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「7月から“最強配送”開始」【松村亮常務執行役員に聞く 2024年の「楽天市場」②】 インフラへの投資積極的に

2024年 2月22日 12:00

 前号に続き、楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」の機能改善や物流関連の取り組みについて、松村亮常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーシニアヴァイスプレジデントに聞いた。

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 ――昨年はSKU対応による商品管理への移行を進めた。

 「95%以上の店舗がSKUへ移行完了した。結果として、SKUへの対応がユーザーの『商品の見つけやすさ』につながっており、楽天市場内商品検索におけるクリック率は、バリエーションラベルや単価を表示した検索結果のほうが、表示しない検索結果の2倍以上となっており、SKUへの移行は結果として良かったのではないか」

 ――定期購入の仕組みについても全面的に刷新する。

 「今も定期購入の仕組み自体はあるが、ユーザーとしても店舗としても非常に使いづらい感じになってしまっているので、全面的に作り直す。通常の販売商品と定期販売商品を1ページで表示し、ユーザーが商品の購入方法を選択しやすいUIとする。また、定期購入固定費として店舗から徴収していた月額5000円を廃止、売り上げに応じたシステム利用料のみとする。また、ユーザー向け改変としては、通常購入価格より5%以上安価にするほか、SPU対象としたり、3店舗利用でポイント5倍にしたりする」

 ――出店者向けのクーポンサービス「ラ・クーポン」を4月から有料化する。

 「ラ・クーポンの開始以降、店舗のクーポン利用料を無料とするキャンペーンが続いていたが、これを終了し、有料化することでユーザーのクーポン獲得体験をもっと良くしていきたい。具体的には、ターゲティングの精度を高めることで、マーケティングの効率化を図る。クーポンが無くても買うユーザーには発行せず、クーポンの有無で購買を決めるユーザーには200円割引クーポンを発行、割引額が大きいクーポンがあれば買うユーザーには500円割引クーポンを発行といったように、クーポンによるユーザーの購買動向を分析し、効率的に値引き原資を振り分けるといったことが考えられる」

 ――物流関連の取り組みについて。

 「『共通の送料込みライン』に関しては、95%以上の店舗が導入し、導入店舗の流通成長は未導入店舗を大きく上回っている。また、昨年6月には『最短お届け可能日表示機能』を導入、最短いつ届くのか明確に表示することで、購買転換率が9%改善している。ここから先は、それに加えて配送までのリードタイムを短くするとともに、必ずしも早く届けることを望まないユーザーに対しては、『自宅にいるときにきちん届ける』ために『急がない便(仮称)』の導入を実現していく予定だ」

 ――リードタイム短縮については、配送品質が高い商品を優遇する仕組みとして、基準を満たした商品にラベルを付与する仕組み「配送品質向上制度」を導入する。

 「7月からのスタートで、名前を『最強配送』とする。楽天モバイルの『最強プラン』に合わせたわけではないが、スピード配送だけではなく、一人ひとりにあわせたベストな受取選択肢を提供できる商品にラベルを付与する」

 ――物流代行サービス「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」の機能拡充について。

 「今まではどちらかというと画一的なサービスだったので、『こういったオペレーションに対応してもらえないと使えない』という店舗もあったが、そういった要望の中でもニーズが大きいものについては、少しずつサービスメニューに加えている。RSL利用店舗の成長率は高く、ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞店舗中でも利用店舗はかなり多くなっている」

 ――1月25日の「新春カンファレンス」における三木谷社長の講演では、AIを使った店舗支援サービスの導入が発表された。

 「昨今は大規模言語モデルや生成AIが大きな進化を遂げているわけで、それをきちんと楽天市場でも使っていく。店舗運営効率の向上と顧客体験の向上を目指したい」

 ――AIなど、インフラへの投資を積極的に続ける。

 「2019年から23年の5年間で、楽天市場における各種インフラコストの合算推移は約1・6倍に拡大した。ここへの投資を止めると楽天市場の進化は止まってしまうので、引き続き積極的に投資を続けていく。そのため、全出店プランにおいて、月額出店料部分の値上げをお願いすることになった。物価高の影響もあり、システムコストが増大しており、ここからAIなどにも投資を続けていかなければいけない。もちろん、大半は楽天が負担するわけだが、その一部を協力してもらいたい。システムへの投資を続けていくことで魅力的な楽天市場を継続して作っていけると思っているし、結果的に店舗のためになると信じている」(おわり)

 
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