八幡物産が届出を行った機能性表示食品に、日本アントシアニン研究会(以下、研究会)が疑義を呈している。今年1月、機能性評価と表示内容に問題があると指摘。複数回に渡るやり取りもいまだ解決に至っていない。ただ、いざこざの背景には、「研究会会員と非会員企業という立場の違いからくる感情的対立や意思疎通の難しさも影響している」(業界関係者)との見方もある。
研究会は、届出の撤回を求めているが、八幡物産は、「問題ない」と判断。届出を撤回しないとする。7月5日、同13日付で研究会が撤回の申し入れに関する文書を公表したことを受け、八幡物産は「弁護士と協議を進めている」(同13日付)と応じており、名誉毀損等による提訴も視野に入れているとみられる。
問題視されているのは、八幡物産が昨年10月に届出を行った「北の国から届いたブルーベリー」(=画像、機能性関与成分・ビルベリー由来アントシアニン)。機能性はシステマティックレビュー(SR)で評価し、「パソコン作業、事務作業など目をよく使うことによる目の疲労感、ピント調節機能の低下を緩和」などと表示する。
ただ、日本アントシアニン研究会は、商品と、機能性評価に使った研究論文に使われているビルベリーエキスの「同等性」が根拠づけられていないと指摘。使った論文の結論からは、八幡物産が行うような機能性表示はできないとしている。
「同等性」とは、研究論文と商品で使う原料が栽培方法やエキスの抽出法など品質、安全性、機能性の面で同様のものといえるかということ。複数の論文から機能を評価するSRでは、「同等性」に対する考察が制度上、求められている。
研究会は1月の時点で、届出の撤回を申し入れていた。ただ、以降も「中身のある回答がなく、そのまま商品の販売が行われた」(書面より)ことを受けて文書公開に踏み切ることを再度通知。これを受け、八幡物産が3月末、東京地裁に文書公開の差し止めを求める仮処分の申し立てを行い、以降、裁判所でやり取りが続いていた。
ただ、6月に八幡物産が申し立てを取り下げたことをもって研究会は論文の結論と表示内容が矛盾していることを自ら認め「反論することに失敗した(略)地裁から却下を受けることを避けるために仮処分を取り下げた」(同)と指摘。文書を公開し、改めて届出撤回を求めた。
八幡物産はこれに「当初は穏当な解決を目指していたが(地裁でも)持論を一方的に主張するだけで見解の相違を埋められなかったため」と反論。機能性評価の内容に瑕疵があると認めたものではないとしている。
研究会は13日、十数社のメディアに見解を示す文書を送付。これを受け、八幡物産も近く反論書面を出すとみられ、両者の溝は埋まっていない。
対立の背景には、原料メーカーを巻き込んだ別の側面もあるとみられる。
研究会は、大学教授など複数の学術経験者を役員に組織する。ただ、機能性素材を研究題材に扱う多くの研究会同様、この研究会にもアントシアニンを扱う複数の原料メーカーが会員として参加している。協力して原料の認知を図るなど参加企業の利益を代表する団体としての側面もある。学術経験者の中には、販売事業者や原料メーカーと共同研究を行うなど、浅からぬ関係にある者もいる。八幡物産は、この研究会に参加しておらず、八幡物産が商品に使う原料の供給元も「研究会に参加していない」(業界関係者)という。
また、SRは、「最終製品を使った臨床試験」と異なり、その評価手法の性質上、他社の研究論文を使うケースもでてくる。こうした背景も両者の溝を深める一因になっているとみられる。