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回線顧客取り込みに注力【auCLの桑田祐二新社長に聞く㊤】 “特典”で経済圏に呼び込む

2024年 6月20日 12:00

 auコマース&ライフ(=auCL)は、4月1日付で桑田祐二副社長が代表取締役社長に就任した。運営する仮想モール「auPAYマーケット」の2024年3月期流通額は伸び悩んだもようだ。ただ、親会社のKDDIはローソンとの協業などで「Ponta経済圏」の巻き返しを図っており、同モールの担う役割は大きい。桑田新社長に今後の方針を聞いた。









 ーー桑田社長のこれまでのECに対する取り組みは。

 「1994年にKDDIに入社、コマース事業の立ち上げに携わり、フィーチャーフォン時代から『auショッピングモール』を担当していた。ディー・エヌ・エーからEC事業を譲受した2016年にKDDIコマースフォワード(現auCL)副社長に就任。20年には社外取締役となっていたが、22年にauCL副社長となり、今回社長に就任した」

 ーー現状のauPAYマーケットをどう見るか。

 「顧客数や事業規模といった面では、競合の足元に大きく及ばない。ただ、『とにかく流通規模を拡大する』ということが、事業の成長の仕方や、われわれの経済圏で求められているものとして正しいかというと、一概にはそうとは言えないと考えている。現状のポジションを踏まえた上で、ポイントやクーポン目当てで一度だけ購入するユーザーではなく、いかに継続して購入するユーザーを増やせるか。加えて、『Pontaポイント』を軸とした『Ponta経済圏』の拡大を踏まえて、au・UQ回線の顧客に使ってもらい、経済圏に対するエンゲージメントを上げることにこだわっていきたい」

 ーーかつてはポイント還元率を高めたり、割引率の高いクーポンを頻繁に配布したりしている時期もあったが、顧客があまり定着しなかったという苦い経験もある。

 「少し前だとQRコード決済が典型だが、どのサービスでも顧客獲得競争でポイントや割引による叩き合いになる時期はあるもの。そういった時代を経て、現在の戦略に行き着いた」

 ーーとはいえ、流通規模が縮小しては出店者にとって魅力のない仮想モールになってしまう。

 「もちろん、成長していくというのは大前提だ。ただ、いきなり来年流通規模が倍増するわけではない、ということ。もちろん、店舗からすれば成長度合いは気になるところだろうが、競合モールよりも伸びしろはあると思ってもらえているのではないか。au・UQユーザーの数は多いため、今現在店舗がつかめていない顧客に対する期待は大きいと思う。au・UQユーザーの取り込みという観点から、店舗の役に立てる施策を考えている」

 ーーau・UQユーザーの取り込みという話は以前から出ていたが、あまり成果が出ていないようにみえる。

 「消費行動が多様化する中で、auPAYマーケットのみを使ったり、楽天市場からauPAYマーケット一本に乗り換えたりする顧客は基本的にはいないのではないか。いくつもの仮想モールで買っている顧客が多いので、当モールの場合、まずは併用シーンを作って、いずれメインに切り替えてもらう、というアプローチが理想的な流れだ。『ワウマ』時代はオープン戦略として、回線とは関係なく、幅広い顧客の取り込みを狙っていたが、今はポイントの循環も含めて、経済圏で利用する仮想モールを選ぶ流れが強まっているので、そこにフォーカスした施策に組み替えている。こうした取り組みが今まで以上に回線ユーザーの利用を加速するステップになるのではないか」

 「また、有料会員制度『auスマートパスプレミアム(スマプレ、今秋に『Pontaパス』に改称予定)』や、クレジットカード『auPAYカード』、QRコード決済『auPAY』ユーザーは、経済圏の中でも規模が大きくなっているし、当モールを使ってもらえる可能性も高い。ただ、こうしたシナジーの強い顧客を増やしていくのは当然だが、それ以前に回線ユーザーそのものへの特典に手を付けられていなかった」

 ーーどういった優遇施策を考えているのか。

 「まず、7月1日にauPAYマーケット内の『ポイント交換所』というサービスを刷新する。今まではスマプレに加入したうえで、前月の買い物金額によりポイントの交換倍率が高くなるシステムだったが、今回の条件変更により、au・UQユーザー、またはスマプレ会員は、買い物金額にかかわらず、誰でもポイント1・5倍交換が可能になる。これまで購入金額による『積み上げ』にフォーカスして特典を組み上げていたわけだが、回線ユーザーに対する特典を作り直している。まずは回線ユーザーが当モールを使うメリットがしっかりある状態を作りたい」

 ーー楽天のようなモバイル利用者に対するポイント優遇も検討しているのか。

 「今言えるのはポイント交換所だけだが、それ以外にもやっていきたい。一時は購入金額の最大10%分を通信料金に還元するサービスも行っていたが、経済圏のトレンド変遷に合わせて、顧客へのアプローチも試行錯誤し、現在に至っている。ただ、事業の環境も含めて考えると、回線ユーザーに向き合うことが現在は第一だろう。各モールとも、経済圏の中で、どうユーザーを回していくかという意識が色濃くなっている」(つづく)

 
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