TSIホールディングス傘下のTSIECストラテジーは、グループの自社EC強化と顧客の利便性向上を図るため、決済までアプリ内で完結するネイティブアプリ化を各ブランドで進める。
TSIグループは前期(2017年2月期)の後半から今期初めに各ブランドで、ブラウザで簡単にアプリを制作できるサービス「ヤプリ」を使ったスマホアプリを相次いで始動。スマホでもストレスを感じずに商品カタログやルックブックなどを閲覧でき、顧客基盤となるメンバーズカード機能のある「ヤプリ」を第1弾として採用した。
アプリの利用者を増やすため、店頭販売員の啓蒙活動に力を注ぎ、各ブランド店舗の協力を得ながら顧客接点をモバイルに集中。アプリはEC機能に特化せず、メンバーズカード機能を持たせたことで使用頻度が高まり、既存の会員証カードからアプリへの移行が順調に進んだという。
TSIECストラテジー管轄の会社集計では、前期のモバイル購入比率は70・7%、そのうちアプリ経由は6・1%だったが、今第2四半期はモバイル購入比率が74・3%、アプリ経由は14・2%に拡大。「ヤプリ」を活用したアプリの成果が短期間で出た。
アプリ展開の第2弾は、ブラウザを介して動作する一般的なウェブアプリから、スマホなど端末の処理で動くネイティブアプリ化を進める考えで、表示速度の速さやセキュリティー対策などに強みを持つ米プレディクト・スプリング社のモバイルコマース用プラットフォームを日本で初めて採用。まずは「ナチュラルビューティー」や「ピンキーアンドダイアン」などグループの6ブランドを展開するモール型の「東京スタイル公式オンラインストア」が18年1月初旬にネイティブアプリをスタートする。
米社のプラットフォームはアップルの決済サービス「アップルペイ」がモジュールとして実装されているため、タッチID(指紋認証)でのログインや決済に対応。ユーザーが購入を決めてから決済までのスピードが格段に速くなるという。日本では現在、決済代行会社がモジュール開発を進めており、東京スタイルのネイティブアプリでアップルペイが利用できるのは春頃の見込み。
アプリ運営者が顧客のカード情報を持たないため、ユーザーは安心して、しかも楽に決済できるため、日本でもモバイル系スマートペイの活用は増える見込みだ。
新アプリは支払い方法でカード決済を選んでも、カメラマークをタップするとカメラが起動し、利用者がクレジットカードを撮影するだけで必要な情報を自動的に読み込むが、この場合も運営者側にカード情報は記録されない仕組みで、「セキュリティーの主導権は運営者ではなく、消費者にあることが大事になる」(柏木又浩社長)としている。
アプリの検索窓の横にバーコードマークがあり、カメラ機能を使って気になる商品のタグを読み込むとECの商品ページに遷移するため、お気に入り登録すれば自宅でゆっくり検討できる。
TSIでは東京スタイルを皮切りに、春までにさらに4つのネイティブアプリ化を計画。「ローズバッド」と「パーリーゲイツ」のほか、「マーガレット・ハウエル」もしくは「MHL」の3ブランドでアプリを刷新するのに加え、「ナチュラルビューティーベーシック」や「フリーズマート」などサンエー・ビーディーが手がける6ブランドの通販サイトを2月1日に「BDモール」として統合し、2月末~3月初旬にはネイティブアプリもローンチする。
TSIグループはネイティブアプリ化による表示速度の改善や、タッチIDやカメラ機能などによる快適な買い物体験を提供することで、EC売上高に占める自社ECの比率向上にもつなげる。