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「ネットデパ地下」を展開、一見さんの定着が課題に
伊勢丹(本社・東京都新宿区、大西洋社長)は、旧来型の百貨店通販から脱皮し、ネット活用を前面に出した施策を矢継ぎ早に打ち出している。
一環として今年1月、相模原店と府中店の直営2店舗で百貨店版のネットスーパー「伊勢丹ネットデパ地下」を開始した。
両店の競合となるGMSや食品スーパーが相次いでネットスーパー事業に参入しており、同社としても成長市場でのトライアルを開始した格好だ。
また、両店は昨年、閉店時間を早めたため、営業時間内に来店できなくなった顧客のCS改善にもつなげる狙いで、ネットで受注した商品をその日のうちに届ける取り組みは百貨店では初めて。
小規模投資で始動した「ネットデパ地下」の仕組みは、専用のオペレーション室を食品売り場のバックヤードに設置し、ウェブ担当者が受注業務を担う。1日4便の時間設定に合わせて食品売り場の担当者にピックアップを指示して店頭商品を確保するため、ネット販売用の在庫を持たない、いわゆる「店舗型」だ。
バックヤードの広さの問題もあり、1日最大45件の受注が可能なシステムを組んでいるという。
目指したのは「百貨店らしいネットスーパー」。生鮮食品や乾物、飲料といった日常品以外にも、ギフト用のケーキや老舗店の惣菜など商品構成を厚くし、包装などのサービスでも違いを出した。
しかし、売り上げの80%が生鮮食品や飲料で、とくに野菜が多いという。受注も午前中がピークで、その日に使う食材を購入するケースが目立ち、スーパー系と完全な競合関係にあるようだ。
集客策ではこれまで、両店の周辺に住むハウスカード保有客にDMを送付したほか、ポスティングも実施。折り込みチラシでケーキなど「ネットデパ地下」の限定品を企画した際には、新規客のオーダーも重なり、作業場がパンクしたことも。
しかし、現状では会員の80%が店頭顧客で、普段は百貨店を利用しないネットユーザーの獲得と定着化は課題のひとつ。
現在は、店舗全体のチラシの食品コーナーで、「ネットデパ地下」で扱う商品には専用のマークを付けて利用を促すほか、店頭客に向けては店内の電子POPでもPRする。
今後は、生鮮食品などを運営基盤にしながらも、限定品や買い得品を定期的に開発して商品ラインアップの"鮮度"を維持し、新客を取り込む。
また、会員登録をしているものの購入経験のない消費者が50~60%と高いため、メルマガによる情報発信など、初めての買い物につながる施策を試す。2年目には黒字化の目安となる年商4000万円を確保し、展開店舗の拡大にめどをつけたい考え。 (つづく)
《通販 8号 03面 07》