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直販通じて顧客に寄り添う【通販責任者に聞く nishikawaの戦略と展望㊦】 卸先との取引拡大が大前提に

2024年 7月25日 12:00

 前号に引き続き、寝具メーカーのnishikawa(=西川)が強化を進めている通販事業での戦略や今後の展望について、責任者の大川裕史部長(写真(右))と須藤健二朗課長に聞いた。

             ◇

 ――これからの通販事業で取り組んでいきたいこととは。

 須藤「通販は販促手法が多様化していると思う。例えばこれまではカタログに商品を掲載したら、それで終わりとなっていたような面もあったが、今はその先でSNSを活用して顧客接点を拡大するためのデジタル戦略も必要になっている。

 現在、通販部門公式の『インスタグラム』を開始したり、自社で動画を制作できるような技術をつけることもしている。さらに、ウェブ販売する企業も増えているので、商品写真1つをとってもウェブでの見せ方に意識した撮り方を強化している。商品そのものだけではなく、空間を意識してライフスタイルに合うブランドを提案していく」

 ――「空間」を見せるとは、具体的には。

 須藤「これまで商品単体だけしか写していなかったものを、利用シーンも含めて見せるようなこと。今は寝具を一つのインテリアとして購入を考える人もいる。例えば、毛布などはその柄だけを見て買われていたものが、今は『部屋の空間の中の一つ』という考え方にもなっている。顧客自身が自分のライフスタイル全体で合うか合わないかを見ているのではないか。そのため、商品単体ではなく空間全体、そして使用イメージを想像できるような撮り方が必要なのだと思う。

 あとは繰り返しになるが、生活者の声をどれだけ生かせるか。商品開発をする前からどれだけ生活者の声を拾うようにしていけるかというところも強化している。今までは『機能』寄りでの開発が多かったが、ちょっとした悩みや問題を解決するような『生活者共感軸』での開発も進めているところがある」

 ――動画制作はどのような場面で使うものを想定しているか。

 須藤「ネットにアップできるような動画。世の中的に、今はインスタグラムや『TikTok(ティックトック)』などが盛んで、個人が動画をアップしてシェアするという流れが高まっている。どちらかというと商品についてガチガチの説明を行っているような内容ではなく、見たら『この商品をちょっと使いたい』と思えるような動画を作ることに取り組んでいる。

 先ほどのカタログの話にもつながるが、誌面上の静止画だけではなく、ウェブに動画をアップして動きでも見せるという企業は増えている。また、以前にある化粧品会社が寝具を販売するという企画の中で、先方のインスタライブに出演したこともあった。『眠り』と『美容』には深い関係性がある中、当社の商品を取り扱いたいとの声がけをもらったもの。インスタライブの中では商品だけではなく、睡眠の大事さも伝えていった。質問もその場で対応することで納得して購入してもらえるようにもなるため、(静止画以上に)成約率が高まるという事実はあるかと思う」

 ――社内での通販事業の位置付けや、期待されている役割とは。

 大川「実店舗での販売について、今は縮小傾向に入るのかなとは思っているので、ここだけでこれから大きく伸ばしていくということは難しく、やはり通販でのシェア拡大は期待されていることだと思う。もちろんそれは、直販のECだけではなく、卸先のカタログやテレビなども含めての話。今は、既存の倍くらいの規模まで伸ばすことを目指している。

 また、大事なこととして直販も強化はしていくが、当社が積極的に前にどんどん出ていって直販事業ばかりを広げていこうとしているというわけではない。既存の卸先とは今まで以上に取り引きを拡大させていかなくてはいけないということがまず大前提としてある。直販についてはそれとは別に、そこではできていないことをする場所としてあるものだと思っている。

 今の卸先は顧客との距離が非常に近いところが多い。それぞれが抱えているロイヤルカスタマーに対しての提案も非常にうまく行われている。(提供できる)商品の数や価格帯が限られているという面もあるかと思うが、逆に言えばしっかりと顧客のことが見えているということなのだろう。

 今後ますます高齢化が進む社会で、いかに健康で、かつ、医者にもかからずに過ごすことができるかということは睡眠からも提案できる部分があるはず。もちろん、病気になってからではなくて、予防も含めての話だ。女性に対しても(美容面をはじめとする)提案をしていくことも大事。

 だからこそ、商品を売るだけではなく、サービスも重要になるということ。(専門資格を持ったスタッフが睡眠関連のアドバイスや商品案内を行う)『ねむりの相談所』に来てもらって、眠りの質自体を改善してもらうということもそうした取り組みの一つになる。こうしたことも含めて、色々と広がる動きの中で、私たちは顧客と近い位置にありたいと考えている」(おわり)

 
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