。

 中心顧客が30~40代のため、育毛剤でユーチューブ施策は行っていない。ただ、シャンプーなど潜在顧客に広くリーチできる一部商品では展開する。新聞やテレビのインフォマーシャル、ラジオなどオフライン広告も一部でテストする。

 ホソカワミクロンは今年10月、商品開発やマーケティングの最適化、事業運営の効率化・加速化を目的に、育毛剤等を通販するホソカワミクロン化粧品を吸収合併した。広告露出はまだ少ないとみられるが、ヘルスケア領域で強みを持つハーブ健康本舗も育毛剤通販に参入している。
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