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フェリシモが飲食店進出、ファン夢中の世界観

2021年 7月29日 14:01

 フェリシモが、今春から新機軸の店舗を続々とオープンしている。「フェリシモ猫部」のレストラン「猫部パーラー」を東京と大阪に、さらには、「ミッフィー」でおなじみの絵本作家である、ディック・ブルーナの世界観が楽しめるワインバル&カフェレストラン「ディック・ブルーナ テーブル」を横浜と神戸にオープン。猫部のファンやミッフィーのファンが楽しめる仕掛けを存分に施したレストランとして話題を呼んでいる。同社が飲食店の展開に乗り出した理由とは(画像は「猫部パーラー」豊洲店)。

 



 「猫部パーラー」は今年3月、東京・豊洲と大阪・梅田に期間限定店としてオープン。株式会社スイミージャパンとコラボレーションしたもので、それぞれの店舗が得意とする、魚料理と発酵食を取り入れた本格レストランメニューが楽しめる。一方、「ディック・ブルーナテーブル」は昨年7月、本格的なワインバルを有した飲食店として神戸市内にオープン(上から2番目の画像)。コロナ禍で遠出ができない関東地方の消費者から多くの要望があったこともあり、今年3月には横浜市内にも出店した。

 フェリシモO2O事業部リアルリテールチームの富田浩幸さんは「猫部、ディック・ブルーナともに熱狂的なファンがとても多いのが特徴です。当社は商品の通信販売が中心でしたので、これまでお客様と接する機会はあまりありませんでした。お客様とわれわれ、そして、お客様同士がコミュニケーションを取れる場を作れたらと思います。」と、それぞれの店舗をオープンした理由を説明する。

 猫好きをターゲットとした事業として活動している猫部では、2012年頃から猫をテーマとしたユニークな商品をたくさん発売しており、「猫の肉球の香り」を再現したハンドクリームや、猫によるひっかき傷を隠すばんそうこう「にゃんそうこう」など、多くのヒット商品を生み出してきた。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSを積極的に活用し、猫好きの心をつかんでいる。また、ディック・ブルーナに関しては、約20年前から関連商品を取り扱っており、同社ユーザーの中にもファンが非常に多いという。

さまざまな工夫

 フェリシモでは、これまでも猫部を中心に、雑貨を販売する実店舗などを展開してきたが、飲食店に取り組むのは初めてだ。なぜレストランを始めようと思ったのか。「今まで飲食店には携わったことはありませんが、お客様とスタッフ、そしてお客様同士のコミュニケーションの場として、非常に優れています。単にレストランを作るのではなく、『フェリシモ 猫部らしい空間』を作るのが最も重要だと考えています。『フェリシモがレストランを作ったら、こんな店になりました』ということを積極的に発信していきたいと思います」(富田さん)。

 猫部やディック・ブルーナの世界観を店内に再現するために、さまざまな工夫をこらしている。例えば、猫部の人気グッズ「にゃんこタルトクッション」をモチーフにしたスイーツ「にゃんこタルト」(上から4番目の画像)や、「猫耳プリン」を再現した「猫部パーラー」のロゴをモチーフとしているスイーツ「猫部パーラープリンアラモード」。「ねこまんま定食」は、たっぷりのかつお節の下に、マグロの漬けを敷き詰めた丼定食で、「猫部が作るならこんなご飯が面白いよね、ということで考えられています」(富田さん)という。

 また、「猫部パーラーオリジナルワイン」(上から3番目の画像)は、茶トラ・茶白・キジトラ・ハチワレ・キジ白・サバトラと6種類のデザインのオリジナルラベルを用意。お土産として人気の商品で、インスタグラムでは飼い猫と一緒に、似たデザインのラベルのワインを撮った写真も見られるという。富田さんは「猫好きの人が見たら楽しくなるようなデザインの食事ばかりで絶対共感してくれると思います。とにかく、見ただけでも楽しくなるようなメニューを揃えています」と話す。

 「ディック・ブルーナテーブル」では、ミッフィーの形をしたかわいらしいデザインの砂糖(上から5番目の画像)を販売しており、コーヒーなどを注文した際にもついてくる。これをコーヒーにひたすと色が変わる。茶色に変わるシーンをインスタグラムにアップしたユーザーがいて、非常にバズったという。「この投稿がきっかけで人気商品になっています」(同)。

 「DBT特製花束サラダ」は、サラダを花束風に盛り付けたもの。エーデルフラワー(食用の花)をちりばめたサラダだったが、器の周りのあしらいを花束風デザインにしたことで、誕生日などのお祝いに頼む人も増えている。「サラダにも面白さを足したいな、ということでアイデアを出しました。サプライズが楽しめるので、フェリシモらしい感じでいただけるサラダではないかと思います」(同)。

 食事メニューでは、全般的にミッフィー色はあまり出しておらず、アクセント程度に押さえているが「大人向けの店をやってみよう、というのが当初からのコンセプトなので、これくらいの方が受け入れていただけるではないかと思っています」(同)。

 店内にも仕掛けを施している。例えば、トイレには「ミッフィーになれる鏡」がかかっている。鏡にミッフィーの耳が描かれたもので、鏡に映る自分がミッフィーになるというものだ。インスタ映えを意識し、店内はブルーナの世界観を伝えるためのさまざまな仕掛けや遊び心にあふれている。

 一方、「猫部パーラー」の人気メニューは、前出の「ねこまんま定食」、「プリンアラモード」、「フルーツタルト」、さらには猫部仕様のアフタヌーンセットである「ニャフタヌーンセット」。「スイーツセット」と「ワインセット」の2種類で、かわいらしい猫のフレームに、スイーツバージョンは2人で楽しめる小さなスイーツを盛り合わせて提供、ワイン用のセットは、ワインに合う前菜の盛り合わせをサーブ。どちらも日替わりで、訪れるたびに楽しめるのが特徴だ。

 「ディック・ブルーナテーブル」では、ミッフィーを模した「チーズケーキバー」や「DBT特製花束サラダ」、さらには「アフタヌーンデザートセット」(上から6番目の画像)も人気。こちらも「猫部パーラー」と同様に、オリジナルのミッフィーフレームにスイーツを盛り合わせたもので、大人が楽しめるワインバージョンも用意した。

 両店とも物販コーナーがある。「猫部パーラー」では、フェリシモ猫部のECショップも扱っていない、店舗限定商品として販売している「猫部パーラーチョコラスク缶」や「猫部パーラーシュガー」が人気。シュガーはコーヒーにひたすと、白猫が茶猫に変身するというものだ。店内でも使用する「猫さん夢の水族館グラス」はECショップも販売している商品だが、非常に人気があり、物販コーナーでもすぐに売り切れてしまうという。

 「ディック・ブルーナテーブル」物販コーナーの人気商品は、ショップロゴをあしらったトートバッグと、前出のシュガーが定番。トートバッグは、横浜店と神戸店で販売するカラーが異なっている。また、最近はキャラメルポップコーンも売れている。

 富田さんは「『ディック・ブルーナテーブル』の商品はECショップも一部買えるようにしていますが、やはりお店に来たときの楽しみは必要だと思っています。お店でしか買えない商品は、少しずつ増やしていきたいですね」と語る。

相乗効果に期待

 さまざまな仕掛けでファンを楽しませているフェリシモ。ユーザーの反応は狙い通りなのか。「お店で聞けるお客様の声はすごく良いですし、とてもうまくいっていると思います。ECでの販売の場合、お客様の属性は年代や性別などは分かりますが、実際にどんな雰囲気の人たちが来てくださっているのか、という部分が良く分かるのが店舗の魅力ですね」(富田さん)。猫部の場合は「本当に猫が好きで、猫について話がしたい」というユーザーが非常に多く、スタッフと猫談義で盛り上がることも多いという。

 ディック・ブルーナのコアなファンも、ミッフィーのぬいぐるみを持参して店内で撮影するなど、「本当にミッフィーが好きな人が多いんだな、ということが良く分かります」(同)。これまで展開してきた雑貨店は、滞在時間が5~20分程度。これが飲食店だと、1時間以上まで伸びるというのが、コミュニケーションの場として大きいようだ。

 ネット販売の相乗効果はどうか。富田さんは「お客様にご案内するインスタやLINEで通販サイトは紹介していますし、もちろん両方を意識はしています。実際には、住んでいる場所が遠くて、なかなか実店舗には来られないというお客様も多いでしょうから、ネットで補完していきます」と話す。

 「ディック・ブルーナテーブル」の来店者は、ディック・ブルーナのファンが多く、フェリシモは良く知らないというケースも当然多いため、新規顧客の獲得にもつながりそうだ。

 現在は、両店とも関東と関西での出店に限られている。コロナ禍収束以降はさらに注目を集めそうだが、今後は他地域での展開もあるのか。富田さんは「『ディック・ブルーナテーブル』については、様子を見ながら考えたいと思っていますが、『猫部パーラー』に関しては、他社とのコラボレーション事業なので、猫好きのお店があったらぜひ一緒にやりたいですね。パートナー企業を募集しています」と意欲的に語る。

 
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