健康食品産業協議会 消費者庁が不快感、事前調整なく「協議中」と説明
「消費者庁と相談中という話だが、私を含め報告を受けていない。組織的に相談を受けたことはない」。10月4日、健康食品産業協議会主催のセミナー(本紙1914号既報)で、消費者庁の依田学審議官(食品担当)は、不快感を隠さず指摘した。会場には、業界関係者200人近くが詰めかけていたが、協議会側は公衆の前で「協議中などという話を出してしまって申し訳ありません」と謝るほかなかった。
「組織的に相談の事実はない」
問題は、協議会が策定を進める事後チェック指針の「解説書」の説明にあった。解説書で示す指針の解釈について、「消費者庁と協議中」などと説明。これに「お墨付きを与える印象になる」(依田審議官)と指摘した。同席した今川正紀食品表示企画課保健表示室長も「業界の取り組みをサポート差し上げたいが、協議中のものが出たり、協議済みとなると我々は一切コメントできない」とした。
依田審議官は、セミナー後も「指針は、次長通知。我々が決める話じゃない。業界ルールについて担当者から意見をもらったということであればいいが、公衆の面前で公表しちゃダメでしょ」と不満が収まらなかった。
2009年、業界が団体一本化に動き出した時も似たようなことがあった。協議会の前身である健康食品産業振興検討会が団体一本化に向けた報告会を開いた際、来賓の厚生労働省新開発食品保健対策室長は、「個人的にこうした団体ができるのは良いこと」としつつ、「厚労省の食品安全部としては産業振興にタッチできないため、応援も後援もしていない」と突き放した。重要なのは、加えて「どういった目的の会合なのかも事前に聞いていない」と発言したことだ。
今回も同じだろう。事前にどの資料を使い、どう説明するか綿密なすり合わせを行っていなかったのではないか。「さくらフォレスト事件の意見を求められることも聞いていなかったらしい」と話す関係者もいる。
必要なのは緊張関係
本来、行政が「お墨付き」とハンコを押すものでないことは多くの関係者が承知している。委縮するほどのことでもない。業界側の講演者が意気消沈する中、協議会の西村栄作氏(ガイドライン分科会長、森永製菓)は、「保健機能食品は、表示制度だが、健康寿命の延伸に寄与するものでありたい。どうしたら表示制度の殻を破れるか。どの程度健康寿命の延伸に役立っているか、意味があるか調査できないか。そうすれば制度の方向性を定めるヒントが得られる」と、方針が安定しない制度に道筋をつけることを求め意見した。なぜ国がそれをしないのか、業界を代表して行政に求めるのが本来の役割だ。
協議会は届出の根拠確認でも撤回を促したというが、それでは単なる行政の下請けだ。不満を持つ企業に変わり、根拠否定の理由を求めるのが役割だろう。「悪魔の証明のようなもので、議論しても意味がない」(依田審議官)などという説明に納得する必要などない。
今川室長は、業界への期待に「強くなってもらいたい」とも述べていたが、残念ながら現状はその通りだろう。
行政と業界の関係は長く変わっていない。規制強化、制度の理念すら失われようとする危機に瀕しても、「お上の言うことを聞いていれば悪いようにはされない」などという神話がある。
協議会はあたかも乱立する団体が大同団結したかに見えるが、実態は互いの自治を守りながらの緩い連帯だ。業界への関心も担当部署、担当者レベルにとどまり、業界の形成に本腰を入れる機運が加盟する各企業の中で育っていない課題が改めて浮き彫りになった。協議会に必要なのは、育成が念頭にない行政の顔色を窺い和やかな関係をつくることではなく、不要な規制の監視など緊張関係をつくることだろう。
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「組織的に相談の事実はない」
問題は、協議会が策定を進める事後チェック指針の「解説書」の説明にあった。解説書で示す指針の解釈について、「消費者庁と協議中」などと説明。これに「お墨付きを与える印象になる」(依田審議官)と指摘した。同席した今川正紀食品表示企画課保健表示室長も「業界の取り組みをサポート差し上げたいが、協議中のものが出たり、協議済みとなると我々は一切コメントできない」とした。
依田審議官は、セミナー後も「指針は、次長通知。我々が決める話じゃない。業界ルールについて担当者から意見をもらったということであればいいが、公衆の面前で公表しちゃダメでしょ」と不満が収まらなかった。
2009年、業界が団体一本化に動き出した時も似たようなことがあった。協議会の前身である健康食品産業振興検討会が団体一本化に向けた報告会を開いた際、来賓の厚生労働省新開発食品保健対策室長は、「個人的にこうした団体ができるのは良いこと」としつつ、「厚労省の食品安全部としては産業振興にタッチできないため、応援も後援もしていない」と突き放した。重要なのは、加えて「どういった目的の会合なのかも事前に聞いていない」と発言したことだ。
今回も同じだろう。事前にどの資料を使い、どう説明するか綿密なすり合わせを行っていなかったのではないか。「さくらフォレスト事件の意見を求められることも聞いていなかったらしい」と話す関係者もいる。
必要なのは緊張関係
本来、行政が「お墨付き」とハンコを押すものでないことは多くの関係者が承知している。委縮するほどのことでもない。業界側の講演者が意気消沈する中、協議会の西村栄作氏(ガイドライン分科会長、森永製菓)は、「保健機能食品は、表示制度だが、健康寿命の延伸に寄与するものでありたい。どうしたら表示制度の殻を破れるか。どの程度健康寿命の延伸に役立っているか、意味があるか調査できないか。そうすれば制度の方向性を定めるヒントが得られる」と、方針が安定しない制度に道筋をつけることを求め意見した。なぜ国がそれをしないのか、業界を代表して行政に求めるのが本来の役割だ。
協議会は届出の根拠確認でも撤回を促したというが、それでは単なる行政の下請けだ。不満を持つ企業に変わり、根拠否定の理由を求めるのが役割だろう。「悪魔の証明のようなもので、議論しても意味がない」(依田審議官)などという説明に納得する必要などない。
今川室長は、業界への期待に「強くなってもらいたい」とも述べていたが、残念ながら現状はその通りだろう。
行政と業界の関係は長く変わっていない。規制強化、制度の理念すら失われようとする危機に瀕しても、「お上の言うことを聞いていれば悪いようにはされない」などという神話がある。
協議会はあたかも乱立する団体が大同団結したかに見えるが、実態は互いの自治を守りながらの緩い連帯だ。業界への関心も担当部署、担当者レベルにとどまり、業界の形成に本腰を入れる機運が加盟する各企業の中で育っていない課題が改めて浮き彫りになった。協議会に必要なのは、育成が念頭にない行政の顔色を窺い和やかな関係をつくることではなく、不要な規制の監視など緊張関係をつくることだろう。