ヤフーが運営する仮想モール「ヤフーショッピング」を刷新した。年商規模や優良な取引状況など一定条件をクリアした事業者のみに出店を制限した仮想モール「PayPayモール」と一般事業者らが出店する「ヤフーショッピング」を10月12日に統合、リニューアルしたものだ。両モールの統合を機に、顧客や出店者にとって利用しやすく、回遊性を高めたUI・UXの改善や広い層にリーチしやすいポイントやキャンペーンの販促展開などで流通総額拡大につなげたい狙いのよう。両モールを統合、刷新した「新生ヤフーショッピング」の出足の状況や今後の展開などについて仮想モール事業を統括する同社執行役員の畑中基ショッピング統括本部長に聞いた。
2つのモールに分けた狙いにずれ
――2019年に「ヤフーショッピング」から切り出す形で大手・有力事業者のみが出店できる「PayPayモール」を新設したわけだが、このタイミングで再び「ヤフーショッピング」に一本化した狙いは。
「事業として非常に成功している中国のアリババが展開する雑多な商店がたくさん出店する『淘宝網(タオバオ)』と厳選した店舗のみが出店する『天猫(Tモール)』、当社のグループで手がけるサービスで言えば、様々な宿泊施設の宿泊予約ができる『ヤフートラベル』と高級な宿泊施設を厳選した『一休.com』の関係のように(仮想モールでも)遍く店舗が出店して様々な商品を販売する『ヤフーショッピング』から、有力な店舗のみを厳選したプレミアムモールとして『PayPayモール』を切り出して同じ領域でもコンセプトの違う2つのサービスを展開することで状況に応じて利用者が使い分けることができ、より事業全体を伸ばすことができるのではないかという考え方から、『PayPayモール』を作った。また、『ヤフーショッピング』という様々な事業者が多く出店しているある意味で雑多なモールには出店したくないという大手事業者の方々でも『プレミアムなモールならば出店したい』とする声も少なくなく、そうしたニーズを取り込みたいという狙いもあった。
そのまま2つのモールを運営していくという選択肢も当然あったし、実際にそれを含めて(仮想モールのあり方について)常に議論をしてきた。今回、再統合しようと考えた大きな理由は2つのモールがあることによる『お客様にとっての分かりにくさ』だ。これは反省でもあるが、お客様にとって2つのモールがあることでどう使い分けを行えばよいかが非常に分かりにくくなっていた。出店者に違いはあるが、商品検索は両モールを横断して検索結果を表示していたし、『PayPayモール』で先に実装した新機能や新たなUI・UXについても、ほぼそのまま『ヤフーショッピング』へもスライドしており、機能面の差別化も明確にはなくなってきていた。
また、プレミアムモールとして打ち出していた『PayPayモール』だが出店者から頂いていた売上高の3%分の『PayPayモール掲載料』を原資に通常の購入額の1%分のポイント還元に加えて(グループ会社のPayPayが展開中の決済サービスの)『PayPay』で決済した人にはさらに2%分を付与して、合計3%分をポイント還元していたこともあり、プレミアム感よりも『お得なモール』という認識が強くなってしまっていた。加えてポイントキャンペーンを実施した際、『PayPayモールは〇%還元』、『ヤフーショッピングは△%還元』と別々の展開としており、さらに決済方法や会員によって還元率も様々あるなど非常に分かりにくい状況となっていた。2つのモールに分けた狙いが当初の思惑からずれてきてしまっていた。
また、毎週日曜日に実施していたポイントアップ施策の結果、日曜日に注文が集中する少々、偏った状況になっていたこともある。限られた予算を効果的に生かすための施策ではあり、購入を頂くきっかけとしては機能したと思うが、『週末に買うモール』ではなく『日常使いのモール』へと軸足を変えたいという狙いもあった」
統合が不満で退店、「そうした動きはない」
――PayPayモールの大手・優良出店者からすると避けていた雑多なモールに出店することになり、不満を持ちそうだ。退店の動きはなかったか。
「もちろん、『PayPayモール』の出店基準も高かったわけで、ようやく出店でき、今までがんばってきたのに、といった声もあった一方で両モールで販促策や機能性などについて明確な差別化ができておらず『確かにどっちつかずだったからね』と統合に理解頂ける声の方が多かった。統合を機に退店という動きもなかった」
――新生「ヤフーショッピング」のスタートから1~2カ月が経過した。出足は。
「想定以上に流通総額が伸びてきており、出足は順調だ。ポイント施策を『PayPayで支払えば毎日5%』としたことで分かりやすくなったことが大きいのではないか。売れ行きに関しても日曜日に偏らず、平準化が想定以上に進んでおり、日常使いのモールへ順調な滑り出しとなっている」
――モール統合前に実施していたソフトバンク(SB)の契約者への10%還元を含む毎週日曜日の高還元施策を廃止した。影響はないか。
「マクロ的に見れば大きな影響はない。もちろん、まだまだSBユーザーでも(ヤフーショッピングで)購入頂けていないお客様も、すでに贔屓にして頂いている方々もたくさんいる。そのため、SBユーザーへは買い物時に『PayPay』で決済した際にポイントを10%還元する『スーパーPayPayクーポン』を毎月提供している」
――「スーパーPayPayクーポン」を使用できるのは月に1回でポイント付与上限も1回500ポイントだ。それでSBユーザーの離脱は防げるのか。
「SBユーザーの顧客離れという動きはあまりない。無論、クーポンですべてカバーできるとは思ってはいないが、そうした施策によってSBユーザーに利用頂ける動機付けになっていると思う」
回遊性アップやアイコン表示
――「新生ヤフーショッピング」と旧PayPayモール・ヤフーショッピングとの違いは。
「新生ヤフーショッピングは『ヤフーショッピング』の冠は残しているが、実際には実的にはPayPayモールをUI・UXを踏襲し、シンプルかつ使いやすい導線としている。例えば、旧ヤフーショッピングでは商品ページに表示していた各種項目がこれまでの積み重ねもあって、情報が非常にビジーになっていたがかなり絞り込み分かりやすくしている。
ほかにも細かい部分は色々と改良している。例えば、出店者から評価の高いところでは商品ページの上部にストア内のカテゴリを表示する機能、いわゆる『パンくず』(※ユーザーが今どこにいるかを視覚的に分かりやすくするために誘導表示)を表示し始めたことなどだ。従来は表示していなかった。出店者からストア内の回遊性を高めるためにずっと要望されていた機能だ。これまでは表示していなかったため、例えば、あと2000円分購入すれば当該ストアが設定している送料無料ラインに達するお客様がいらっしゃった場合、再び当該ストアで商品を探すにはストアのトップページに行かなければならなかったり、商品のキーワード検索を行う必要があったりなど回遊しにくかったがカテゴリ表示を行うことでストア内を回遊しやすく商品を見つけやすくなった。回遊率についてはリニューアル後、実際に数字的にも成果が出てきている。
また、歳暮や母の日など季節ごとの特集企画など『開催中の特集』がヤフーショッピングのトップページからフローティングで一覧表示するようにした。タップすれば当該特集ページにすぐにアクセスでき、開催中の特集に興味があるものがないという場合、そのままトップページに戻れるようにしており、ユーザーがあちらこちらに行かずともよいよう工夫した。これはユーザーにとっても特集企画に参加頂いている出店にとってもプラスになると思う」
――優良な事業者を表す各種アイコンの表示も行っている。
「当社が定めた発送の速さや顧客対応など一定の基準をクリアした出店者は『優良ストア』というアイコンを表示している。優良ストアが販売する商品については商品検索結果の一覧に表示でき、ユーザーに訴求できる。従来から2つのモールで展開してきたが、統合に伴って売上規模や出荷・発送の速さなど高い配送レベル、出店者都合の注文キャンセルが少ない、ユーザーからのストアおよび商品の評価が高い、問い合わせへの対応の速さなど30日間にわたって一定の閾値を保ち続けている事業者など判定基準を厳格化した。
同じく従来から実施してきた当該出店者全体の出荷遅延率や商品の受注から配送完了までの早さなどが一定基準を満たした商品に商品検索結果や商品詳細ページで『優良配送』というアイコンを表示している。さらに一部のカテゴリでブランドの直営店または正規代理店などが取り扱う当該ブランドの商品に『ブランド公式商品』というアイコンの表示も行っている。各種アイコンの表示でお客様にとっては安心安全なストアで商品を購入することができ、優良な出店者へ集客や販促を支援できる取り組みだ」
新たな販促支援サービススタート
――新生ヤフーショッピングでは「プロモーションパッケージ」と呼ばれる出店者向けの販促支援サービスを新たに始めた。
「
出店者向けの任意サービスだ。税抜販売価格の3%を頂けると加入でき、商品検索の検索結果順位をさらに上位に表示できたり、ある商品についてモール内での最安値価格や適正価格が把握でき、当該商品を販売する場合の価格設定に活用できる『適正価格・最安値レポート』や、自身のストアに訪問後、離脱して他ストアで購入された商品を確認でき、売り上げの機会損失を防ぐための施策に活用できる『他ストア流出レポート』、在庫のない商品のページビューと他のストアへの流出数が把握できる『在庫なしアラートレポート』、カテゴリ別の売れ筋商品と自社商品の売り上げ順位が分かる『モール内カテゴリ別商品ランキング』など通常は閲覧できない4種類のモール内の詳細データを閲覧できる『プレミアム統計』という機能などを利用できる。
さらに顧客から受注した商品を2日以内に出荷する率などが総受注分の50%以上を一定期間保っている優良店が『プロモーションパッケージ』に加入した場合は『プロモーションパッケージゴールド』に加入できる。先ほどの『優良ストア』のアイコン表示もその特典の1つだ。さらに『優良ストア』としてヤフーショッピングのトップページや専用ランディングページに露出したり、販促企画『倍!倍!ストア』に参加した場合のユーザーへのポイント還元率を増やしたり、年末年始を除く毎日午前8時から午後8時までフリーダイヤルで対応する専用ヘルプデスクを利用できるなど特別な支援を行う。すでに『プロモーションパッケージ』は多くの出店者に加入を頂いている。今後も加入者向けに専用のキャンペーンや誘導枠などを設けていく予定でさらに支援を強化していく」
――新生ヤフーショッピングは一定規模の事業者の優遇を優先し、小規模な出店者にとっては厳しい売り場との見方もある。
「PayPayモールではそもそも一定規模の売上高が出店基準の1つとしていたため、売り上げの高い事業者を贔屓してきたと思う。ただ、新生ヤフーショッピングは決してそうではない。もちろん、さらに売り上げを上げるには『プロモーションパッケージ』に加入したり、商品検索結果をさらに条表示する『PRオプション』などの広告商品や『倍!倍!ストア』などの販促企画への参加なども必要だが、お客様にとって安心・安全に商品が購入できるようしたり、商品の画像を登録頂き、受注した商品をすぐに発送頂くなど、規模に関係なく、しっかりと業務を行っていただくことで優良店になれ、そうした優良店の商品はモール内でも目立つような形にしている。我々としては努力頂いているストアをより露出させ、売り上げを伸ばして頂きたい。それがヤフーショッピング全体にとっても流通総額を高めるよいサイクルになるためだ。
小規模な事業者でこれから売り上げを伸ばしていきたい方々には、出店者向けに提供している管理ツール『ストアクリエイターPro』に表示している配送・発送、キャンセル率、ストア評価などの評価している『ストアパフォーマンス』の数字を確認頂き、この項目の数値を一定レベルまで高めて頂きたい。そうすることで『優良配送』などのアイコンが付与されることになり、露出が増えていく。これが売り上げ拡大のための第一歩になる」
今後のヤフーショッピングの方向性
――ヤフーショッピングの今後の方向性は。
「まずは今回、『PayPay』で決済すれば『毎日5%還元』という立て付けに変えたため、ヤフーショッピングを利用していないPayPayユーザーにしっかりと認知を広げていきたい。また、グループのLINEとの連携も進め、LINEユーザーがよりヤフーショッピングを使いやすくなるような施策を引き続き、展開していく。これまでの2つのモールがあったため、それぞれで分散していたプロモーションをヤフーショッピングに集中させ、ヤフー、PayPay、LINEのメディア面、検索面など様々なところからしっかり送客していく。出店者への支援策に関してはさらに踏み込んだ機能を提供していきたい」
――決済サービスアプリ「PayPay」内の各アイコンをタップすることでグループ会社や提携会社が提供するサービスを利用できるミニアプリの1つとして以前は「ヤフーショッピング」があったが、今はなくなっている。
「PayPayのミニアプリについては『ヤフーショッピング』の代わりに『日用品モール』に変えた。これは(グループの)アスクルが運営する日用品販売サイト『ロハコ』で取り扱う日用品を購入できるものだ。PayPayは1日に何度も決済で利用するアプリであり、デイリー使いだ。オンラインでも『ヤフーショッピング』という何でもある総花的な導線でなく、デイリーで購入する日用品を買いやすくした方が親和性は高いだろうとPayPayとも話し合い、まずは『ロハコ』への導線に変えたが、実は『ロハコ』の日用品を買って頂いた顧客はその後もロハコを含むヤフーショッピングで商品を購入頂く率が非常に高いというデータが出ている。つまり、日用品を入口に、ヤフーショッピングのほかのストアへの波及効果も高いということだ。『PayPayアプリ』を導線としたトライアルは引き続き、試行錯誤しながら色々とやっていきたい」
――クイックコマース『ヤフーマート』の連動などはあるのか。
「ヤフーショッピングとの親和性はあると思っており、連動させていきたい。例えばヤフーショッピング内でヤフーマートの商品を検索できるようにしたり、ヤフーショッピングの出店者の商品をヤフーマートの商品として、受注から30分以内に配送するなどを検討している。配送に関しては様々なバリエーションを用意してお客様の要望に応えていきたいと考えており、様々な議論や検討は常に行っている」
2つのモールに分けた狙いにずれ
――2019年に「ヤフーショッピング」から切り出す形で大手・有力事業者のみが出店できる「PayPayモール」を新設したわけだが、このタイミングで再び「ヤフーショッピング」に一本化した狙いは。
「事業として非常に成功している中国のアリババが展開する雑多な商店がたくさん出店する『淘宝網(タオバオ)』と厳選した店舗のみが出店する『天猫(Tモール)』、当社のグループで手がけるサービスで言えば、様々な宿泊施設の宿泊予約ができる『ヤフートラベル』と高級な宿泊施設を厳選した『一休.com』の関係のように(仮想モールでも)遍く店舗が出店して様々な商品を販売する『ヤフーショッピング』から、有力な店舗のみを厳選したプレミアムモールとして『PayPayモール』を切り出して同じ領域でもコンセプトの違う2つのサービスを展開することで状況に応じて利用者が使い分けることができ、より事業全体を伸ばすことができるのではないかという考え方から、『PayPayモール』を作った。また、『ヤフーショッピング』という様々な事業者が多く出店しているある意味で雑多なモールには出店したくないという大手事業者の方々でも『プレミアムなモールならば出店したい』とする声も少なくなく、そうしたニーズを取り込みたいという狙いもあった。
そのまま2つのモールを運営していくという選択肢も当然あったし、実際にそれを含めて(仮想モールのあり方について)常に議論をしてきた。今回、再統合しようと考えた大きな理由は2つのモールがあることによる『お客様にとっての分かりにくさ』だ。これは反省でもあるが、お客様にとって2つのモールがあることでどう使い分けを行えばよいかが非常に分かりにくくなっていた。出店者に違いはあるが、商品検索は両モールを横断して検索結果を表示していたし、『PayPayモール』で先に実装した新機能や新たなUI・UXについても、ほぼそのまま『ヤフーショッピング』へもスライドしており、機能面の差別化も明確にはなくなってきていた。
また、プレミアムモールとして打ち出していた『PayPayモール』だが出店者から頂いていた売上高の3%分の『PayPayモール掲載料』を原資に通常の購入額の1%分のポイント還元に加えて(グループ会社のPayPayが展開中の決済サービスの)『PayPay』で決済した人にはさらに2%分を付与して、合計3%分をポイント還元していたこともあり、プレミアム感よりも『お得なモール』という認識が強くなってしまっていた。加えてポイントキャンペーンを実施した際、『PayPayモールは〇%還元』、『ヤフーショッピングは△%還元』と別々の展開としており、さらに決済方法や会員によって還元率も様々あるなど非常に分かりにくい状況となっていた。2つのモールに分けた狙いが当初の思惑からずれてきてしまっていた。
また、毎週日曜日に実施していたポイントアップ施策の結果、日曜日に注文が集中する少々、偏った状況になっていたこともある。限られた予算を効果的に生かすための施策ではあり、購入を頂くきっかけとしては機能したと思うが、『週末に買うモール』ではなく『日常使いのモール』へと軸足を変えたいという狙いもあった」
統合が不満で退店、「そうした動きはない」
――PayPayモールの大手・優良出店者からすると避けていた雑多なモールに出店することになり、不満を持ちそうだ。退店の動きはなかったか。
「もちろん、『PayPayモール』の出店基準も高かったわけで、ようやく出店でき、今までがんばってきたのに、といった声もあった一方で両モールで販促策や機能性などについて明確な差別化ができておらず『確かにどっちつかずだったからね』と統合に理解頂ける声の方が多かった。統合を機に退店という動きもなかった」
――新生「ヤフーショッピング」のスタートから1~2カ月が経過した。出足は。
「想定以上に流通総額が伸びてきており、出足は順調だ。ポイント施策を『PayPayで支払えば毎日5%』としたことで分かりやすくなったことが大きいのではないか。売れ行きに関しても日曜日に偏らず、平準化が想定以上に進んでおり、日常使いのモールへ順調な滑り出しとなっている」
――モール統合前に実施していたソフトバンク(SB)の契約者への10%還元を含む毎週日曜日の高還元施策を廃止した。影響はないか。
「マクロ的に見れば大きな影響はない。もちろん、まだまだSBユーザーでも(ヤフーショッピングで)購入頂けていないお客様も、すでに贔屓にして頂いている方々もたくさんいる。そのため、SBユーザーへは買い物時に『PayPay』で決済した際にポイントを10%還元する『スーパーPayPayクーポン』を毎月提供している」
――「スーパーPayPayクーポン」を使用できるのは月に1回でポイント付与上限も1回500ポイントだ。それでSBユーザーの離脱は防げるのか。
「SBユーザーの顧客離れという動きはあまりない。無論、クーポンですべてカバーできるとは思ってはいないが、そうした施策によってSBユーザーに利用頂ける動機付けになっていると思う」
回遊性アップやアイコン表示
――「新生ヤフーショッピング」と旧PayPayモール・ヤフーショッピングとの違いは。
「新生ヤフーショッピングは『ヤフーショッピング』の冠は残しているが、実際には実的にはPayPayモールをUI・UXを踏襲し、シンプルかつ使いやすい導線としている。例えば、旧ヤフーショッピングでは商品ページに表示していた各種項目がこれまでの積み重ねもあって、情報が非常にビジーになっていたがかなり絞り込み分かりやすくしている。
ほかにも細かい部分は色々と改良している。例えば、出店者から評価の高いところでは商品ページの上部にストア内のカテゴリを表示する機能、いわゆる『パンくず』(※ユーザーが今どこにいるかを視覚的に分かりやすくするために誘導表示)を表示し始めたことなどだ。従来は表示していなかった。出店者からストア内の回遊性を高めるためにずっと要望されていた機能だ。これまでは表示していなかったため、例えば、あと2000円分購入すれば当該ストアが設定している送料無料ラインに達するお客様がいらっしゃった場合、再び当該ストアで商品を探すにはストアのトップページに行かなければならなかったり、商品のキーワード検索を行う必要があったりなど回遊しにくかったがカテゴリ表示を行うことでストア内を回遊しやすく商品を見つけやすくなった。回遊率についてはリニューアル後、実際に数字的にも成果が出てきている。
また、歳暮や母の日など季節ごとの特集企画など『開催中の特集』がヤフーショッピングのトップページからフローティングで一覧表示するようにした。タップすれば当該特集ページにすぐにアクセスでき、開催中の特集に興味があるものがないという場合、そのままトップページに戻れるようにしており、ユーザーがあちらこちらに行かずともよいよう工夫した。これはユーザーにとっても特集企画に参加頂いている出店にとってもプラスになると思う」
――優良な事業者を表す各種アイコンの表示も行っている。
「当社が定めた発送の速さや顧客対応など一定の基準をクリアした出店者は『優良ストア』というアイコンを表示している。優良ストアが販売する商品については商品検索結果の一覧に表示でき、ユーザーに訴求できる。従来から2つのモールで展開してきたが、統合に伴って売上規模や出荷・発送の速さなど高い配送レベル、出店者都合の注文キャンセルが少ない、ユーザーからのストアおよび商品の評価が高い、問い合わせへの対応の速さなど30日間にわたって一定の閾値を保ち続けている事業者など判定基準を厳格化した。
同じく従来から実施してきた当該出店者全体の出荷遅延率や商品の受注から配送完了までの早さなどが一定基準を満たした商品に商品検索結果や商品詳細ページで『優良配送』というアイコンを表示している。さらに一部のカテゴリでブランドの直営店または正規代理店などが取り扱う当該ブランドの商品に『ブランド公式商品』というアイコンの表示も行っている。各種アイコンの表示でお客様にとっては安心安全なストアで商品を購入することができ、優良な出店者へ集客や販促を支援できる取り組みだ」
新たな販促支援サービススタート
――新生ヤフーショッピングでは「プロモーションパッケージ」と呼ばれる出店者向けの販促支援サービスを新たに始めた。
「出店者向けの任意サービスだ。税抜販売価格の3%を頂けると加入でき、商品検索の検索結果順位をさらに上位に表示できたり、ある商品についてモール内での最安値価格や適正価格が把握でき、当該商品を販売する場合の価格設定に活用できる『適正価格・最安値レポート』や、自身のストアに訪問後、離脱して他ストアで購入された商品を確認でき、売り上げの機会損失を防ぐための施策に活用できる『他ストア流出レポート』、在庫のない商品のページビューと他のストアへの流出数が把握できる『在庫なしアラートレポート』、カテゴリ別の売れ筋商品と自社商品の売り上げ順位が分かる『モール内カテゴリ別商品ランキング』など通常は閲覧できない4種類のモール内の詳細データを閲覧できる『プレミアム統計』という機能などを利用できる。
さらに顧客から受注した商品を2日以内に出荷する率などが総受注分の50%以上を一定期間保っている優良店が『プロモーションパッケージ』に加入した場合は『プロモーションパッケージゴールド』に加入できる。先ほどの『優良ストア』のアイコン表示もその特典の1つだ。さらに『優良ストア』としてヤフーショッピングのトップページや専用ランディングページに露出したり、販促企画『倍!倍!ストア』に参加した場合のユーザーへのポイント還元率を増やしたり、年末年始を除く毎日午前8時から午後8時までフリーダイヤルで対応する専用ヘルプデスクを利用できるなど特別な支援を行う。すでに『プロモーションパッケージ』は多くの出店者に加入を頂いている。今後も加入者向けに専用のキャンペーンや誘導枠などを設けていく予定でさらに支援を強化していく」
――新生ヤフーショッピングは一定規模の事業者の優遇を優先し、小規模な出店者にとっては厳しい売り場との見方もある。
「PayPayモールではそもそも一定規模の売上高が出店基準の1つとしていたため、売り上げの高い事業者を贔屓してきたと思う。ただ、新生ヤフーショッピングは決してそうではない。もちろん、さらに売り上げを上げるには『プロモーションパッケージ』に加入したり、商品検索結果をさらに条表示する『PRオプション』などの広告商品や『倍!倍!ストア』などの販促企画への参加なども必要だが、お客様にとって安心・安全に商品が購入できるようしたり、商品の画像を登録頂き、受注した商品をすぐに発送頂くなど、規模に関係なく、しっかりと業務を行っていただくことで優良店になれ、そうした優良店の商品はモール内でも目立つような形にしている。我々としては努力頂いているストアをより露出させ、売り上げを伸ばして頂きたい。それがヤフーショッピング全体にとっても流通総額を高めるよいサイクルになるためだ。
小規模な事業者でこれから売り上げを伸ばしていきたい方々には、出店者向けに提供している管理ツール『ストアクリエイターPro』に表示している配送・発送、キャンセル率、ストア評価などの評価している『ストアパフォーマンス』の数字を確認頂き、この項目の数値を一定レベルまで高めて頂きたい。そうすることで『優良配送』などのアイコンが付与されることになり、露出が増えていく。これが売り上げ拡大のための第一歩になる」
今後のヤフーショッピングの方向性
――ヤフーショッピングの今後の方向性は。
「まずは今回、『PayPay』で決済すれば『毎日5%還元』という立て付けに変えたため、ヤフーショッピングを利用していないPayPayユーザーにしっかりと認知を広げていきたい。また、グループのLINEとの連携も進め、LINEユーザーがよりヤフーショッピングを使いやすくなるような施策を引き続き、展開していく。これまでの2つのモールがあったため、それぞれで分散していたプロモーションをヤフーショッピングに集中させ、ヤフー、PayPay、LINEのメディア面、検索面など様々なところからしっかり送客していく。出店者への支援策に関してはさらに踏み込んだ機能を提供していきたい」
――決済サービスアプリ「PayPay」内の各アイコンをタップすることでグループ会社や提携会社が提供するサービスを利用できるミニアプリの1つとして以前は「ヤフーショッピング」があったが、今はなくなっている。
「PayPayのミニアプリについては『ヤフーショッピング』の代わりに『日用品モール』に変えた。これは(グループの)アスクルが運営する日用品販売サイト『ロハコ』で取り扱う日用品を購入できるものだ。PayPayは1日に何度も決済で利用するアプリであり、デイリー使いだ。オンラインでも『ヤフーショッピング』という何でもある総花的な導線でなく、デイリーで購入する日用品を買いやすくした方が親和性は高いだろうとPayPayとも話し合い、まずは『ロハコ』への導線に変えたが、実は『ロハコ』の日用品を買って頂いた顧客はその後もロハコを含むヤフーショッピングで商品を購入頂く率が非常に高いというデータが出ている。つまり、日用品を入口に、ヤフーショッピングのほかのストアへの波及効果も高いということだ。『PayPayアプリ』を導線としたトライアルは引き続き、試行錯誤しながら色々とやっていきたい」
――クイックコマース『ヤフーマート』の連動などはあるのか。
「ヤフーショッピングとの親和性はあると思っており、連動させていきたい。例えばヤフーショッピング内でヤフーマートの商品を検索できるようにしたり、ヤフーショッピングの出店者の商品をヤフーマートの商品として、受注から30分以内に配送するなどを検討している。配送に関しては様々なバリエーションを用意してお客様の要望に応えていきたいと考えており、様々な議論や検討は常に行っている」