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坂本満広WEB事業部部長に聞く・アーバンリサーチのEC戦略は?②

2015年11月26日 10:54

アーバンリサーチの坂本満広WEB事業部部長にECの成長戦略を聞いた。

                              ◇

――実店舗とネットの連携を強化している。

自社通販サイトでは8月から、店頭での『商品取り置きサービス』を始めたが、これは店頭が起点となって立案した。商品詳細ページで在庫のある店舗を探せるようにしているが、店舗名の横に『取り置き申込』ボタンを設置した。消費者が店舗に電話をかけるのではなく、ボタンをクリックするだけで取り置き依頼できる機能を加えた。最初は限られた店舗で始めたのにもかかわらず、約1週間で数百件の取り置き依頼があった。顧客満足につながるヒントはすべて現場に落ちていることを再認識できた

――オムニチャネルを進める上で店頭の協力や意識改革は不可欠だ。

オムニチャネル化はEC側からいくらお願いしても、実店舗のスタッフが自らやる気を出さなければ成功しない。ただ、今後の実店舗はITを活用しないと生き残れないと思っている。当社は4月に評価制度を見直し、店頭販売員のEC貢献度に対する評価を高めた。とは言え、実店舗では目の前のお客様に接客をしなければならず、単に評価制度を変えただけではダメだが、実店舗からITを活用しようという発想が出てきたことはうれしい。ECでも、『コーディネートが分かりにくいからもっと画像が見たい』とか『商品のサイズや色が分かりにくい』といった声が聞こえてくるため、それらをサイト改善のヒントにしている。ECでもリアル店舗でもヒントは現場にしかないということだ

――消費者がヒントをくれる。

ウェブルーミングという言葉があるように、ECで商品をチェックして実店舗に来店する消費者は非常に多い。そうであれば、仕組みを整えて新しいサービスを提供すればいい。結局、オムニチャネルというのはEC側の発想だけでは成り立たない。流行りだからと言って新しいサービスを考えると過剰なものになり、誰にも使ってもらえない。現場起点で生まれるものは過剰サービスにはならない

――他社ECモールと在庫連携を進めている。

ファッションECモールなどとシステム連携をした上で取り引きのなかった売り場にも出店している。実際に在庫を預けるとなるとアイテム数を絞らざるを得ないが、データ連携すれば全商品を販売できる

――すべてのECモールが対象か。

「ゾゾタウン」には在庫を預けているが、システム連携もするハイブリッド型で取り引きをしている。「ゾゾ」は売れるスピードが速いことと、即日配送サービスがあるために一定の在庫を預けていて、システム連携は在庫が薄くなったり、欠品した場合のフォローをしていくイメージだ

――EC売り上げの内訳は。

前期のEC売り上げ約86億円のうち『ゾゾ』が半分程度、その他のECモールで約20%だった。16年1月期はEC全体が110億円で、そのうち自社ECは前期と同様に30%程度を見込んでいる。今期も『ゾゾ』が半分くらいだ

――「ゾゾ」では何が良かったのか。

10月下旬に約1週間実施したクーポンキャンペーンの売り上げがびっくりするくらい大きかった。通常、『ゾゾ』では個々の店のバナーは出さないが、今回は全面的にバックアップしてくれた。セール期などは全店舗が『ゾゾ』のユーザーに向けて発信するので効果が薄れてしまうが、クーポン施策では対象店舗だけがゾゾの全会員に向けてアナウンスできた

――2000円割引の原資は御社がもった。

クーポンは販促費の位置づけで、まったく惜しくない結果だった。2000円以上の商品はほぼ全品で、予約商品も対象とした。購入者は新規顧客が非常に多かった印象だ。クーポン施策が終了してから売り上げのベースが上がっているし、自社サイトの売り上げにも影響がなかった。新規客がリピーターになってくれればいい

――リスクもあった。

当社にとっても挑戦だった。というのも、相当の在庫量が必要で、会社を説得して半年前から準備をした。それでも蓋を開けると商品が足りず、実店舗の在庫も集めた。今回の取り組みはサイト開設10周年という意味合いもあった。11月中には自社サイトでも2000円クーポンのキャンペーンを行う(おわり)
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