前回に続き、楽天グループの仮想モール「楽天市場」における下期事業戦略について、上級執行役員の松村亮コマースカンパニーヴァイスプレジデントに聞いた。
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ーー「楽天モバイル」の契約者の伸びが楽天市場にもたらす影響は。
「『楽天ポイント』を活用する方法はいくつかあり、楽天市場内の大型セールにポイントを絡ませるというものが大きいが、もう1つはSPUで楽天のエコシステムとつなげていくというものだ。今後、エコシステムの中で柱となるのが楽天モバイルとなる。楽天エコシステムにおける楽天モバイル契約率は、今年3月の時点で11・3%まで伸びている。また、特に楽天市場は親和性が高く、楽天モバイルユーザーの楽天市場利用率は、今年6月時点で約80%となった。これは、楽天市場ユーザーが楽天モバイルを契約したケースもあれば、楽天モバイルと契約したユーザーが楽天市場を利用しはじめたケースもある」
ーー物流関連の取り組みは。
「出店者の物流業務を請け負う『楽天スーパーロジスティクス(RSL)』の利用店舗数が5000店舗を超えた。利用店舗をもっと増やそうとすると、物量をさばかなければいけないので、福岡、多摩、八尾に自動化・省人化された物流施設を、2023年までに開設する予定だ。もう1つ、再配達をいかに減らすかが社会的な課題となっている中で、楽天市場の複数店舗で購入した荷物をまとめて配送する『おまとめアプリ』をリリースした。アプリ利用者の不在再配達率は、全体ユーザーより8・1ポイント低くなるなど、成果が出ている」
「また、店舗が荷物を預ける『楽天フルフィルメントセンター(RFC)』から配達局までは、引き受け局や配達区分局への輸送、つまり横持ちが複数回必要になる。そうなると、どうしてもコストや時間がかかってしまう。これをバイパスして、RFCから目的地である配達局に直送できるようになれば、効率が上がりコストも削減できる。すでに千葉県流山市の『RFC流山』で配達局への直送を実施しており、今年の第3四半期からは大阪府枚方市の『RFC枚方』でも実施する予定だ。さらに、楽天市場の注文ボリュームの情報を日本郵便(JP)と共有しながら、JP側のオペレーションを最適化することで、物流の効率を向上させていく」
ーー三木谷浩史社長は「きょう楽」として、当日配送サービスへの意欲を示している。
「いくつか課題はあるが、検討はスタートしている。当日配送へのニーズはカテゴリーにもよると思う。アパレルなどはあまり必要ないだろうが、日用品などではニーズがあるのではないか」
ーーRFCからの出荷量は、楽天市場における注文量の約20%に達したとのことだが、どの程度まで増やしていくのか。
「まだまだ低いと思っているので、伸ばしていきたい。冷蔵・冷凍にも対応していないので、そこも課題だ。ただ『楽天西友ネットスーパー』の物流センターは冷蔵・冷凍に対応しているので、将来的には知見を活用していきたい」
ーーどのようにRSL利用店舗を伸ばしていくのか。
「配送することだけを考えれば、RSLを利用することでコスト削減につながる店舗は少なくないと思う。ただ、すでに自前で倉庫を構えている店舗もあるので、そういう店舗はすぐに乗り換えるという話にはならない。倉庫が狭くなり、刷新するタイミングなどで乗り換えてもらうとしても、話を持ちかけてから数年かかるわけだ。地道な営業で少しずつ店舗を積み上げていきたい」
ーー昨今の物価高を受け、消費者の購買動向はどのように変わったか。
「楽天市場においては、7月末の段階でそこまで大きな影響は出ていない。一時期、中国のロックダウンの影響でアパレルや家電の在庫が薄くなった時期はあったものの、そこは改善している。ただ、半年・1年のスパンでは物価高の影響が出てくる可能性はあるので注視している」
ーーコロナ禍の影響が落ち着き、ECの伸び率が鈍化しているとの見方もある。
「成長が一巡したのはどこも同じだろうが、コロナ禍で以前より買うようになった消費者や、これまでECを利用していなかった消費者の買い物回数を保てるかどうかが大事だ。その観点でいうと、楽天市場はリテンション率が非常に順調だ。一度楽天市場で買い物をして『楽だな』と感じると継続してくれる傾向にある。言い方は良くないかもしれないが、コロナ禍をレバレッジにする形で楽天市場は伸びている」(おわり)
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ーー「楽天モバイル」の契約者の伸びが楽天市場にもたらす影響は。
「『楽天ポイント』を活用する方法はいくつかあり、楽天市場内の大型セールにポイントを絡ませるというものが大きいが、もう1つはSPUで楽天のエコシステムとつなげていくというものだ。今後、エコシステムの中で柱となるのが楽天モバイルとなる。楽天エコシステムにおける楽天モバイル契約率は、今年3月の時点で11・3%まで伸びている。また、特に楽天市場は親和性が高く、楽天モバイルユーザーの楽天市場利用率は、今年6月時点で約80%となった。これは、楽天市場ユーザーが楽天モバイルを契約したケースもあれば、楽天モバイルと契約したユーザーが楽天市場を利用しはじめたケースもある」
ーー物流関連の取り組みは。
「出店者の物流業務を請け負う『楽天スーパーロジスティクス(RSL)』の利用店舗数が5000店舗を超えた。利用店舗をもっと増やそうとすると、物量をさばかなければいけないので、福岡、多摩、八尾に自動化・省人化された物流施設を、2023年までに開設する予定だ。もう1つ、再配達をいかに減らすかが社会的な課題となっている中で、楽天市場の複数店舗で購入した荷物をまとめて配送する『おまとめアプリ』をリリースした。アプリ利用者の不在再配達率は、全体ユーザーより8・1ポイント低くなるなど、成果が出ている」
「また、店舗が荷物を預ける『楽天フルフィルメントセンター(RFC)』から配達局までは、引き受け局や配達区分局への輸送、つまり横持ちが複数回必要になる。そうなると、どうしてもコストや時間がかかってしまう。これをバイパスして、RFCから目的地である配達局に直送できるようになれば、効率が上がりコストも削減できる。すでに千葉県流山市の『RFC流山』で配達局への直送を実施しており、今年の第3四半期からは大阪府枚方市の『RFC枚方』でも実施する予定だ。さらに、楽天市場の注文ボリュームの情報を日本郵便(JP)と共有しながら、JP側のオペレーションを最適化することで、物流の効率を向上させていく」
ーー三木谷浩史社長は「きょう楽」として、当日配送サービスへの意欲を示している。
「いくつか課題はあるが、検討はスタートしている。当日配送へのニーズはカテゴリーにもよると思う。アパレルなどはあまり必要ないだろうが、日用品などではニーズがあるのではないか」
ーーRFCからの出荷量は、楽天市場における注文量の約20%に達したとのことだが、どの程度まで増やしていくのか。
「まだまだ低いと思っているので、伸ばしていきたい。冷蔵・冷凍にも対応していないので、そこも課題だ。ただ『楽天西友ネットスーパー』の物流センターは冷蔵・冷凍に対応しているので、将来的には知見を活用していきたい」
ーーどのようにRSL利用店舗を伸ばしていくのか。
「配送することだけを考えれば、RSLを利用することでコスト削減につながる店舗は少なくないと思う。ただ、すでに自前で倉庫を構えている店舗もあるので、そういう店舗はすぐに乗り換えるという話にはならない。倉庫が狭くなり、刷新するタイミングなどで乗り換えてもらうとしても、話を持ちかけてから数年かかるわけだ。地道な営業で少しずつ店舗を積み上げていきたい」
ーー昨今の物価高を受け、消費者の購買動向はどのように変わったか。
「楽天市場においては、7月末の段階でそこまで大きな影響は出ていない。一時期、中国のロックダウンの影響でアパレルや家電の在庫が薄くなった時期はあったものの、そこは改善している。ただ、半年・1年のスパンでは物価高の影響が出てくる可能性はあるので注視している」
ーーコロナ禍の影響が落ち着き、ECの伸び率が鈍化しているとの見方もある。
「成長が一巡したのはどこも同じだろうが、コロナ禍で以前より買うようになった消費者や、これまでECを利用していなかった消費者の買い物回数を保てるかどうかが大事だ。その観点でいうと、楽天市場はリテンション率が非常に順調だ。一度楽天市場で買い物をして『楽だな』と感じると継続してくれる傾向にある。言い方は良くないかもしれないが、コロナ禍をレバレッジにする形で楽天市場は伸びている」(おわり)