「保健機能食品制度」の表示枠拡大へ
健康食品の機能性表示を可能にするため「保健機能食品制度」の表示枠拡大が模索され始めた。4月14日に行われた消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」第8回会合では、消費者サイド、業界サイド双方が、現行の特定保健用食品(トクホ)の枠拡大などによって、健食の表示可能領域を広げるとの見解で意見が一致したためだ。健食の表示制度化がいよいよ現実味を帯びてきた。
機能性表示の枠拡大は、現行トクホの「規格基準型トクホ」と、「栄養機能食品」の枠組みの拡大によって対応するというもの。
検討会では、規格基準型トクホについて消費者サイドから、「増やすことが出来るのではないか」(宗林さおり委員)、「拡充の方向で考えても良い」(中下裕子委員)、「科学的根拠があるものは、『規格基準型』として拡大する」(山根香織委員)「『規格基準型』の拡張は一つの方法」(神田敏子委員)といった意見が相次いだ。
さらに、業界サイドの浜野弘昭委員は「『規格基準型』に加え、『栄養機能食品』の枠を拡大する方法もある」ことに言及。二制度の枠組み拡大で委員の見解は一致し、田中平三座長は「トクホに準ずるものについて、どの程度の科学的根拠を求めるか議論する必要がある」として、次回以降の検討課題を示した。
ただ、両制度の活用には、健食の安全性や、GMP(適正製造規範)による品質の確保といった問題も併せて議論する必要性も指摘されたほか、監視強化の面から「社名公表など健康増進法の罰則規定を強化すべき」(宗林委員)といった提言も示された。
解説・機能性表示の枠拡大は可能か?
「規格基準型トクホ」と「栄養機能食品」の枠拡大によって現実味を帯び始めた健康食品の表示制度化。これはポジティブリスト(表示可能な項目を列記すること)の活用により、機能性表示を可能にするものだ。だが、実際、円滑に運用できる制度とするためには現行制度の大幅な改革が不可欠といえる。
まず「規格基準型トクホ」について。これはトクホとして許可件数が百件を超え、十分に科学的根拠が蓄積したものをリスト化して簡単な手続きで利用できるもの。今は食物繊維やオリゴ糖関連で九種認められている。すでにコレステロールや中性脂肪関連で許可品目が相当数に達しているとみられ、今後、この分野で新たな許可品目が誕生する可能性がある。
ただ、「最終製品ベース」で許可するため、"既許可製品と同じ形状でなければならない"という制限がつく点に難がある。基本的に「素材(関与成分)ベース」でリスト化する欧米とこの点が違う。
一方の「栄養機能食品」。これは「素材(関与成分)ベース」でリスト化したもの。現在はミネラル五種とビタミン12種が認められている。検討会では、健食に使われる多くの成分をここにリスト化し、機能性表示を可能にする方向性が示されたわけだ。
ただ、問題は自己認証である点。リストの成分さえ使えばどんな設計の健食であれ「栄養機能食品」と名乗ることができ、"特別な健食"であるかのようなイメージを一部の悪質な事業者が巧みに利用してきた。
このため検討会でも「最終製品で評価するステップが必要」「現行制度のままでは無理がある」「登録制を検討する必要がある」といった意見が委員から指摘された。
さらにリスト化も容易ではない。現在、栄養機能食品で認められている成分は、科学的根拠が十分過ぎるほどある、いわば"トクホ以上"といえるもの。リスト化には健食に求められる科学的根拠のレベルを再度議論する必要がある。
また、リストに収載される成分の摂取上限量が「医薬部外品」を参考に設定されている点も難がある。部外品の許可成分であるビタミンは設定しやすいが、過去にミネラルとしてリスト化された銅や亜鉛は、参考にすべき部外品がなく、上限量の検討に半年以上の期間を要した。
科学的根拠が十分なこれら成分でさえ、長期間に渡る検討の末にリスト収載が認められたもの。制度を見直しても、約3万種あるとされる健食それぞれの成分をリスト化するには、どれほど時間を要するか"推して知るべし"といったところだ。
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検討会では、規格基準型トクホについて消費者サイドから、「増やすことが出来るのではないか」(宗林さおり委員)、「拡充の方向で考えても良い」(中下裕子委員)、「科学的根拠があるものは、『規格基準型』として拡大する」(山根香織委員)「『規格基準型』の拡張は一つの方法」(神田敏子委員)といった意見が相次いだ。
さらに、業界サイドの浜野弘昭委員は「『規格基準型』に加え、『栄養機能食品』の枠を拡大する方法もある」ことに言及。二制度の枠組み拡大で委員の見解は一致し、田中平三座長は「トクホに準ずるものについて、どの程度の科学的根拠を求めるか議論する必要がある」として、次回以降の検討課題を示した。
ただ、両制度の活用には、健食の安全性や、GMP(適正製造規範)による品質の確保といった問題も併せて議論する必要性も指摘されたほか、監視強化の面から「社名公表など健康増進法の罰則規定を強化すべき」(宗林委員)といった提言も示された。
解説・機能性表示の枠拡大は可能か?
「規格基準型トクホ」と「栄養機能食品」の枠拡大によって現実味を帯び始めた健康食品の表示制度化。これはポジティブリスト(表示可能な項目を列記すること)の活用により、機能性表示を可能にするものだ。だが、実際、円滑に運用できる制度とするためには現行制度の大幅な改革が不可欠といえる。
まず「規格基準型トクホ」について。これはトクホとして許可件数が百件を超え、十分に科学的根拠が蓄積したものをリスト化して簡単な手続きで利用できるもの。今は食物繊維やオリゴ糖関連で九種認められている。すでにコレステロールや中性脂肪関連で許可品目が相当数に達しているとみられ、今後、この分野で新たな許可品目が誕生する可能性がある。
ただ、「最終製品ベース」で許可するため、"既許可製品と同じ形状でなければならない"という制限がつく点に難がある。基本的に「素材(関与成分)ベース」でリスト化する欧米とこの点が違う。
一方の「栄養機能食品」。これは「素材(関与成分)ベース」でリスト化したもの。現在はミネラル五種とビタミン12種が認められている。検討会では、健食に使われる多くの成分をここにリスト化し、機能性表示を可能にする方向性が示されたわけだ。
ただ、問題は自己認証である点。リストの成分さえ使えばどんな設計の健食であれ「栄養機能食品」と名乗ることができ、"特別な健食"であるかのようなイメージを一部の悪質な事業者が巧みに利用してきた。
このため検討会でも「最終製品で評価するステップが必要」「現行制度のままでは無理がある」「登録制を検討する必要がある」といった意見が委員から指摘された。
さらにリスト化も容易ではない。現在、栄養機能食品で認められている成分は、科学的根拠が十分過ぎるほどある、いわば"トクホ以上"といえるもの。リスト化には健食に求められる科学的根拠のレベルを再度議論する必要がある。
また、リストに収載される成分の摂取上限量が「医薬部外品」を参考に設定されている点も難がある。部外品の許可成分であるビタミンは設定しやすいが、過去にミネラルとしてリスト化された銅や亜鉛は、参考にすべき部外品がなく、上限量の検討に半年以上の期間を要した。
科学的根拠が十分なこれら成分でさえ、長期間に渡る検討の末にリスト収載が認められたもの。制度を見直しても、約3万種あるとされる健食それぞれの成分をリスト化するには、どれほど時間を要するか"推して知るべし"といったところだ。