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大正製薬は、販売する「NMN taisho」というサプリメントについて、インフルエンサーの投稿を、自社サイトに転載していた。
インスタグラムでは、「注目度上昇中」、「品質にこだわりたい方は特許処方の大正製薬」などと商品が紹介されていた。昨年6月、インフルエンサーに対する商品の無償提供、対価の影響を条件に投稿を依頼。SNSに「♯PR」とつけて投稿された。一方で、自社サイトに転載したくちコミに「PR」等の表記はなかった。
それも当然だろう。ステマ規制は、「事業者の表示」と明確に分かるものを、基本的に対象にしない。消費者庁が示す規制の運用基準では、「広告」が明確なものとして、PR等の表記があるもの、CM、新聞広告、企業サイト等が例示されている。「担当者もそう認識していた」(大正製薬)。
だが、消費者庁は、自社サイトへの「投稿の転載」を「消費者にとって広告であることが判別困難な表示で問題になる」と、判断している。事業者からは、「自社サイトは、消費者が広告と認識する前提。小粒の処分に対して、報道による社会的影響はあまりに大きい」、「表示可能は範囲がさらに狭まる」など、制裁効果とのバランスを疑問視する声が聞かれる。
今年8月、RIZAPもステマ規制で処分された。表示の優良誤認を認定された点が大正製薬と異なるが、ステマ処分の内容は同じ。インフルエンサーが投稿したくちコミを、自社で運営する「chocozap(チョコザップ)」のサイトに転載。投稿はPR表記があったが、自社サイトにはなかった。
大正製薬は、すべての投稿で「PR等の表記」を条件にし、内容も確認していたという。処分対象の商品の売り上げは、約1年間で4億円。処分に「真摯に受け止め、再発防止に努める」とする。従業員への研修を行い、広告掲載前の社内確認の徹底など管理体制を強化して再発防止に努める。処分取消訴訟など法的措置は、「現時点で検討していない」(同社)とする。
消費者庁は、自社サイトへの投稿転載の是非について、「ステマ規制の運用基準にも明確に触れている」とする。
運用基準では、自社サイトが問題にならない表示物として例示される一方、「事業者のサイトでも、特定のページで事業者の表示ではないと消費者に誤認されるおそれがある場合、例えば、専門家や消費者等が客観的な意見として表示しているもの、事業者が作成した表示は、『事業者の表示』を明確にしないといけない」と触れている。
自社サイトを「事業者の表示」が明確な例とする一方、「問題となる可能性もある」と例示する――。判断の裁量は行政側。運用基準は、表示の妥当性を判断する助けとなるものであるはずだが、基準の示し方に問題があるのではないか。