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ジャパネットが挑む豪華クルーズの狙いとは<ジャパネットツーリズムの茨木智設社長に聞く> ラグジュアリークルーズさらに強化へ

2024年 5月 9日 12:00

 日本初就航の豪華客船「シルバー・ムーン」をフルチャーターしてクルーズ旅行を催行したジャパネットグループで旅行事業を展開するジャパネットツーリズム。同社を率いる茨木智設社長に同船でクルーズ旅行を催行した狙いや今後の方向性について聞いた。










リピーター向けに高級なクルーズを

 ――ジャパネットのクルーズ旅行はこれまで主に超大型客船をチャーターする形で催行してきた。比較的小型な客船である「シルバー・ムーン」でクルーズ旅行を行う狙いは。

 「ジャパネットグル―プは第1種旅行業を取得して2017年から客船一隻を丸ごとチャーターする形で本格的にクルーズ旅行の販売を開始した。クルーズ旅行はリピーターも多い。そのことからも非常に満足度の高い優れた商品と言えるが、日本人には馴染みがないため、ハードルが高く、なかなか参加してみようと思われる日本人は少なかったように思う。そこで我々が船内の案内を日本語に変えたり、当社のスタッフを乗船させるなどしてサポートさせて頂いたり、外国船ゆえに本来はない歯ブラシなどのアメニティを我々で用意したり、クルーズ旅行料金に本来は別途支払う必要のあるアルコール飲料やチップ代などをすべて込みとして追加料金が発生しないようにするなど日本のお客様の利便性を高める工夫を施して豪華で快適なクルーズ旅行を作り上げた。テレビショッピングやカタログなどで分かりやすくお伝えしてきたことで多くのお客様に参加頂け、今までの累計参加者数はおよそ7万2000人となっている。これまではクルーズ未経験層に対し、参加のハードルを下げるために様々に注力してきた。そうした取り組みはこれからも継続していく一方、初めて参加頂いたお客様の中からは再度参加頂けるリピーターも増えてきた。我々のクルーズ旅行は現状、主に『MSCベリッシマ』という5000人を超えるお客様が宿泊できる超大型客船を一隻チャーターして10日間の日程で各地を巡る企画がメインだ。船内は非常に広く、24時間食事が楽しめるレストランやカフェ、映画館やボーリング場などもあり、賑やかで退屈しない。行先は主には日本一周で料金も中心価格帯が30万円前後と比較的抑えた設定としている。初めてのクルーズ船としては最高の体験をして頂けるものと自負しているが、リピーターは”前とは異なる体験をしたい”と思うはず。今回の『シルバー・ムーン』はより高級なクルーズを楽しみたい方向けのラグジュアリーな客船で行う豪華なクルーズ旅行だ」

小型ゆえに寄港地の選択の幅拡大 

 ――「シルバー・ムーン」とこれまでのクルーズ船との違いは。

 「従来のクルーズ船が賑やかな都市部にある大型ホテルであるのに対して、『シルバー・ムーン』は閑静な高級旅館というイメージだ。賑やかさはないが落ち着いてゆっくりとクルーズ旅行を楽しむことができる」

 ――具体的には。

 「まず船のサイズが小さいことだ。乗客定員は596人、298室と超大型客船の『ベリッシマ』と比べると小型だ。これによって寄港地の選択の幅が大きく広がる。超大型船の場合は寄港できる港がかなり限られる。一方で『シルバー・ムーン』のサイズになると寄港可能な港がかなり増え、これまでのクルーズ旅行には加えられなかった場所にも寄ることができる。今回の『シルバー・ムーン』の寄港地の1つである奄美大島や伊勢志摩の港は超大型船では寄港できないところの1つだ。寄港できる港が増えれば、通常はなかなか行きにくい一般的な観光地ではない場所にもクルーズ旅行で行けるようになり、そこならではの”特別な体験”をお客様に提供できる。今回は初めてだったので寄港地をすべて変えることはできなかったが来年以降は寄港地をこれまでの場所とは変えて、探検型クルーズの要素を強めてもいい。やはりクルーズ旅行の1つの魅力は寄港地での体験だ。寄港地でのオプショナルツアーも含めて充実させていきたい」

 ――客室は。

 「『シルバー・ムーン』の客室は全室スイートルーム仕様とリッチな作りとなっている。部屋のランクによって異なるが一般的な客船よりも広く、全室スイートルームの客室にはベランダやバスタブもついている。外国船の場合、シャワーブースのみであることが多く、バスタブがついているのは珍しいが、日本人のお客様にゆっくりくつろいで頂ける。客室から専属のバトラー(執事)を呼んで様々なサービスを受けることができることもこれまでのクルーズ船になかった特徴だ」

専属バトラーが様々なサポート

 ――バトラーサービスとは。

 「お客様専属のバトラーがついてお客様の要望を聞き、サポートする。例えば、スーツケースから衣服を出して客室のクローゼットに収納してくれたり、船内のレストランの予約、食べ物や飲み物のルームサービスなど客室内の電話から頼むことができる非常に便利なものだ。ただ、『シルバー・ムーン』でのクルーズは当社としては初めてだったこともあり、少し課題も感じた」

 ――課題とは。

 「バトラーはお客様から指示された要望を『ノー』と言わずに実現するというのが基本的な考え方だ。言ってくれれば何でもやると。ただ、日本人にとっては何らかのメニューがあって、それを頼むということが一般的だ。何でも頼んでよいと言われても戸惑ってしまう方が多かったのではないか。しかも、バトラーには英語で指示する必要がある。バトラーはプロフェッショナルなのであまり英語が話せなくとも何とか趣旨を読み取ってサービスを行うわけだが、なかなかバトラーにお願いできないお客様も少なくなかったのではないかと考えている。(クルーズ旅行の)途中からジュースやアルコール飲料などを日本語で記載した『バトラーに持ってきてもらえるおすすめドリンクメニュー』という案内や靴磨きやお風呂の用意、果物のお届けなど『バトラーはこんなこともお手伝いします』という事例を記載したプリントを客室に配布するなどした。バトラーから日本語で挨拶をしてもらいお客様とコミュニケーションが取りやすいような環境を作るなどすることで、だんだんとお客様も勝手が分かってきたようで、船内でお客様にアンケートを行った結果からもバトラーのサービスを楽しんでいる方々も多く、反応は上々だった。初回なので反省はあったが次の機会にはよりバトラーサービスが身近となるようにより工夫したい」


 
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