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DeNAの八津川博史事業部長に聞く 仮想モール事業の戦略は㊤

2016年 6月 9日 10:17

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ディー・エヌ・エー(DeNA)の2016年3月期における仮想モール「DeNAショッピング」の取扱高(auショッピングモールやSEIYUドットコムなども含む)は、前期比3%減の622億円となった。ショッピングなどの代金を毎月の通信料金と合算して支払う「auかんたん決済」の利用限度額が昨年7月に見直されたことなどが響いた。EC事業本部ショッピングモール事業部の八津川博史事業部長に、今後の戦略などを聞いた。

前期は流通額が減少した。

 「auショッピングモールにおいて、一部ユーザーの『かんたん決算』限度額が1万円に下がったのが一因。KDDI側で与信の設定を最適化したことによるもので、限度額が下がるユーザーが一定数いた。これは、当社やKDDIのECチームとしても不可抗力というか、どうしようもない話。ユーザーには連絡なく限度額が下がったので、『今まで使っていたのに心理的な距離ができた』という声がKDDIのカスタマーサポートには寄せられていたようだ。現時点では影響も収まったのではないかと思っているが、毎月安定して使っていたユーザーの限度額が下がったということで、流通額には影響した」

 店舗へのフォローは。

 「店舗対応は当社が担当しているので、もちろん実施したが、起こっていることを正しく伝えるしかない。当社とKDDIの施策を説明して、かんたん決済とは違う部分での期待を喚起、流通を生み出してもらうための努力をした」

 違う部分での需要喚起とは。

 「DeNAらしさを掘り下げるということで、例えばサイトトップの特集企画。ファッションコーディネートやグルメなど、カテゴリー別特集を強化しており、特集経由の流通が大きく増えている。最近であれば母の日、これからは水着などだ。重視する企画については非常に注力しており、店舗からの評価は高い」

 「『カテゴリーマスター』制度も本稼働を始めた。これは、カテゴリーごとに専任の担当者がつくというもので、そのカテゴリーならではの、さらにDeNAらしい商品の上手な見せ方や企画づくりを矢継ぎ早に進めている。まだまだ足りない商材や出店して欲しい店舗もあるので、出店店舗から商材を募ったり、新規に出て欲しい店舗への勧誘も進めている」

 出店店舗数の推移は。

 「この半年はほぼフラットだが、やや増える方向に進んでいる。新陳代謝も必要だと思っているので、出店者数増に向けてギアを上げていきたい」

 かんたん決済の件で退店する店舗は出たのか。

 「そこまで多くはなかった」

 DeNAショッピングといえば、auショッピングモールでかんたん決済経由の売り上げ増が期待できる点が出店者にとって魅力となるが。

 「最近はKDDIで『au WALLETクレジットカード』の発行・利用を促進している。要はかんたん決済を同カードで行ってもらうという方向だ。ポイント還元率についても、同カードでかんたん決済をした場合に優遇する流れとなっている」

 auショッピングモールで3カ月に1回開催する大型セール「ラッキーセール」でも、かんたん決済で購入した場合のポイント還元率を優遇している。

 「KDDIのサービスを利用すると、よりお得になるという世界観を作りたいと思っている。ただ、かんたん決済を導入していない店舗もあるので、1店ずつ話をしている。手数料が4%かかるため、表面的な負担を見て導入しない店舗もある。ただ、かんたん決済があるからこそ購入率が上がる側面もあるので、きちんと説明していきたい」

 出店店舗の質向上に向けて、他の仮想モールの有名店舗を取り込む方針を打ち出していたが、進んでいるのか。

 「有名店の取り込みは、確実にペースとしては上がっている。まずは当社を認知していただくことが必要。『どうすれば当モールで売れるか』という提案も含めて出店していただく、というケースが確実に増えている。例えば、宇治茶や抹茶菓子の伊藤久右衛門に、母の日商戦から参画してもらえた」

 そうした店舗がDeNAショッピングに出店する際に評価したポイントは。

 「今年の『DeNAショッピングフォーラム』では、ファッションにおけるコーディネート販売や、キュレーションメディアとの連携について説明したが、このような『価格以外での軸』をきちんと提案している部分だ。長くネット販売をしている企業ほど『セール疲れ』を感じているはず。ボリュームは他モールほどではないかもしれないが、利益をきちんと確保しながら質の良い顧客を獲得できる点が当モールのメリットであり、評価してもらっている。セールを前面に出すのではなく、商品の良さや商品と使った時の世界観をコンテンツで見せるといった点を重視している」
(つづく)


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