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「航空系」通販、捲土重来への"一手"②、全日空商事、ネット専業にシフト

2010年 6月13日 21:06


カタログ・機内誌通販中止、サイト刷新、MDも変更


 「今までのビジネスモデルでは厳しい」。

 搭乗客の減少で苦戦が続く航空系通販。全日空商事(本社・東京都港区、中野雅男社長)の2010年3月期の通販売上高は前期比6%減で、特に機内誌・カタログなど紙媒体は苦戦し、ともに二桁減の減収だった。ただ、対照的にネット販売売上高は同60%増と大幅な増収。売上高で全チャネルのトップに躍り出た。同社ではこうした現状をみて、ビジネスモデルの転換が必須と判断。「選択と集中」の結果、「紙媒体通販からの撤退」を決断した。カタログは休刊、機内誌通販も中止。"ネット専業の通販"に舵を切った。


 同社の2010年3月期の通販売上高は同6%減の31億9500万円(1271号で既報)。チャネル別に見ると、機内誌は同50%減、カタログは同30%減と大幅減だが、対照的にネット販売は同60%増と好調で、チャネル別の売上高でトップとなった。

 理由としては、機内誌で積極的に通販サイトへの誘導を行っていたことに加え、前々期から開始しているマイレージプログラムとの連携サービスが大きい。同サービスは全日空の顧客を取り込むために開始したもので、全日空のマイレージプログラム「ANAマイレージクラブ(AMC)」のマイルと通販サイト「astyle」のポイントを、1マイルを1ポイント分として交換できる仕組み。この施策でサイト利用率が向上し、メルマガ会員は1年間で倍の20万人となった。

 このようにネット部門は好調だったが、機内誌・カタログは売り上げが減少してもコストが変わらず、収支構造が厳しい状態。「従来の機内誌で新規客を獲得し、カタログ、ネットでリピートしてもらうビジネスモデルが壊れてきた」(WEBセールス部・海野尚二部長)。また、分析した結果、カタログでしか注文しない顧客はあまりいなかったことも分かった。

 そこで、カタログを休刊し、機内誌はサイトへの誘導ツールに変更するなど紙媒体での通販を中止。部署名も変え、"ネット専業通販"という新たなビジネスモデル構築に踏み切った。従来のカタログ顧客には、ハガキやメルマガなどで複数回にわたって告知した。

 具体的なネット販売戦略としては、まず「ユーザビリティの改善」に取り組んだ。これまでカタログの受注ツールだった通販サイトをリニューアルし、使い勝手を重視した仕様に変更。例えばヘッダーを常時、サイト上部に出すことでユーザーがサイト内での自身の移動状況を把握できるようにし、ページ間の移動を容易にできるようにした。また、レコメンドエンジンも導入。購入単価の向上につなげる狙いだ。 

 デザインも大幅に変更した。一覧性を重視し、カタログでは紙面の関係で乗り切らなかった色などもサイトではすべて掲載。「見て楽しめる」(同)デザインを心がけた。さらに、マーケティング面も改良。ログ分析を取れる仕組みにしたことで、ユーザーの購入までの動向や離脱状況が追えるようになった。

 システム部分以外では、これを機に商品戦略を変更した。これまでは「いわゆる『通販商品』が多かった」(同)が、「自分たちの立ち位置を考えると価格勝負は難しい」(同)と考え、ブランドとのコラボレーションや海外セレクトショップの商品を主としていく。従来型の商品は今後は仕入れず、「品質重
視」をコンセプトに展開していく構想だ。

 今期のネット販売売上高の目標は前期比50%増の24億円。約2000万人のAMC会員の取り込みを狙うほか、ネット広告に本格的に取り組むことで外部客を獲得し、目標達成を狙う。
(おわり)

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