今年5月に米eBay(イーベイ)に買収されたジオシス・プライベート・リミテッド(旧・ジオシス)は、仮想モール「Qoo10」の新体制の構築に向けた準備を着々と進めている。同月にはイーベイ・コリアで現地最大手の仮想モール「Gマーケット」の運営にも携わっていた滋炫具(写真=ジャヒョン・グ)氏がQoo10の戦略担当本部長に就任。日本よりも先行してイーベイ傘下となった韓国のGマーケットでの成功体験をもとに、今後、日本で展開していく運営方針や取り組み計画について具氏に話を聞いた。
「オンラインマーケットプレイスとしてバイヤーとセラーをつなげている。昨年のグローバルでの取引高は約10兆円、この内アジアの割合は25~30%。これまで日本では輸出しか行っておらず、その規模はまだ中国などに比べて小さい。しかしながら成長率では毎年30~40%程度で伸びている」
――日本よりも先行している、韓国ではどのようなビジネスモデルを展開しているのか。
「韓国ではGマーケットとオークションの2サイトを主に運営しており、2サイトの取扱高は約1兆5000億円。マーケットシェアは15~20%近くあり、現地最大手のEC企業となる。
韓国は小売りに占めるECの割合が他国に比べて非常に高く、15~17%とも言われており、日本と比較して2倍程度の規模があると見られている。これはネットの普及が早かったことに加え、国土や人口集中といった要因からロジスティクスの環境でも非常に有利な条件にあったことがECが盛んになっている理由だと思う」
――韓国のEC市場での日本商品の評価は。
「イーベイでは日本の仮想モールと提携して一部商品の輸出販売や個人企業の商品販売などを行っているが、統計を見ると日本のドラッグストアで扱っているコスメ、薬をはじめ、ファッションアイテム、ゴルフクラブ、スポーツウェア、食品などが売れている。食品ではこんにゃくゼリーのほか、醤油、ラー油といった調味料なども人気で、単価が高いものでもよく出ている」
――今回、イーベイが日本のQoo10事業を買収した理由は。
「アジア市場展開の一つとして、日本に魅力を感じた。元々、ジオシスの株式の40%の持ち分があって、その残りを買い上げた形となる。現在の日本のEC化率は低いので、まだまだ伸びると思う。小売り市場全体の伸び率はそこまで高くはないが、EC市場は毎年10~20%程度ずつ伸びている。その中で一部のシェアを取るだけでもかなりの規模が見込める。
Qoo10が今すぐメジャープレイヤーになれるということではないが、特定の顧客に対して特定のバリューを提供できるニッチプレイヤーとしての意味が今はあると思う。そこからシェアを徐々に伸ばしていくことでメジャープレイヤーへの道は開けていく。そのポテンシャルがあると考えて日本の市場に入った」
――今後の日本での戦略について。
「Qoo10が持っている一番のメリットは20~30代の若い女性が顧客層の7割、8割を占めているということ。女性を顧客ベースに持っているのでそれを増やしていくと年齢のレンジも上げて行けるし、男性客も獲得することができる。これが反対だと難しいと思う。まずは今のコアターゲットに向けてどのようなバリューを提供できるかを考えていかなくてはならない。ファッション、コスメなど20~30代に人気のあるカテゴリーをより強化していく戦略をとることになると思う。
ファッションの中でも色々なカテゴリーがあり、例えば既存のラインよりも高いブランド商品などに段階的に広げてアプローチしていく可能性もある。今までのように安価なアイテムを中心に売るというイメージからは離れたいとも思うが、それでも、良い商品が一番お得に手に入るというイメージはそのまま維持したい」 (つづく)