万田発酵が化粧品通販を本格化する。エイジングケアを目的に、独自の発酵技術を活かしたスキンケアの新ブランドを立ち上げ、SNSなどウェブを中心に展開する。健康食品通販は、すでに100億円超の売り上げに達し、基幹事業に成長している。化粧品通販では3年後に10億円の売り上げを目指す。
新ブランドは「Mforte(エムフォルテ)」(=写真)。独自の発酵技術「複合発酵」を使い、24種類の植物性原料を発酵させた植物発酵エキスを配合している。商品は、導入美容液、化粧水、乳液、クリーム(税込5400~8640円)の4アイテム。50代前後の女性を中心としつつ、30~60代の女性層に幅広くアプローチする。7月10日から販売を始める。
販路は主に通販で展開する。当面はSNSなどウェブを中心にプロモーションを実施。インフルエンサーや、くちコミを通じて認知向上を図りつつ、テレビCMの展開も検討する。健康食品では、百貨店を中心に独自の販売網を築いており、これら店舗網も活かしていく。
また、健食では60~80歳代の中高齢層を中心に顧客基盤を築く。これら既存顧客へのクロスセルも行っていく。
万田発酵の独自技術「複合発酵」は、発酵に必要な期間が異なる数十種類の果実や穀物を段階的に発酵させるもの。単一素材の発酵でないため、複雑な工程・管理が必要になる。また、機能性成分が豊富に含まれる種皮も合わせて発酵させることができる技術に強みを持つ。
「エムフォルテ」も24種類の植物性原料を使って生成した独自成分「フェルアミノ」(発酵により生まれた複数のアミノ酸の総称の意の造語)、「発酵ポリフェノール」(同ポリフェノール)など複数の保湿成分を含む。また、肌との親和性が高いヒト型セラミドなど6種類のセラミドを含む。
これまでも20年以上に渡り、発酵技術を活かした石けん、スキンケアの販売は行ってきた。ただ、ブランドカラーは発酵を想起させる「アースカラー(茶色)」のイメージで表現していた。売上高も年間3億円前後にとどまっていた。今回、淡いピンク色に変え、精油や使用感にこだわるなど女性の五感に訴える設計にした。
万田発酵の年間売上高は、約140億円。健食通販のほか、農業用肥料を扱う。通販事業の売上高は100億円超を占める。
くちコミで50代獲得へ 【松浦社長との一問一答】
化粧品通販の本格参入に際し、万田発酵の松浦良紀社長は、「発酵技術を使い『万田発酵』(健康食品)で身体の内側から、『エムフォルテ』を通じて外側から女性をサポートしたい」と意気込みを語る。新ブランド発表における一問一答は以下の通り。
――新規顧客の認知向上に向けたプロモーションは。
「インフルエンサーやくちコミで高めていく。これまで行っておらず、(くちコミマーケティングの)知見も深めていきたい」
――認知の面ではテレビが効果的だが。
「短尺CMも検討はしているが、まだ、『万田発酵』が化粧品を販売しているイメージはない。大々的な展開ではなく、話題を提供しつつSNSやくちコミサイトで認知を高めつつ、広告展開する両面からリーチする」
――ターゲット層は50代。SNSを中心とするウェブと一致するか。
「50代を中心としつつ、30~60代の女性層まで幅広くカバーしていきたい。既存の(健食の顧客も)中高齢層が多くマッチする」
――現在の健食の顧客基盤は。
「累計(顧客数は)350万人。アクティブ顧客が11万人ほど。クロスセルも行っていく」
――通販以外の販路は。
「百貨店など対面店舗が全国にある点は強み。これも活かす。また、7月中旬には工場や研究棟など(顧客を)招くことができる本社施設をリニューアルオープンする。そこからも情報発信していく」
――海外展開は。
「(食品ではすでに)ミャンマーに進出している。これを中心にタイやマレーシアなど東南アジアを視野に入れている。販売代理店を通じた展開か自社展開かは未定」
――通販化粧品としては価格設定が高いが勝算は。
「(価格は)従来から展開する別ブランドに合わせる形で設定した」
――現状の化粧品ブランドの売上高は。
「年間3億円前後。これまでは(サイトへの自然流入などで)売れてきた。積極的に媒体を使ったプロモーションは行っていなかった」
――健食事業について。15年に機能性表示食品制度が開始したが活用の方針は。
「機能が絞られてしまう点があり、今のところ活用の方向性は持っていない」