空色のチャットツールがファッションのネット販売企業から注目を集めている。新たに人工知能(AI)を活用した自動応答ができるチャットボットを開発。24時間対応可能なサポートツールとしてTSIホールディングス子会社のナノ・ユニバースが導入しており、売り上げ増などの効果が出ているようだ。
空色では、2013年からチャットツールを展開している。近年、売り上げ規模の縮小が続くファッション業界では、コールセンター関連など顧客対応コストを抑える企業が増えており、こうした動きに対応して顧客企業を広げている。
同社のウェブ接客ツール「OK SKY」では、これまで蓄積してきたチャットログデータを活かし、AIを活用したチャットボットの提供を開始した。導入したナノ・ユニバースでは今夏、サイトやアプリ上で発生する問い合わせにチャットボットで自動対応した。ユーザーはいつでもチャット問い合わせができる。チャットボットは問い合わせの9割以上をすでに学習済みとしており、サービス開始後もAIの学習とデータチューニングに取り組むことで回答範囲の拡大と精度を高めている。
特徴となるのは、商品やセールなどの質問にはチャットボットで一次対応を行った後、スタッフの「スタイリスト」が対応を引き継ぐこと。AIはデータがない質問に対する回答はできないため、人の力も加えることで、ユーザーの購買意欲を見落とすことなくアプローチできるのが強みだ。
例えば、実際にあった会話として「発送時期が10月下旬となっているが、前倒しはできるか」という質問に対し、AIは「予約商品の販売時期はサイトに記載された通り」といった回答しかできない。しかし「商品についての相談は『スタイリストに相談』と入力して欲しい」と加えることで、ユーザーがその通りに入力。ここからは人間に引き継ぎ、ユーザーが聞きたかった発送時期の前倒しについてチャットで回答する。
ナノ・ユニバースでは、チャットボット導入後の売り上げは、前年同月比で3・3倍に向上。導入前月対比でも30%しているという。チャット発生件数自体も、前年同月から3倍に増えている。発生する質問の60~70%はチャットボットで解決する。
チャットボットからスタイリストへの引き継ぎは全体の約15%となっており、過去の購入履歴を参照しながら提案できるため、この場合の購入率は高くなっている。同社では問い合わせ内容を定義した上で分類しており、購買に結びつきそうなものであれば、スタイリストに会話を引き継がせるような設計をしている。空色の中嶋洋巳社長は「商品到着時期の問い合わせであれば、購入した商品に関連する新たな提案をして、ユーザーがそれを『教えて欲しい』と回答すればスタイリストに引き継ぐ仕組みにしている。きちんと定義付けができているので、購入率を高めるチャンスを生み出している」と話す。
OK SKYは基幹システムとの連携もしやすく、パッケージを使っている通販サイトであったも、組み込みが簡単だという。チャットボットを使えば、24時間対応が可能になるほか、接客効率も向上できる。「チャットボットのニーズは高まっており、顧客対応のコストを低減したい企業からの引き合いが多い」(中嶋社長)。
OK SKYのネット販売企業の利用は30社程度。年商数十億円以上の企業をターゲットにしている。導入費用は企業によって異なるが、ツールのみでは月額30万円程度、スタイリストも利用する場合は同70~80万円程度。コストを抑えて導入できる「ライトプラン」もあり、ツールとスタイリストをセットにして月額30万円で利用できる。ただし、営業時間は固定となっているほか、ラインアカウントや在庫システムとの連携はできない。
今後は越境ECへの対応も行う。2018年7月期中にもOK SKYの100社以上への導入を目指す。