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――前期はコロナに振り回された。
「18年11月に社長に就任したが激動の1年が毎年続いている印象だ。昨年はやはりコロナの影響が大きかった。通販事業は構造改革の成果が着実に出た1年となった。お客様をとり戻すために商品群の見直しだけでなく、販促も強化していた。そこにコロナの影響が出始め、通販事業に関しては追い風だった」
――連結業績では苦戦した。
「通販が苦戦した時期に利益面をけん引していたブライダル事業がコロナの影響をまともに受けた。通販が回復したらブライダルが大赤字となり、連結ベースではなかなかうまくいかない。『まだ踏ん張れ』ということだと思う。当社の実力を試されていて、今期からが本当の勝負だ」
――通販会員が大きく増えた。
「前期はベルメゾン会員が55万人以上増えた。とくに新規会員の約15万人増に対し、継続・復活会員は約40万人増えた。かつて千趣会のファンだったお客様を中心に戻ってきてくれたことは大きい。DMなども送ったが、コロナ禍で『ベルメゾンもあったな』と思い出してもらえた。ただ、再度のお試しをして頂いている状況だと認識している。これから当社の実力が試されていて、継続してもらえるかが大事になる」
――好転した通販事業も気が抜けない。
「社員からは何とか頑張ろうという気概を感じるし、個人力も組織力も高まっている。18年に早期退職者を募集したことで、この3年間で4分の1くらいの社員が入れ替わっている。千趣会のDNAを継承しつつ、新しい風も吹いている状況だ。新中計でのモチベーション維持も大事で、コロナ禍だからこそ社内コミュニケーションのあり方や従業員エンゲージメントの向上が必要だと感じる」
――従業員エンゲージメントの中身は。
「例えば、現場からも教育プログラムやキャリアアップに対する要望が出てきているので、会社としてもさまざまな階層を対象とした教育に力を注ぎたい。構造改革中は取り組めなかったが再成長を下支えする上でも大切だ」
――人員拡大も必要になる。
「従来は管理部門の人員が多かったが、構造改革時は売り上げを取る販売系の人材採用にシフトしていた。まだマーケティングやIT系は不足気味だが、管理部門では人事や総務、経営戦略などを統括するコーポレート本部については人員補填を含め組織力を高める必要がある。新卒採用についても早期の再開を目指したい」
――前期は商品力の部分でも成果が出た。
「オリジナル商品を軸にした商品力や提案する際の切り口、コンテンツ力が上がった。また、『愛、のち、アイデア。』というブランドコードを掲げたことで、それを行動指針としてベテランから若手までがひとつのベクトルで動けた」
「当社の通販事業はカタログとECの連動が肝になるが、ブランドコードを確立するためのプロジェクトの第1フェーズではカタログの表現やコピー・キャッチ、誌面のマナー・トーンなどもブランドコードに沿って見直し、統一した」
――次の段階は。
「発刊物やその表現だけでなく、お客様とのあらゆる接点に広げた。例えば、コールセンターの対応や物流センターでの梱包のあり方など各部署でブランドコードに向き合うことで、当社の”人格”が統一されてきた。従業員が『よし、これだ』と感じられるのはモチベーションにもつながるし、社外に対しても結果的には差別化要素となった」
――商品力のベースにもなった。
「ブランドコードに則り、愛のある商品に限定したことで商品型数は18年と比べて約6割に絞った。また、これまでファンだったお客様がなぜ離れたのかという分析を行い、ブランドコードに沿って販促物のあり方についてもラブレターを出すよう送り方にこだわった。通販会社として100種類以上の販促テストを繰り返し、効率の良い手法が見えてきたこともあって昨年1月から販促を本格化した後にコロナがきたという部分もある」
――今期、会員施策のバランスは。
「300万人近い会員数となったので、新規よりも継続化に注力し、戻ってきてくれたお客様が再びファンとなってもらえるようにする。新中計でもそうだが、当社の提供価値を固める先には、そこに共感してくれるお客様との長いお付き合いが欠かせない。LTV向上に向けては売上高を大きく拡大するよりも、ポリシーに共感してくれるお客様や取引先も含めてお付き合いさせて頂いて差別化を図る。共感できる間柄の中で商売をしていきたい」(つづく)