ハルメクは、通販事業で靴カテゴリーを強化しており、とくに自社プライベートブランド(PB)の「ハルメクの靴」を育成中だ。
同社では従来、靴カテゴリーの取り扱い商品のほとんどがナショナルブランド(NB)だったが、他の商品カテゴリーと同様にハルメクの顧客が身につけるモノとして、5年程前から靴も自社開発に舵を切った。
陣頭指揮を執ったのは、外反母趾にやさしい靴ブランド「フィットフィット」の実店舗開発を担った勝谷進氏(=
顔写真)で、2019年に入社したハルメクでも店舗事業部部長に就任したほか、オリジナルブランド「ハルメクの靴」の責任者も務める。
最初の1年間はハルメクの顧客にどんな靴を提供すればいいのか、デザイナーと一緒に調査するとともに、外部アドバイザーに医師や理学療法士などを招いて作るべき靴の方向性を固めた。
同社によると、自分に合う靴が見つからずに悩んでいるシニア女性は多く、加齢とともに筋力が低下すると足裏のアーチが平べったくなり、アーチが崩れるとかかとは次第に内側に傾いていく。かかとが曲がることで外反母趾などの足のトラブルが起きやすくなり、靴が合わないと感じるようになるという。
そこで大事になるのが、加齢による筋力低下をサポートすることや、内倒れするかかとをまっすぐに支え、足指が伸びるように整える靴選びだ。
「ハルメクの靴」は、理学療法士監修のインソールが足裏のアーチに沿ってバネのように足に吸いつき、靴の中で足を正しい位置に導く。かかとがブレないように包んで支える構造で、足の横ブレ、かかとの内倒れを防ぐ。
また、「ハルメクの靴」は靴ひもやベルトなどで甲を押さえる設計で、「甲の中足骨を押さえると足指が伸びる」という原理を用いて、足指を使って歩くことを促す。
新聞広告で新客を開拓
それでも、PBの靴はすぐには売れなかった。ハルメクとして提案すべき靴を開発したタイミングでコロナ禍に突入し、シニアの外出機会は一気に減った。加えて、同社の顧客層に響くプロモーションを検証するのに時間がかかった。「モノづくりができることに魅力を感じて転職したが、モノづくりとプロモーションは簡単ではなく、2~3年は本当に苦労した」(勝谷氏)と当時を振り返る。
ハルメクは、「人生100年時代 歩くことは、よりよく生きること」というメッセージで靴を開発。世の中には緩くて柔らかくて履きやすい靴があふれ、”楽な靴”が売れやすいが、「ハルメクの靴」はその真逆だ。
「緩くて柔らかい靴は、実は足をどんどん弱くする」(勝谷氏)という考えに沿って、緩くも柔らかくもなく、靴紐をしっかり結ぶことで足指が広がって伸びる構造の靴、足を正しい状態にすることを目指した靴ということを前面に出した。
具体的には、新客開拓用の新聞広告で「ゆるい靴を履き続けると、足の健康を損ねます」と発信したが、「きつくて面倒くさい靴」という印象を与えてしまった。靴の構造が理にかなっていても、楽な靴を望んでいる消費者には響かなかった。
そこで、昨年9月頃に商品の打ち出し方を変えた。自信がある靴の構造、機能は変えずにPRの仕方を変えた。新聞広告では、「『痛くない!』を目指した、ハルメクの靴」というキャッチコピーで打ち出し、甲を締めるという伝え方は控えた。その上で、足が痛くなる理由や、正しい歩行が楽にできる構造上の特徴を説明した結果、売れ始めた。
まずは地方でPRの仕方を変えた新聞広告を小規模にテスト。「最初は250足の販売という勝ち負けのラインを設定して臨んだら333足売れた。その後もテストで勝ち続けたので『いける』と判断し、新聞広告の出稿エリアを広げていった」(勝谷氏)という。
「ハルメクの靴」はデザインのバリエーションがあり、今年3月中旬時点で約25型を展開。スニーカー(タウンシューズ)が中心だが、ゴアブーツやパンプスなども手がける。
靴はサイズのバリエーションが多く、在庫の問題も出てくるため、新しいデザインの靴は少しずつ作ってテストして反応が良ければ量産するという”テスト&ロールアウト”のスタイルで展開する。
同社の靴カテゴリーは「ハルメクの靴」のだけでなく、引き続きNBの商品も取り扱っている。各メーカーはそれぞれ工夫を凝らした靴を作っているためで、とくにNBは70歳以上の顧客に向けた靴を、PBは機能での差別化に加え、デザイン面も少し若くして60歳くらいの顧客が買いやすい靴を展開。「60歳から足の歪みを防ぎ、ずっと自分の足で歩ける人生を送るサポートをしたい」(勝谷氏)とする。(
つづく)
同社では従来、靴カテゴリーの取り扱い商品のほとんどがナショナルブランド(NB)だったが、他の商品カテゴリーと同様にハルメクの顧客が身につけるモノとして、5年程前から靴も自社開発に舵を切った。
陣頭指揮を執ったのは、外反母趾にやさしい靴ブランド「フィットフィット」の実店舗開発を担った勝谷進氏(=顔写真)で、2019年に入社したハルメクでも店舗事業部部長に就任したほか、オリジナルブランド「ハルメクの靴」の責任者も務める。
最初の1年間はハルメクの顧客にどんな靴を提供すればいいのか、デザイナーと一緒に調査するとともに、外部アドバイザーに医師や理学療法士などを招いて作るべき靴の方向性を固めた。
同社によると、自分に合う靴が見つからずに悩んでいるシニア女性は多く、加齢とともに筋力が低下すると足裏のアーチが平べったくなり、アーチが崩れるとかかとは次第に内側に傾いていく。かかとが曲がることで外反母趾などの足のトラブルが起きやすくなり、靴が合わないと感じるようになるという。
そこで大事になるのが、加齢による筋力低下をサポートすることや、内倒れするかかとをまっすぐに支え、足指が伸びるように整える靴選びだ。
「ハルメクの靴」は、理学療法士監修のインソールが足裏のアーチに沿ってバネのように足に吸いつき、靴の中で足を正しい位置に導く。かかとがブレないように包んで支える構造で、足の横ブレ、かかとの内倒れを防ぐ。
また、「ハルメクの靴」は靴ひもやベルトなどで甲を押さえる設計で、「甲の中足骨を押さえると足指が伸びる」という原理を用いて、足指を使って歩くことを促す。
新聞広告で新客を開拓
それでも、PBの靴はすぐには売れなかった。ハルメクとして提案すべき靴を開発したタイミングでコロナ禍に突入し、シニアの外出機会は一気に減った。加えて、同社の顧客層に響くプロモーションを検証するのに時間がかかった。「モノづくりができることに魅力を感じて転職したが、モノづくりとプロモーションは簡単ではなく、2~3年は本当に苦労した」(勝谷氏)と当時を振り返る。
ハルメクは、「人生100年時代 歩くことは、よりよく生きること」というメッセージで靴を開発。世の中には緩くて柔らかくて履きやすい靴があふれ、”楽な靴”が売れやすいが、「ハルメクの靴」はその真逆だ。
「緩くて柔らかい靴は、実は足をどんどん弱くする」(勝谷氏)という考えに沿って、緩くも柔らかくもなく、靴紐をしっかり結ぶことで足指が広がって伸びる構造の靴、足を正しい状態にすることを目指した靴ということを前面に出した。
具体的には、新客開拓用の新聞広告で「ゆるい靴を履き続けると、足の健康を損ねます」と発信したが、「きつくて面倒くさい靴」という印象を与えてしまった。靴の構造が理にかなっていても、楽な靴を望んでいる消費者には響かなかった。
そこで、昨年9月頃に商品の打ち出し方を変えた。自信がある靴の構造、機能は変えずにPRの仕方を変えた。新聞広告では、「『痛くない!』を目指した、ハルメクの靴」というキャッチコピーで打ち出し、甲を締めるという伝え方は控えた。その上で、足が痛くなる理由や、正しい歩行が楽にできる構造上の特徴を説明した結果、売れ始めた。
まずは地方でPRの仕方を変えた新聞広告を小規模にテスト。「最初は250足の販売という勝ち負けのラインを設定して臨んだら333足売れた。その後もテストで勝ち続けたので『いける』と判断し、新聞広告の出稿エリアを広げていった」(勝谷氏)という。
「ハルメクの靴」はデザインのバリエーションがあり、今年3月中旬時点で約25型を展開。スニーカー(タウンシューズ)が中心だが、ゴアブーツやパンプスなども手がける。
靴はサイズのバリエーションが多く、在庫の問題も出てくるため、新しいデザインの靴は少しずつ作ってテストして反応が良ければ量産するという”テスト&ロールアウト”のスタイルで展開する。
同社の靴カテゴリーは「ハルメクの靴」のだけでなく、引き続きNBの商品も取り扱っている。各メーカーはそれぞれ工夫を凝らした靴を作っているためで、とくにNBは70歳以上の顧客に向けた靴を、PBは機能での差別化に加え、デザイン面も少し若くして60歳くらいの顧客が買いやすい靴を展開。「60歳から足の歪みを防ぎ、ずっと自分の足で歩ける人生を送るサポートをしたい」(勝谷氏)とする。(つづく)