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「RSL、店舗のニーズに対応」【楽天の松村亮常務執行役員に聞く㊦】 OMOは成功事例

2023年 3月 2日 11:00

 前号に続き、楽天市場の今年上半期戦略などについて、楽天グループの松村亮常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーヴァイスプレジデントに聞いた。

                                                                      ◇

 ――配送品質が高い商品を優遇する仕組みとして、基準を満たした商品にラベルを付与する仕組みを導入する。配送品質の基準に関しては「納期順守率96%以上」「6日以内の配送件数比率80%以上」「出荷件数が月に100件以上」「送料込みライン導入」、「午前の注文については常に翌日届けを、午後の注文については常に翌々日届けを指定できるようにすること(『あす楽』に対応)」といったものを検討しているとのことだが、具体的にはいつ頃決まるのか。

 「仕組みの導入は来年なので、これから店舗とコミュニケーションを取りながら、年内にも発表したい」

 ――ラベルは店舗ではなく商品に付与されるのか。

 「店舗基準と商品基準の2つを考えている。実績として店舗が基準を満たしていれば、『あす楽』対象の全商品にラベルが付与される。新たに商品が追加された場合でも、『あす楽』対象ならラベルが付与されるわけだ」

 ――ラベルが貼付された商品は、楽天市場内検索で優遇されるのか。

 「ユーザーから見て品質が良い商品を上に表示するというのが、モール内検索の基本的な考え方だ。配送品質が良い商品に関しても、ユーザーが目にしやすい場所に表示されるということになるだろう」

 ――ラベルが貼付された商品を絞り込んで検索できるようにするのか。

 「これから議論していくが、機能として検討する」

 ――どの程度の店舗にラベルが与えられるのか。

 「それなりの時間をかけて増やしていかなければいけないと思っているので、制度を導入していきなり90%が対応ということにはならないだろう。ただ、ユーザーにとっては配送品質が高い方が良いことは店舗にも納得してもらえると思うので、きちんとオペレーションが回るよう、われわれがサポートしていく」

 ――「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」の導入を求めていくのか。

 「RSLは基準を満たしているので、店舗の選択肢の1つにはなるはずだ。ただ、店舗自身で基準を満たせるのであればラベルは付与される」

 ――RSLの導入店舗が6000店超になったとのことだが、数年後の目標店舗数などはあるのか。

 「具体的に目標をイメージするのは難しいが、全店舗の10%を超えたというのは、ようやく1合目に到達したという感じだ。そのため、次のステップとして20%、30%を目指していきたい」

 「ベースのサービスはできているのだが、もっと店舗を取り込むために細かいサービスにも対応していきたい。店舗と話をすると、大筋は良くても物理加工をしていたり、特殊な処理をしていたりという場合があって、その部分が解決できないと移行できないということがある。もちろん、細かくカスタマイズするのは難しいが、良くある要望についてはメニューとして用意していく。例えば、180サイズ以上の大型商品の取り扱いを開始するほか、メール便の翌日配送や熨斗シール貼付への対応を決めた。こうした取り組みを進めていけば、今よりもっと多くの店舗に活用してもらえると思う」

 ――販促施策としては、近年ライブコマースを強化している。

 「売り方をもっと多様化しないといけない。モール内検索や広告を導線とした従来の手法以外にも、ユーザーに店舗の商品を紹介する手法を増やす必要がある。その1つがライブコマースということだ」

 「さまざまなジャンルの店舗と取り組んできたことで、どういった企画ならユーザーに訴求しやすいか、というノウハウはだいぶ溜まってきた。成功事例は作れてきたので、次のステージとしては成功事例をパッケージ化し、もっとサービスを使ってもらうようにしないといけない」


 ――中国などに比べると、日本の場合は配信での販売だけでペイするのは難しいという声もあるが。

 「中国はライブコマースの使い方がやや特殊なので、ああいった形での普及は難しいと思う。ただ、ライブならではの双方向感や臨場感があるし、店舗の熱量もテキストよりもリッチに伝えられるというメリットがある。そういったものが大事なカテゴリーの商品についてはライブコマースとの親和性が高いので、もっとシャープにしていけば、それなりに有用な販売手法となるのではないか」

 ――東京ファッションウィークのスポンサーとなって3年経過したが、どんな影響があったか。

 「業界内での楽天のプレゼンスを作ってくれた。ファッションブランドとの関係性を作るには、文化的な側面への理解やリスペクトを示すことが大事。ファッションウィークのスポンサーになったことで、そういった面がダイレクトに伝わったのではないか。これから先は、コンシューマー向けにファッションウィークについてもっと発信していきたい。そして、エンドユーザーに対して楽天のファッションに関するプレゼンスを構築する、というのが次のステップだ」

 ――OMO戦略に積極的に取り組んでいるが、どんな成果が出ているか。

 「さまざまなトライアルをやっている中で、成功事例が少しずつ積み上がってきている。O2O・OMOと相性が良いカテゴリーとジャンルの特徴に関しては見えてきた部分がある。実験フェーズは終わり、実装の仕方に関して思考するフェーズだ」

 ――ショールーミング店舗で重要なことは何か。

 「例えば同じ化粧品のブランドでも、ドラッグストアで説明無く売っていくような商品もあれば、こだわりや特徴を伝えるために販売員とコミュニケーションした方が良い商品もある。十把ひとからげで考えず、商品やブランドごとに、売り方とサービスをきちんと考えて組み立てないといけない」

 ――仮想モールの競合に勝るために必要なことは。

 「楽天の特徴はエコシステム。EC単体というよりは、グループのさまざまなサービスと連携できることが最大のメリットなので、もっと強くしていく。次に、楽天市場そのものの品質を上げていかないといけない。3つ目は、国内EC流通総額10兆円を達成するためには、ECそのものの幅を広げていく必要がある。従来型のECだけではなく、オフラインと関わりを持ったECも構築していきたい。楽天市場に出店する店舗やブランドの多くはリアルの世界でも活動しているので、楽天としても今の領域から踏み出すことで、リアルの世界での付加価値も高めていく」
(おわり)


 
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