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新規層へリーチの一手は? 認知アップ、新客獲得で新チャレンジ

2024年10月10日 12:00

 新たな顧客の獲得は通販事業者にとって永遠の課題の1つ。継続的に顧客を獲得し続けるためには、これまで実施してきた手法の磨き込みはもちろん、いまだ当該社を知らない潜在顧客がいる可能性のあるゾーンにリーチしていく必要がある。そのためには当該層の興味関心を醸成したり、引きつけ得る試みに挑戦していかねばならない。新規層へのリーチのために新たな挑戦を行う通販事業者の取り組みを見ていく。

ジュピターショップチャンネル
初のラジオ通販に挑戦、人気番組内でトークや商品紹介
 通販専門放送を行うジュピターショップチャンネルがラジオ通販に乗り出した。TBSラジオの人気番組内にコーナーを持って、ショップチャンネルが放送する通販番組の進行役が出演して売れ筋の食品や生活雑貨などを中心に紹介、販売する。同社がラジオ通販に取り組むのは初めて。同社では様々なメディアを活用して「ショップチャンネル」をいまだ知らない、または興味のない層に対して、認知度向上や興味関心を高める取り組みを推進しており、ラジオ通販開始もその一環。

 TBSラジオが毎週日曜日に放送するお笑いコンビの「爆笑問題」の太田光さんと田中裕二さんおよび山本恵里伽アナウンサーが出演する番組「爆笑問題の日曜サンデー」(放送時間・午後1~5時)で午後1時40分ころから10分程度、同社提供のコーナーとして「ショップチャンネルラジオショッピング」を放送する。「キャスト」と呼ばれるショップチャンネルの番組進行役が毎回、交代で出演して爆笑問題の2人らと掛け合いながら進行していく流れ。

 同コーナーの前半5分は商品紹介を行わず、その回に出演したキャストが爆笑問題の2人らとフリートークをしながら、当該キャストの人となりや魅力などを聴取者に伝える「ショップチャンネルキャストカタログ」という企画などを行うほか、ショップチャンネルの特徴やキャンペーンの情報などを伝える。後半5分は毎回1商品に絞ってショップチャンネルが販売する商品の中から売れ筋の食品や生活雑貨を中心に紹介、最後に受注用電話番号を伝えて聴取者の購入を促す。

 なお、「ショップチャンネルラジオショッピング」は来年3月30日まで放送する予定。

 初回の10月6日には爆笑問題の2人と大学の同級生だったキャストの嶋田ひろし氏が出演、当時の思い出や俳優を目指していた嶋田氏がショップチャンネルのキャストとなった経緯、「ショップチャンネル」の特徴や取り扱う商品、初めてショップチャンネルの通販サイトで購入した人に1000円引きするキャンペーンの紹介などを行った。後半のラジオ通販パートでは今年6月に販売して即完売となった冷凍餃子「プリっと食感!手包み海老ニラ餃子」(=写真)を紹介。嶋田氏が同商品の特徴を紹介しつつ、油で揚げたり、電子レンジなどで様々に調理したものを爆笑問題の2人と山本アナウンサーが試食。「うまい」「香ばしい」「中のクワイがシャキシャキする」などと試食の感想を伝えた。なお、同商品は1袋35個入り2袋をメーカー希望小売価格の4割引きの4180円で紹介、販売した。

 同社がラジオ通販を行うのは今回が初めて。今年7月21日放送の「爆笑問題の日曜サンデー」内のコーナー「今週のプレゼント」(午後1時18~27分の約9分枠)に嶋田ひろし氏が出演して同社で売れ筋の「凍らせてサクッとおいしいしるこアイス」を紹介しつつ、抽選で聴取者にプレゼントする取り組みを行った結果、「(抽選の申し込み数など)相当数の反響があった」(同社)など手ごたえがあったことからラジオ通販に踏み切ることにしたという。

 「人気ラジオ番組のコーナーでラジオ通販を行うことでこれまで接する機会が少なく、『ショップチャンネル』をご存じなかったラジオのリスナー層への認知拡大を図りたい。テレビ通販は映像と言葉で訴求するが、ラジオ通販は映像がなく言葉だけでリスナーの皆様に商品の魅力を伝える必要がある。これまでラジオ通販はやったことがないが(来年3月までの)6カ月間の中で試行錯誤を繰り返しながらよりよい形になるようチャレンジしていきたい」(同社)と意気込む。

 同社では「ショップチャンネル」の未視聴層らにリーチすべく、近年、様々なメディアを活用して新たな取り組みを強化している。例えば、7月21日には奈良の刀匠の工房を訪ね、日本刀の魅力を紹介するBS朝日制作の紀行番組の放送後に、当該番組で紹介した工房で作られた日本刀を商品として紹介するショップチャンネルの通販番組をBS朝日でサイマル放送する取り組みや8月16日には「BS11」でショップチャンネルで売れ筋の商品を取り上げ、様々な豆知識や裏ワザを駆使しながら当該商品を使用して家事、美容や健康、防災などの暮らしの中の困りごとを解決していく内容の6分尺の情報番組「知って得する!アイデア帖~選りすぐり生活術~」を4週にわたって放送するなどして、ショップチャンネルを知らない層や興味関心の薄い層へのアプローチし、認知向上や興味関心の醸成につなげる取り組みを進めている。

 今回のラジオ通販もそうした取り組みの一環で、潜在顧客が多いと思われるラジオの聴取者にリーチすることで認知度アップや興味関心を高めたい考えのようだ。

エアークローゼット
有楽町マルイに体験店舗、有料でスタイリング提案
 ファッションレンタルサービス「airCloset」を手がけるエアークローゼットは、同社の強みでもあるプロのパーソナルスタイリングをリアルの場で体験できるようにすることで、サービスの認知向上と新規ユーザーの開拓につなげる狙いだ。

 同社は9月11日~11月11日までの2カ月間、有楽町マルイ2階のポップアップスペース「コンセプトショップス」で、パーソナルスタイリングの体験型店舗を出店している。

 これまでも、商業施設や移動販売車などを活用してパーソナルスタイリングの体験イベントを実施してきたが、コロナ禍に閉店したエイブルとの共同店舗を除き、2カ月にわたってリアルの場でサービスを提供するのは初めて。

 今回の体験型店舗では、「エアークローゼット」のプロのスタイリストが利用者のファッションの悩みや好み、なりたいイメージなどをもとにしたパーソナルスタイリング診断を有料で行い、コーディネートを提案する。

 パーソナルスタイリングに興味はあるものの、まだ「エアークローゼット」を利用したことのない潜在顧客が気軽に試せる場としたい考えだ。加えて、既存顧客にとってもスタイリストに対面でファッションの相談をしたいニーズがあるようで、体験予約の状況は既存顧客が半数程度を占めているという。

 これまでのファッション診断サービスは診断結果を伝えるだけでコーデ提案までは行わないケースが多いが、「エアークローゼット」の体験型店舗では診断の後に洋服の提案までを一貫して行う。スタイリストが提案した服はその場で購入できるため、”タイパ”の良い買い物体験も楽しめるとする。

 今回、体験できるプランはスタンダードなパーソナルスタイリング診断と、カラー診断が付いたプラン、骨格診断が付いたプラン、カラーと骨格の2つの診断が付いたプランの4種類で、カラー診断や骨格診断はそれぞれの資格を持つスタイリストが担当する。

 体験の所要時間は50~70分で、料金はプランによって平日が税込6600円~8800円、休日が同7700~9900円。

 利用者は予約サイトでプランを選択し、予約完了後に事前アンケートに回答。体験当日はパーソナルスタイリング診断をもとにスタイリストがコーデを提案する。提案された商品を購入したい場合、トップスは一律4500円、ボトムスとワンピースは一律5000円で購入できる。

 店頭には、実際にレンタルで使用している洋服の一部を陳列し、「エアークローゼット」で扱うアイテムの品質を確認できるようにしたほか、ユーザーに同梱しているパンフレットも設置して認知拡大に努める。

 同社では、2カ月間の取り組みを検証した上で体験型店舗の取り組みを強化したい考えだ。

 「『自分の好み』と『似合う服』が必ずしも同じではないことを分かっている人は案外少ない。体験してもらえればパーソナルスタイリングの面白さに気づいてもらえるはず」(天沼聰社長兼CEO)としており、実際、体験後にそのまま入会する利用者が結構いるという。

青山商事
コラボ通じて若年層開拓、人気ゲームとオーダースーツ
 紳士服の企画・販売を手掛ける青山商事では、新たなブランドやキャラクターとのコラボレーションを通じた新規顧客層へのアプローチを強化している。

 まず、複数のブランドからなる「SUITSQUARE(スーツスクエア)」事業においては、働き方の変化に伴う新しいビジネスタイルの提案に向けた、リブランディングを実施。今期については女性向け新ブランドとして「CIS.(シス)」を立ち上げており、アパレルブランド「アメリ」を手掛ける黒石奈央子氏をディレクターに招聘。従来の同社にはなかったようなイメージのモードビジネスアイテムを提案している。

 もともとアメリが若年女性向けにSNSでのプロモーションを得意としてきたことから、シスについてもそのノウハウを活用。黒石氏のインスタグラムなどからもブランド情報を発信していき、同社ではまだ取り切れていなかったSNSからの流入を増加させることで、20~30代の女性顧客を獲得。在宅勤務が減り、出社機会が増えたことでビジネスウエアの需要が復活する中、同ブランドを起点に、レディースECの売り上げをこれまでの1.5倍に増やすことを目指している。

 さらに、ゲーム・アニメの「アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)」とコラボレーションした企画も11月から開始する予定。同作品はプレイヤー自身がプロデューサーとなってアイドルを育成するゲームでもあり、性別を問わず、若年層からの支持を得ている。作中ではプロデューサーがスーツを着用している設定もあることから、同社の商品との親和性が見込めたという。

 今回の企画としては、同社が手掛けるオーダースーツブランドの「SHITATE(シタテ)」について、アンバサダーとしてシャニマスのアイドルメンバーが就任。顧客はオーダースーツの裏地には好きなアイドルのサインやイラストがプリントでき、ジャケットのフロント・袖、パンツのヒップポケットなどにオリジナル刻印ボタンをオプションでつけることも可能。2着目以降はECから購入ができる。

 同作品の各種イベント参加の際や、普段の仕事中などで好きなアイドルがデザインされたスーツを着用するという”推し活”としての利用シーンを想定している。特設サイトを通じて認知を図っていく考え。

 なお、昨年度に同様の企画として、アニメの「ラブライブ」と行ったシタテでのコラボスーツ企画では、「今まで買い物の際に『洋服の青山』の選択肢がなかったような顧客層も多く見られた。会員にもなってもらえ、その後、Yシャツなど(周辺商品)の購入につながった」(同社)と説明。

 若年層に認知の高いブランドやキャラクターとコラボ展開することで、新規顧客層の流入を図っていく。

 
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