「リポDとセサミンは競合」【大正製薬VSサントリーW④サントリーは競合か】 部外品と健食「イメージ大差なし」
大正製薬による訴訟で「健康食品」の記載の解釈と並び争点になったのが、サントリーウエルネス(以下、サントリー)が競合にあたるかだ。
実際の事業展開でいえば、健康食品と医薬部外品は近接した領域がある。「リポビタンD」を展開する大正製薬は法廷で「セサミンEX」を取り上げ、「疲労回復、予防等と同様の効果を持つ」と訴えた。
リポビタンシリーズの年間売上高は、500億円前後(国内)で推移するが、新商品の契約を袖にされた20年は、前年比10%減。400億円台半ばまで落ち込んだ。裁判資料によると、サントリーのセサミンシリーズは、「DHA&EPA+セサミンEX」「セサミンEX」の2製品で総売上の約4割(20年12月期の実績で約431億円、本紙推計)を占める。全般的な健康イメージで市場に浸透するセサミンシリーズを脅威に感じて対抗心をみせる気持ちも分からなくはない。
ただ、法廷で争われたのは、「主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品を主として製造販売する第三者の広告宣伝」との出演禁止規定に妥当するか。「セサミンEX」(健食)が「主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品」にあたり、サントリーがこれを「主として製造販売する第三者」と言えるかだ。
大正製薬は、「商品の機能、特徴だけで競合商品との差別化は困難で、イメージの訴求が広告の重要な役割。(契約では)イメージというややもすればあいまいな概念が重要」と競合であることを主張。規定の趣旨は、選手のファンである消費者が競合他社の商品を購入することによる売り上げ減少の防止にあり、「商品イメージ、売上構成比、市場シェア、広告宣伝費」を考慮して広く解釈されるべきなどと訴えた。健食と部外品の違いは、「効果をうたえるかに過ぎず、商品イメージに差はないため、医薬部外品との記載は、限定的な意味合いを持たない」とした。
大正製薬の「主力商品」は、リポビタンDXを含むリポビタンシリーズ、アルフェシリーズ(美容ドリンク)、アドライズシリーズ(スキンケア)。サントリーもセサミンシリーズ以外にミルコラ(美容サプリ)やエファージュ(スキンケア、医薬部外品を含む)が主として製造する商品があり、「美容関連」「スキンケア」などの共通項から同種・類似の商品を製造販売するとした。
一方のハットトリックは、規定は競合製品の範囲を限定する趣旨があり、書かれていたのは、「医薬品、医薬部外品」。また、「主力商品」との文言から、シリーズ全体ではなく個別商品(リポビタンD)を意味すると主張した。アルフェ、アドライズは構成比、市場シェアが低く主力にあたらず、「セサミンEX」も配合物の違いから「同種・類似の製品」にあたらないとした。
陳述でもハットトリック担当者は、「リポビタンD以外は念頭になかった。競合制限の範囲は部外品に該当するドリンクと考えていた」。博報堂DYスポーツマーケティングの担当者も「部外品ではないドリンクを除外する趣旨と理解。アドライズが該当すると聞いたが主力と捉えるのは難しい。そうであれば三浦選手は1カテゴリー8000万円の契約金が相場だから、5000万円以外に8000万円が必要になるはず」と後押しした。
法廷では、両社の売上構成比を根拠に判断されている。サントリーの総売上高に占める部外品の構成比は2%程度にとどまる。大正製薬の売上構成比(20年)は、リポビタンシリーズが458億円(国内のみ、構成比約20%)、アルフェは約23億円(同1%)、アドライズは約6億円(同0・3%)。
地裁は「『医薬部外品』と明確に区分されることからすると限定されるとの解釈が妥当。サントリーは2%前後に過ぎず、部外品を主として販売していることを裏づける証拠はない」とした。広く解釈すべしとの大正製薬の主張も「出演制限される競合他社の範囲を画する規定に照らせば、そのような解釈を理解していたとは到底考え難く採用できない」とした。高裁も「部外品にあたらないものの、これと同種・類似する商品は容易に想定しがたく、仮にあり得えてもそれにあたるかの判断は困難。出演制限される広告主の範囲が不当に拡大する」とした。(つづく)
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実際の事業展開でいえば、健康食品と医薬部外品は近接した領域がある。「リポビタンD」を展開する大正製薬は法廷で「セサミンEX」を取り上げ、「疲労回復、予防等と同様の効果を持つ」と訴えた。
リポビタンシリーズの年間売上高は、500億円前後(国内)で推移するが、新商品の契約を袖にされた20年は、前年比10%減。400億円台半ばまで落ち込んだ。裁判資料によると、サントリーのセサミンシリーズは、「DHA&EPA+セサミンEX」「セサミンEX」の2製品で総売上の約4割(20年12月期の実績で約431億円、本紙推計)を占める。全般的な健康イメージで市場に浸透するセサミンシリーズを脅威に感じて対抗心をみせる気持ちも分からなくはない。
ただ、法廷で争われたのは、「主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品を主として製造販売する第三者の広告宣伝」との出演禁止規定に妥当するか。「セサミンEX」(健食)が「主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品」にあたり、サントリーがこれを「主として製造販売する第三者」と言えるかだ。
大正製薬は、「商品の機能、特徴だけで競合商品との差別化は困難で、イメージの訴求が広告の重要な役割。(契約では)イメージというややもすればあいまいな概念が重要」と競合であることを主張。規定の趣旨は、選手のファンである消費者が競合他社の商品を購入することによる売り上げ減少の防止にあり、「商品イメージ、売上構成比、市場シェア、広告宣伝費」を考慮して広く解釈されるべきなどと訴えた。健食と部外品の違いは、「効果をうたえるかに過ぎず、商品イメージに差はないため、医薬部外品との記載は、限定的な意味合いを持たない」とした。
大正製薬の「主力商品」は、リポビタンDXを含むリポビタンシリーズ、アルフェシリーズ(美容ドリンク)、アドライズシリーズ(スキンケア)。サントリーもセサミンシリーズ以外にミルコラ(美容サプリ)やエファージュ(スキンケア、医薬部外品を含む)が主として製造する商品があり、「美容関連」「スキンケア」などの共通項から同種・類似の商品を製造販売するとした。
一方のハットトリックは、規定は競合製品の範囲を限定する趣旨があり、書かれていたのは、「医薬品、医薬部外品」。また、「主力商品」との文言から、シリーズ全体ではなく個別商品(リポビタンD)を意味すると主張した。アルフェ、アドライズは構成比、市場シェアが低く主力にあたらず、「セサミンEX」も配合物の違いから「同種・類似の製品」にあたらないとした。
陳述でもハットトリック担当者は、「リポビタンD以外は念頭になかった。競合制限の範囲は部外品に該当するドリンクと考えていた」。博報堂DYスポーツマーケティングの担当者も「部外品ではないドリンクを除外する趣旨と理解。アドライズが該当すると聞いたが主力と捉えるのは難しい。そうであれば三浦選手は1カテゴリー8000万円の契約金が相場だから、5000万円以外に8000万円が必要になるはず」と後押しした。
法廷では、両社の売上構成比を根拠に判断されている。サントリーの総売上高に占める部外品の構成比は2%程度にとどまる。大正製薬の売上構成比(20年)は、リポビタンシリーズが458億円(国内のみ、構成比約20%)、アルフェは約23億円(同1%)、アドライズは約6億円(同0・3%)。
地裁は「『医薬部外品』と明確に区分されることからすると限定されるとの解釈が妥当。サントリーは2%前後に過ぎず、部外品を主として販売していることを裏づける証拠はない」とした。広く解釈すべしとの大正製薬の主張も「出演制限される競合他社の範囲を画する規定に照らせば、そのような解釈を理解していたとは到底考え難く採用できない」とした。高裁も「部外品にあたらないものの、これと同種・類似する商品は容易に想定しがたく、仮にあり得えてもそれにあたるかの判断は困難。出演制限される広告主の範囲が不当に拡大する」とした。(つづく)