消費者庁が今年8月に発足した「インターネット消費者取引研究会」。ドロップシッピングやワンクリック請求、海外サイトを通じた取引などネット取引に係るさまざまな消費者トラブルの打開策を検討するものだが、早くも"迷走"の懸念が出てきている。議論対象となるテーマがあまりに幅広く、論点を絞り切れていないためだ。来年3月末まで会合は残すところわずか7回。消費者庁が研究会を発足させた狙いはどこにあるのか。
「具体的な政策提言を出さなければと考えているが、正直、結論ありきではない。テーマはあえて絞らず議論を進めながら考えていきたい」。研究会の事務局を務める政策調整課のこの言葉通り、研究会は初会合からさまざまな論点が示されている。出会い系サイトやワンクリック請求などネットの匿名性を悪用した詐欺商法、海外サイトを通じたオンラインショッピング、ドロップシッピングやネットオークション、仮想モールといった新たな取引形態の消費者トラブルなど一つの事案をとっても、複数回に渡る議論を必要とする案件ばかりだ。
政策調整課もこのことに「論点が分散する問題意識は持っている」としつつ、テーマを絞らない理由を「"何法の何条では対応できないので改正すべき"と、法令から紐解いていく手法は取り組みやすいが、それでは従来と変わらない。消費者がどのような問題に直面しているか、俯瞰的に見ながらやれることを考えていきたい」(同)とする。
◇
政策調整課がこうした考えを示す背景には、同課の庁内における役割が影響している。
政策調整課は、消費者庁創設と共に制定された「消費者安全法」に基づく措置要求と、複数の省庁間にまたがる"すき間事案"でリーダーシップを発揮することを主な役割としている。これまで措置要求の実績はないが、最近では留学あっせんを行っていたサクシードの倒産に絡み、観光庁や外務省、文科省など省庁間にまたがる問題で情報共有化に向けた会合を調整した。
ただ、景品表示法や特定商取引法を担う「表示対策課」、健康増進法などを担う「食品表示課」など執行部門とは立場を異にする。法執行の実効性確保に向けたあり方、例えば法改正の必要性など明確な問題意識を持っておらず、このことが議論を散漫なものとしている一つの要因となっている。
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では、研究会の狙いはどこにあるのか。
まず、ネット取引に関する消費者相談の国際ネットワークの構築に向けた検討だ。「欧米の取り組みなどを参考に、実証実験を行えるレベルまでいけば」(同)としており、次年度に4500万円を予算要求している。
ただ、これについては研究会と並行してすでに着手しているもの。これ以外では「消費者問題を類型化して整理し、その上で求められる具体的な方策を提示できるよう頑張りたい。理念が先行している部分はあるが、事業者による自主規制でどこまで行えるのか、もしくは規制的手法が必要なのか、均衡点を探りたい」(同)としている。課題抽出の上、消費者委員会などで継続審議することも「可能性はある」(同)とする。
とはいえ、当の事務局でさえ明確な方向性を示せていない研究会であることは、これまでの発言からもみてとれる。早々に論点を絞らなければ意味のない研究会になりかねず、研究会の行方を見守る消費者、事業者双方が持つ迷走の懸念は払拭されそうにない。
「具体的な政策提言を出さなければと考えているが、正直、結論ありきではない。テーマはあえて絞らず議論を進めながら考えていきたい」。研究会の事務局を務める政策調整課のこの言葉通り、研究会は初会合からさまざまな論点が示されている。出会い系サイトやワンクリック請求などネットの匿名性を悪用した詐欺商法、海外サイトを通じたオンラインショッピング、ドロップシッピングやネットオークション、仮想モールといった新たな取引形態の消費者トラブルなど一つの事案をとっても、複数回に渡る議論を必要とする案件ばかりだ。
政策調整課もこのことに「論点が分散する問題意識は持っている」としつつ、テーマを絞らない理由を「"何法の何条では対応できないので改正すべき"と、法令から紐解いていく手法は取り組みやすいが、それでは従来と変わらない。消費者がどのような問題に直面しているか、俯瞰的に見ながらやれることを考えていきたい」(同)とする。
政策調整課がこうした考えを示す背景には、同課の庁内における役割が影響している。
政策調整課は、消費者庁創設と共に制定された「消費者安全法」に基づく措置要求と、複数の省庁間にまたがる"すき間事案"でリーダーシップを発揮することを主な役割としている。これまで措置要求の実績はないが、最近では留学あっせんを行っていたサクシードの倒産に絡み、観光庁や外務省、文科省など省庁間にまたがる問題で情報共有化に向けた会合を調整した。
ただ、景品表示法や特定商取引法を担う「表示対策課」、健康増進法などを担う「食品表示課」など執行部門とは立場を異にする。法執行の実効性確保に向けたあり方、例えば法改正の必要性など明確な問題意識を持っておらず、このことが議論を散漫なものとしている一つの要因となっている。
では、研究会の狙いはどこにあるのか。
まず、ネット取引に関する消費者相談の国際ネットワークの構築に向けた検討だ。「欧米の取り組みなどを参考に、実証実験を行えるレベルまでいけば」(同)としており、次年度に4500万円を予算要求している。
ただ、これについては研究会と並行してすでに着手しているもの。これ以外では「消費者問題を類型化して整理し、その上で求められる具体的な方策を提示できるよう頑張りたい。理念が先行している部分はあるが、事業者による自主規制でどこまで行えるのか、もしくは規制的手法が必要なのか、均衡点を探りたい」(同)としている。課題抽出の上、消費者委員会などで継続審議することも「可能性はある」(同)とする。
とはいえ、当の事務局でさえ明確な方向性を示せていない研究会であることは、これまでの発言からもみてとれる。早々に論点を絞らなければ意味のない研究会になりかねず、研究会の行方を見守る消費者、事業者双方が持つ迷走の懸念は払拭されそうにない。