「有意差が検出されるまで何度でも!無償で!」。ヒト臨床試験サポートを行うオルトメディコが始めた新サービスが物議をかもしている。肯定的な試験結果を「完全保証」するものであるためだ。業界関係者や研究者から「研究や機能性表示食品制度の信頼を歪める」といった批判が相次いでいる。
有意差が出るまで繰り返す
3月7日、オルトメディコが配信した新サービスのプレスリリースに、多くの関係者があぜんとした。研究に携わる者として”あり得ない”宣言をしていたためだ。
サービスは、「業界初!有意差、完全保証!!ヒト臨床試験有意差保証プラン提供開始」(=
画像)と、銘打たれている。対象にする機能性は、(1)体脂肪を減らす、(2)中性脂肪を抑える、(3)コレステロール値を改善、(4)尿酸値を下げる、(5)健康な肝臓の機能を維持――の5つ。無償で論文執筆(和文)と機能性表示食品の届出も代行する。有償オプションでは、委託企業の素材(成分)で届出に向けたコンサルティングも行う。プランは、届出実績のある成分が800万円(税抜)、新規成分が1600万円(同)。今後、対象となる機能性も拡大してく予定という。
ポイントは、有意差がでるまで原則、試験計画の変更を行わずやり直すこと。有意差が出た段階で論文化して届出までサポートするという。これに疑問の声が噴出している。
「大吉がでるまでおみくじをひく」
機能性表示食品制度は、国が定めた基準に基づき機能性を評価する必要がある。方法は、ヒト臨床試験とシステマティックレビュー(SR)の二択。端的にいえば、臨床試験は、特定の成分について摂取した集団と摂取しない集団を比較する。有意差とは、そこに「統計的に意味のある差」が表れることだ。制度活用の一つの要件になっている。
ただ、試験は繰り返すほど統計的な有意差が得られる確率が高まる。いわば、「大吉がでるまでおみくじを引くようなもの。臨床試験における御法度」(臨床試験に詳しい行政関係者)とされる。企業の研究部門関係者からも「試験はあくまで『検証』。実施前から確実に結果が得られるならば、それはもう試験ではない」と、厳しい指摘が聞かれる。
やり直しを堂々と宣言することにも「リテラシー、モラルの問題がある」(前出企業関係者)、「機能の確認ではなく、結果を出すことが目的になっているというスタンスがおかしい」(別の企業関係者)との声がある。
加えて、否定的な結果が得られた場合は論文化されないため、出版バイアスも生じる可能性が高い。もう一つの機能性評価法であるSRは、一定の基準で選択した複数の研究論文をもとに総合的な評価をする。当然、本来SRで評価に加えるべき否定的な結果は論文化されていないために検索・評価されない。評価が歪められ、「制度自体が根本的に破綻することになる」(同行政関係者)。
業界・制度の信頼貶める行為
オルトメディコは開始の経緯を「試験はまとまった人数がいないと結果がでにくい。予算ありきの事業者は、小規模の試験を行うこともあり、どうしても有意差がつけづらい。『なぜ結果がでないのか』という声もいただく。できる限りしっかりしたエビデンスを取得しないといけないという思いもあり考えた」と説明する。
指摘には、「誤解の生じる表現はあった。有意差を完全保証するわけではない。プランは、先行研究等から高確率で結果がでることを見極めた上で行い、どの成分でも受託し、結果を出すということではない」とする。
ただ、サービスは研究や制度に求められる信頼を自ら貶めるものだ。業界や制度に与えるマイナス影響は大きい。誤解の解消に向けた説明について「現時点でなんとも言えない」とするが、業界に渦巻く怒りはしばらく鎮まりそうにない。
有意差が出るまで繰り返す
3月7日、オルトメディコが配信した新サービスのプレスリリースに、多くの関係者があぜんとした。研究に携わる者として”あり得ない”宣言をしていたためだ。
サービスは、「業界初!有意差、完全保証!!ヒト臨床試験有意差保証プラン提供開始」(=画像)と、銘打たれている。対象にする機能性は、(1)体脂肪を減らす、(2)中性脂肪を抑える、(3)コレステロール値を改善、(4)尿酸値を下げる、(5)健康な肝臓の機能を維持――の5つ。無償で論文執筆(和文)と機能性表示食品の届出も代行する。有償オプションでは、委託企業の素材(成分)で届出に向けたコンサルティングも行う。プランは、届出実績のある成分が800万円(税抜)、新規成分が1600万円(同)。今後、対象となる機能性も拡大してく予定という。
ポイントは、有意差がでるまで原則、試験計画の変更を行わずやり直すこと。有意差が出た段階で論文化して届出までサポートするという。これに疑問の声が噴出している。
「大吉がでるまでおみくじをひく」
機能性表示食品制度は、国が定めた基準に基づき機能性を評価する必要がある。方法は、ヒト臨床試験とシステマティックレビュー(SR)の二択。端的にいえば、臨床試験は、特定の成分について摂取した集団と摂取しない集団を比較する。有意差とは、そこに「統計的に意味のある差」が表れることだ。制度活用の一つの要件になっている。
ただ、試験は繰り返すほど統計的な有意差が得られる確率が高まる。いわば、「大吉がでるまでおみくじを引くようなもの。臨床試験における御法度」(臨床試験に詳しい行政関係者)とされる。企業の研究部門関係者からも「試験はあくまで『検証』。実施前から確実に結果が得られるならば、それはもう試験ではない」と、厳しい指摘が聞かれる。
やり直しを堂々と宣言することにも「リテラシー、モラルの問題がある」(前出企業関係者)、「機能の確認ではなく、結果を出すことが目的になっているというスタンスがおかしい」(別の企業関係者)との声がある。
加えて、否定的な結果が得られた場合は論文化されないため、出版バイアスも生じる可能性が高い。もう一つの機能性評価法であるSRは、一定の基準で選択した複数の研究論文をもとに総合的な評価をする。当然、本来SRで評価に加えるべき否定的な結果は論文化されていないために検索・評価されない。評価が歪められ、「制度自体が根本的に破綻することになる」(同行政関係者)。
業界・制度の信頼貶める行為
オルトメディコは開始の経緯を「試験はまとまった人数がいないと結果がでにくい。予算ありきの事業者は、小規模の試験を行うこともあり、どうしても有意差がつけづらい。『なぜ結果がでないのか』という声もいただく。できる限りしっかりしたエビデンスを取得しないといけないという思いもあり考えた」と説明する。
指摘には、「誤解の生じる表現はあった。有意差を完全保証するわけではない。プランは、先行研究等から高確率で結果がでることを見極めた上で行い、どの成分でも受託し、結果を出すということではない」とする。
ただ、サービスは研究や制度に求められる信頼を自ら貶めるものだ。業界や制度に与えるマイナス影響は大きい。誤解の解消に向けた説明について「現時点でなんとも言えない」とするが、業界に渦巻く怒りはしばらく鎮まりそうにない。