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「よい商品選び物語伝える」【伊藤淳史CEOに聞く QVCジャパンの現状と今後】 TV以外での新客獲得本格化へ

2023年 7月27日 12:00

 通販専門放送を行うQVCジャパンの業績が好調だ。コロナ禍による巣ごもり消費増による反動減などで通販各社が苦戦する中、前期(2022年12月)業績は増収増益となり、成長を続けている。3月末に同社の代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任した伊藤淳史氏にQVCジャパンの現状や今後の方向性について聞いた。(聞き手は本紙編集局長・鹿野利幸)





番組通じて嬉しさや喜び届ける 
 
 ――3月31日付でCEOに就任した。かつて在籍(※16~20年まで最高財務責任者を担当)していたQVCジャパンにCEOとして復帰した理由は。

 「私がQVCから離れたのは20年5月で、ちょうどコロナ禍が始まったタイミングだった。行動が制限され、皆が家にいることを余儀なくされる中で、人が人らしく生きていくには生活の中で感じる喜びや嬉しさといった感動が欠かせないのではないかと考えた。QVCを離れた後も番組を視聴していたが、QVCの番組には嬉しさや喜びがあった。番組を通じてそうした感動を届けられるQVCのビジネスモデル、社会的意義は素晴らしいと改めて認識していた。そのような中で昨夏ころに私が在籍していた当時のファイナンスの観点だけでなく、ビジネスをしっかり理解した上で業務を進めてきた経験・知識やその印象などを踏まえてだと思うが、(QVCジャパンのCEOの選考について)話があり、これはしっかりお受けしてQVCのビジネスひいては社会的意義を確かなものにしていかなければという一心で復帰を決めた」

 ――QVCジャパンの強みとは。

 「商品は世にごまんとあるが、その中で当社のバイヤーがしっかりと独自の目線でよいものを選び、1つ1つの商品にある作り手あるいは機能面などの伝えるべきストーリーをしっかり伝えることができるという商材と商材にまつわる物語を伝えることができる力に尽きると思う」

当たり前のことを実直に重ねる

 ――直近の決算(22年12月)は増収増益(売上高は前年比3・8%増の1329億3400万円、営業利益は同6・5%増の269億4700万円、経常利益は同5・6%増の270億8400万円、当期純利益は同6・0%増の189億1800万円)だった。業績が好調な理由は。

 「コロナ禍の中では巣ごもり需要もあり、当社も業績を伸ばしたが(コロナ収束後もコロナ禍の際の特需に)慢心することなく、愚直に商品を選りすぐんでその商品の良さをしっかりとお伝えしていくということをやり続けてきた。併せてお客様の声をお伺いしながら、イベント(特番やキャンペーン)を行うタイミングや内容を決め、その戦略・方針を社員皆がしっかりと理解した上で、実践することで時間あたりの生産性を高めてきたことが大きい。当社の中ではよく『エクスキューション、エクスキューション』と言っているがよい戦略を立ててもエクスキューション(実践)できないとそれは絵に描いた餅だ。これがしっかりと継続してできている。当たり前のことだが、当たり前のことを実直に重ねていくが毎年の成長を支えている」

 ――売れ筋の傾向は。

 「この2~3年で継続して成長しているジャンルは例えば健康食品、サプリ、美容関連品などのヘルス関連商材だ。足元も順調でまだまだ伸びしろがある。当社としてもお客様が求められているカテゴリに対し、集中して展開を強化しており、こうした点も当社が成長し続けることができている1つの理由だろう」

社会の公器としての役割果たす

 ――今後の方針は。

 「映像を通じて選りすぐった商品とその商品にまつわる物語をお伝えしていくという当社のビジネスモデルであり強みは今後も変わらない。ただし、当社が主戦場としているテレビが果たす役割は変化していく。若い世代ではテレビを持ってない人も少なくない。テレビのメディア価値が急になくなることはないにせよ、弱まっていくだろう。テレビ以外でもマルチチャネルで番組や商品をお届けすべく、例えばライブコマースやユーチューブライブ、また、『QVCテレビアプリ』(※21年4月から開始したQVCの番組をテレビ画面上で通信回線を通じて配信するサービス)などインターネットを介した様々な取り組みは行っているが、まだテレビのサポートという位置づけだ。Eコマース単独で1つのビジネスとして収益を生んでいくには色々なチャレンジがもっと必要だ。今のテレビのお客様をしっかり大事にしつつも、テレビ以外のお客様に対しても我々のビジネスをしっかりと展開して、現状の中心お客様層よりも若い年齢ゾーンの皆様にも喜んで頂くための商品の提案やEコマースにおけるサービスを強化して新しい層がQVCのファンになって頂けるようにしていきたい。併せてこれまでもそうだったが、より社会の公器としても役割をしっかりと果たしていきたい。当社は千葉県に本拠地を置いて全国に通販番組を放送して事業を通じて、消費者に様々な商品を届けている。商品の流通には様々な過程があるわけだが、一番の川下である当社が販売を軸とした様々な活動をがんばることで川上である物づくりを行う日本各地の様々な産業、製造事業者を盛り上げ、支えるための一助となり得ると考えている。小売業を通じた社会の公器としての役割を果たしていくために日本の目立ってはいないが優れた商品を見つけてしっかりと光を当てていくということはもちろん、SDGsの観点から地球環境や生活にやさしい日本の商品なども積極的に販売していきたい。社会に貢献していく中で成長していくということを事業の柱に据えていきたい」

 ――売上高は1300億円を超えたが、どこまでスケールすると考えているか。

 「先ほど話したようにお客様に商品をお届けするためのチャネルはテレビだけではなく、Eコマースはもちろん、OTTで番組を配信するような仕組みも今後、どんどん創出されていくはず。テレビショッピングだけの市場で展開していくわけでないため、ここまでいけば満足というのではなく、コンスタントに成長し続けたい」
 
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