ハルメクの通販がシニア女性から支持されている。グループのシンクタンクやVOCなどさまざまな顧客接点をフル活用することで、シニアの実態とニーズに即した誌面作りと商品開発を続けている。試作モニターや販売後の満足度調査など各段階で顧客の声を吸い上げるほか、検品を含めた品質管理を徹底している。「品質向上がお客様の離脱を防止する一番の方法」と語る金山博通販本部長(=
顔写真)に、通販事業の戦略などを聞いた。
――通販媒体を制作する上で大事にしていることは。
「
これはハルメクの『憲法』と言ってもいいと思うが、お客様の実態とニーズを理解し、分かったふりをしない、思い込みで作らないということを徹底している。等身大のシニア女性に対する理解力が強みだと思う」
「当社にはお客様を理解するためのツールがたくさんあり、それらをふんだんに利用することで理解に努めている。シニア女性の実態とニーズはどんどん変わる。私は”決めないマーケティング”と言っているが、とにかく聞くことを重視し、理解して深堀りする」
――グループにはシンクタンクもある。
「シンクタンクの『生きかた上手研究所』だけでなく、お客様ハガキやコールセンター、グループインタビューも実施して実態把握に努めている。コロナ禍のグループインタビューはオンラインで開催したが、オンライン会議の使い方もレクチャーした。また、お客様の自宅に訪問して取材をさせてもらうこともある」
「VOCの面では、商品やサービスに関するお客様のご意見は文章化して1件ずつチェックし、すべてに答えを出すことでスタッフのマインドがそろってくる。お客様に対するそうした姿勢が当社のDNAになっている」
――各段階で顧客の声を聞いている。
「通販の商品開発や誌面作りの前に、お客様に話を聞いて実態を理解してから企画を立てている。商品の発売前にも試作モニターを徹底して行う。コスメなどは100~200人規模で実施している。販売後も商品にハガキを入れて顧客満足度調査を実施し、ご意見を頂いたら品質改良する。売って終わりではないということを徹底している」
――例えば、コスメに関してはどんな要望があるのか。
「シニア女性は年齢を重ねてシワやシミができ、それを隠そうとして厚化粧になりがだが、実際に話を聞くと厚化粧は嫌いだと言う。薄化粧が良くても、それではきれいにならず、どうすればいいかと悩んでいる。若返りたいわけではなく、若く見られたいと思っている。『若返りたい』と『若く見られたい』のニュアンスの差を見誤ると、『私たちのことを分かってないわね』と嫌われてしまう。そうした機微を感じとることが大切で、一歩突っ込んだ理解力が必要だ」
――品ぞろえの方向性や通販誌の特徴は。
「大事にしているのは、品ぞろえで勝負するのではなく、提案する商品によってお客様の暮らしがどう良くなるか、気持ちが前向きになるかなどを重視している」
「当社は雑誌『ハルメク』に同梱して通販誌を届けている。通販を利用されない方には、このまま通販誌を送るか聞いているが、通販を利用していなくても『そのまま送って』と答える方がけっこういる。通販誌であっても読み物として楽しみにしている方が多い」
――シニア層に商品を買ってもらうのに不可欠な要素は。
「当社はひとつのカテゴリーに編集と商品開発の担当者がそれぞれいて、常にコミュニケーションを取っている。お客様が『使ってみたい』とか『試してみたい』という気持ちになるのは、背景を知った上での商品に対する納得性だと思う。『なぜこの商品なのか』ということがマッチしていないといけない。商品開発と編集者のコミュニケーションの深さと一体感で生み出す『商品×情報』が当社通販事業の強みになっている」
――顧客の定着化に向けた取り組みは。
「商品やサービスの品質はお客様の離脱を防止する一番の方法だ。当社は品質管理に関しては毎週1回、『クレームゼロ』という会議を行っている。社長や全社の幹部が集まって、1週間で届いた商品やサービスに対するお叱りを1件ずつ協議する。どういう対応を取って、それが十分だったかを話合う。この作業は各自のベクトルを合わせるのに役立つ。もちろん、会議の中身は幹部がそれぞれのスタッフと共有する」
――品質維持には検品作業も大事だ。
「当社では生産工場と指定検品所とで2回検品をしているが、工場の検品で出てきた不良の情報を必ず指定検品所に伝えるようにしている。そうすることで、この商品で起きやすい不良の部分が見えてくるので、通常の検品時よりも精度が上がる。そうした情報は当社にも共有してもらっている。クレームというのは必ず起きるが、大事なのは同じ轍を踏まないことだ」
――通販媒体の発刊頻度は。
「通販誌は年12回発刊している。新聞広告で新規獲得をする場合は、事前にトライアルをして成果が出れば本格展開という流れだが、通販誌の場合は頻度が高いので試し刷りをするのはなかなか難しく、外さないために何が大事かというと、やはり顧客理解ということになる」
――顧客理解に基づいたハルメクならではの企画などは。
「例えば『冷え』に関する企画はどこでも実施していると思うが、冷えると免疫力が落ちて病気になりやすくなるのが一番怖い。当社ではお客様に話を聞きながら、単なる『冷え対策』で終わらせずに、不調を改善するための室内運動を推奨したりする。その際も『単純な運動は長続きしない』という意見があれば”ながら運動”の企画を立てたり、睡眠時に血液が体全体に回りやすくするための寝方を提案したりする」
「当社の通販事業は7つのカテゴリーがあるので、ひとつの企画であってもカテゴリーをまたいで、かけ算にしていけるのが強みだと思う」(つづく)
――通販媒体を制作する上で大事にしていることは。
「これはハルメクの『憲法』と言ってもいいと思うが、お客様の実態とニーズを理解し、分かったふりをしない、思い込みで作らないということを徹底している。等身大のシニア女性に対する理解力が強みだと思う」
「当社にはお客様を理解するためのツールがたくさんあり、それらをふんだんに利用することで理解に努めている。シニア女性の実態とニーズはどんどん変わる。私は”決めないマーケティング”と言っているが、とにかく聞くことを重視し、理解して深堀りする」
――グループにはシンクタンクもある。
「シンクタンクの『生きかた上手研究所』だけでなく、お客様ハガキやコールセンター、グループインタビューも実施して実態把握に努めている。コロナ禍のグループインタビューはオンラインで開催したが、オンライン会議の使い方もレクチャーした。また、お客様の自宅に訪問して取材をさせてもらうこともある」
「VOCの面では、商品やサービスに関するお客様のご意見は文章化して1件ずつチェックし、すべてに答えを出すことでスタッフのマインドがそろってくる。お客様に対するそうした姿勢が当社のDNAになっている」
――各段階で顧客の声を聞いている。
「通販の商品開発や誌面作りの前に、お客様に話を聞いて実態を理解してから企画を立てている。商品の発売前にも試作モニターを徹底して行う。コスメなどは100~200人規模で実施している。販売後も商品にハガキを入れて顧客満足度調査を実施し、ご意見を頂いたら品質改良する。売って終わりではないということを徹底している」
――例えば、コスメに関してはどんな要望があるのか。
「シニア女性は年齢を重ねてシワやシミができ、それを隠そうとして厚化粧になりがだが、実際に話を聞くと厚化粧は嫌いだと言う。薄化粧が良くても、それではきれいにならず、どうすればいいかと悩んでいる。若返りたいわけではなく、若く見られたいと思っている。『若返りたい』と『若く見られたい』のニュアンスの差を見誤ると、『私たちのことを分かってないわね』と嫌われてしまう。そうした機微を感じとることが大切で、一歩突っ込んだ理解力が必要だ」
――品ぞろえの方向性や通販誌の特徴は。
「大事にしているのは、品ぞろえで勝負するのではなく、提案する商品によってお客様の暮らしがどう良くなるか、気持ちが前向きになるかなどを重視している」
「当社は雑誌『ハルメク』に同梱して通販誌を届けている。通販を利用されない方には、このまま通販誌を送るか聞いているが、通販を利用していなくても『そのまま送って』と答える方がけっこういる。通販誌であっても読み物として楽しみにしている方が多い」
――シニア層に商品を買ってもらうのに不可欠な要素は。
「当社はひとつのカテゴリーに編集と商品開発の担当者がそれぞれいて、常にコミュニケーションを取っている。お客様が『使ってみたい』とか『試してみたい』という気持ちになるのは、背景を知った上での商品に対する納得性だと思う。『なぜこの商品なのか』ということがマッチしていないといけない。商品開発と編集者のコミュニケーションの深さと一体感で生み出す『商品×情報』が当社通販事業の強みになっている」
――顧客の定着化に向けた取り組みは。
「商品やサービスの品質はお客様の離脱を防止する一番の方法だ。当社は品質管理に関しては毎週1回、『クレームゼロ』という会議を行っている。社長や全社の幹部が集まって、1週間で届いた商品やサービスに対するお叱りを1件ずつ協議する。どういう対応を取って、それが十分だったかを話合う。この作業は各自のベクトルを合わせるのに役立つ。もちろん、会議の中身は幹部がそれぞれのスタッフと共有する」
――品質維持には検品作業も大事だ。
「当社では生産工場と指定検品所とで2回検品をしているが、工場の検品で出てきた不良の情報を必ず指定検品所に伝えるようにしている。そうすることで、この商品で起きやすい不良の部分が見えてくるので、通常の検品時よりも精度が上がる。そうした情報は当社にも共有してもらっている。クレームというのは必ず起きるが、大事なのは同じ轍を踏まないことだ」
――通販媒体の発刊頻度は。
「通販誌は年12回発刊している。新聞広告で新規獲得をする場合は、事前にトライアルをして成果が出れば本格展開という流れだが、通販誌の場合は頻度が高いので試し刷りをするのはなかなか難しく、外さないために何が大事かというと、やはり顧客理解ということになる」
――顧客理解に基づいたハルメクならではの企画などは。
「例えば『冷え』に関する企画はどこでも実施していると思うが、冷えると免疫力が落ちて病気になりやすくなるのが一番怖い。当社ではお客様に話を聞きながら、単なる『冷え対策』で終わらせずに、不調を改善するための室内運動を推奨したりする。その際も『単純な運動は長続きしない』という意見があれば”ながら運動”の企画を立てたり、睡眠時に血液が体全体に回りやすくするための寝方を提案したりする」
「当社の通販事業は7つのカテゴリーがあるので、ひとつの企画であってもカテゴリーをまたいで、かけ算にしていけるのが強みだと思う」(つづく)