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「エコシステムの強化進む」【楽天の松村亮常務執行役員に聞く㊤】 マーケットの好不調に左右されず

2023年 2月23日 13:00

 楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」が成長を続けている。2022年12月期における国内EC流通総額は、前期比12・3%増の5兆6300億円に。競合他社と比較しても高い成長率を維持している。2030年までに国内EC流通総額10兆円を目指す同社では、「楽天モバイル」の契約者増をテコに、楽天市場をさらに成長させていきたい考えだ。松村亮常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーヴァイスプレジデントに昨年の楽天市場を振り返ってもらうとともに、今年の戦略を聞いた。
 








 ――2022年を振り返って。

 「コロナ禍が一巡、二巡した環境化ではあったが、引き続き非常に強い成長力が維持できた。国内EC流通総額は5兆6000円となり、2桁成長を遂げたということで、非常に良い1年だった。楽天市場に関しても、顧客が増加しているほか、購入額も堅調に成長しているので、流通額が増えただけではなく、成長の仕方という意味でも良かったのではないか」

 ――世界的に見ても、コロナ禍が落ち着いて苦戦するEC企業が多かった。楽天市場が好調だった理由は。

 「3つあると思う。1つは、楽天がエコシステムを築いており、引き続き強化されているという点だ。ポイントアッププログラム(SPU)を中心に、楽天のサービスを使えば使うほど、楽天市場での買い物が得になるという仕組みになっているので、そこが非常に機能しているということ。その中でも楽天市場と楽天カードの親和性は非常に高く、お互いに成長を続けてきた。現在でも楽天カード所有者の方が非所有者よりも購入額が明らかに高い。そして、昨今は楽天モバイルも貢献している。昨年はSPUを改定し、楽天モバイルユーザーのポイント倍率が最大でプラス3倍となった。こちらも楽天モバイル加入者の購入額が非加入者よりもかなり高くなっており、成長エンジンとなった。つまり、楽天エコシステムとの掛け算が強化されており、さらにはエンジンとして非常に強力なので、マーケットの強弱にあまり左右されないということだ」

 「2つ目は、楽天市場自身のサービス改善と品質改善。楽天市場自身も『使えば使うほどお得になる』という仕掛けであり、これは『楽天スーパーセール』や『お買い物マラソン』の『買い回り』という仕組みにもあらわれているが、最近はブラックフライデーなど季節のイベントも増やしている。消費者にとっては、楽天市場で買い物する機会が増えてポイントが溜まり、そのポイントを買い物で使うという循環がきちんと作れている。これもマーケットの強弱とは関係なく、楽天市場で買い物をし続けてもらえるポイントだろう」

 「3つ目は配送回りの強化。『送料込みライン』に参加する『39ショップ』の参加店舗が昨年末に95%を超えた。消費者にとっては大半の店舗が対応している感覚になっているようで、顧客推奨度を示すネットプロモータースコア(NPS)に関して、配送関連のスコアの低さは長年の課題だったが、ここ数年大幅に拡大している。これも成長の要因だろう」


 ――人工知能(AI)やビッグデータを使ったサービス改善については。

 「商品ページにおいては、さらなるパーソナライズ化を進めている。例えば、個別なイベントやキャンペーンに関して、喜んでくれそうな顧客にだけ参加してもらうようにする、などというものだ。レコメンドについても中身が改善を続けている。データに関していえば、ここ数年カタログデータに投資を進めている。楽天市場では、同じ商品を複数店舗が販売している場合、商品検索画面では違うものとして表示されるという問題点がある。カタログデータを活用することで同じ商品と認識し、その商品を扱っている店舗の一覧ページに遷移し、価格を比較できるようにしているわけだが、その精度をどんどん上げている。『この商品とあの商品は同じである』と自動で見分けるのは結構大変で、もちろん人力なら分かるが、楽天市場には何億という商品があるので物理的に無理。データを整理するためにAIを活用しているわけだ」

 「また、楽天社内では『タブロー』という分析プラットフォームを使っているが、ECコンサルタントが店舗にコンサルティングをする際、タブローを活用しながらデータを分析し、提案できるようにしている。広告関連でもデータ活用は進んでおり、ここ最近伸びているRPP広告(検索結果表示広告)にも活かされている」(つづく)


 
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