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物流センター見学 ムトウマーケティングサポート

2009年 7月28日 20:59

ムトウの子会社、ムトウマーケティングサポート(MMS)では、ネット販売企業向けの出荷代行事業を手掛けている。ムトウの流通センターを中心に、約八千坪をネット販売企業から委託された商品の出荷場としており、今年9月には静岡・磐田市に出荷代行専門として、約8000坪の物流センターが完成するなど、事業は拡大傾向にある。

MMSの出荷代行は、誤出荷の少なさには定評がある。これは、本業に裏打ちされた在庫管理のノウハウがあるからだ。

浜松市にあるムトウの流通センターでは、約4000坪をMMSの出荷代行用に振り分けている。桃源郷やアンジェといった大手ネット販売企業が出荷場を設置。作業員は、全員帽子を着用する。これは、箱に髪の毛が入ることを避けるためだ。

親会社であるムトウの場合、商品の出荷は自動化されているが、MMSの出荷代行は基本的に手作業だ。誤出荷を減らす仕組みはどのように築いたのだろうか。

MMSでは、ネットショップが前日に受けた注文を出荷するため、当日朝には出荷する商品の数が分かる。まず、ピッキングが終わった際に、ピッキングした人以外の作業員が残った商品の数をチェックする。つまり、ある商品が百個あり、30個ピッキングしたとすれば、70個が残っている。これが合っているかどうか数えるわけだ。

箱詰めが終わったあとには、また別の作業員が検品作業を行う。「人間は必ず間違える」ことを前提にチェックすることで、誤出荷を数万件に1件というレベルにまで引き下げている。

ピッキングの際も工夫している。棚が3段に分かれているが、上下の区別がきちんとつくように「下の棚」という札を掲示。さらに、もっと間違いを減らすために、必ずこの札に接触してから商品を取るというルールを決めた。また、なるべく短い歩数でピッキングできるような配置も心がける。このような効率を上げるための仕組みづくりは、毎月クライアントと相談して改良しているのだという。

商品出荷にはハサミやカッターなどの刃物がつきものだが、まれに箱に紛れ込んでしまうことがある。こうしたトラブルを避けるために、ハサミを使用する際は白板に自分の名前を記入して責任を持つことにしている

作業員は、クライアントごとに決まったチームを組む。当日出荷する数は朝に分かるため、忙しさに差が出ることもあるが、その場合は余った人員を回すなど、機動的に対応する。

ギフト包装など、個別の対応が必要なときは、専門の作業員が梱包を手掛ける。中には、手書きの手紙や折り鶴などを商品に添える企業もあるが、こうした手間のかかる作業にも対応。商品や販売の形態に合わせて、細かな出荷ニーズに応えられることも人気の要因だ。

温度管理が必要な食品の出荷代行に関しては、浜松委託倉庫が運営する、浜松市内の物流センター「浜松委託倉庫 米津出荷センター」から行っている。

07年4月に完成した同センターでは、14社の食品通販会社の出荷代行を手掛けている。大手のネット販売では、北国からの贈り物が昨年四月に北海道の出荷センターから移管。07年12月は26日までしか出荷できなかったが、出荷体制の変更によって、08年は30日までの出荷が可能になり、増えた分の4日間で1億円の売り上げ増になったという。

同センターは冷凍・冷蔵の商品に特化している。常温、冷蔵、冷凍と3種類の倉庫に分かれており、商品に合った温度帯で管理することができる。生鮮食品だけではなく、ワインやビールといった酒類から、化粧品・健康食品も取り扱う。

特筆すべきは、衛生面に気を使っていること。まず、作業場に入る前にはエアシャワーを使い、毛髪やゴミ・ホコリなどを落とすほか、上履きを着用し、靴底をきれいにしてから入場する。また、作業場では毛髪が商品に落ちることがないよう、帽子の着用を義務付けている。

生鮮食品などを扱う冷凍庫では、マイナス25度で商品を管理。作業員は冷凍庫でピッキングし、10度に保たれた作業エリアで箱詰めを行う。その後はまた冷凍庫に商品を戻し、運送会社のトラックに商品を積み込むまで温度が上がらないようにする。

ワインを保管する倉庫は、温度を15度、湿度を7075%という、ワインを管理するのに最適な条件に保っている。倉庫には窓がなく、酸化の原因となる光も差し込まないため、ワインを保管するにはうってつけの環境といえる。倉庫内で商品を撮影することも可能だ。ネットショップにとっては、一度入庫した商品を配送してもらう必要がなくなるため、手間やコストが省けることになる。

ビールや日本酒なども取り扱っているが、商品を保管するダンボールの棚の取り出し口には、ゴムを張っている。これは、落下防止だけではなく、商品を取り出しやすくする目的があるのだという。

同センターでは約40人の作業員が働いており、1日に13001500件の出荷を行う。年末などの繁忙期には、90人の作業員が1万件の出荷を手掛けることもあるという。ムトウの流通センターと同じく、商品の在庫数とピッキングした商品の数を照らし合わせることで、数万件に1件まで誤出荷を減らす仕組みを築き上げた。

また、担当の企業ごとに連絡用のノートを用意しており、改善すべき点などを記入して朝礼で発表。情報を全員で共有することで、より良い作業体制を作るべく努力している。
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