新体制、出足は順調"新生ジャパネット"が順調な出足を見せているようだ。期初に創業者の髙田明氏の長男で副社長だった髙田旭人氏が新社長に就任。同時に販売・受注・広告代理・物流・修理およびアフターサービスをそれぞれが手がける専門会社と、それらグループ会社の管理業務を行う持ち株会社の6社での事業を遂行する体制に変えるなど大変革を断行。その動向が注目されていたが、新体制として臨んだ初年度となる今期の上期(1~6月)の業績は堅調なスタートを切れたよう。また、新体制の下で新たなチャレンジも進めているようだ。
「会社が変革している真っ最中であり、胎動期と言える。まだまだこれからだが、成果も見え始めている」。1月16日付で創業者の髙田明氏に変わり、社長に就任した髙田旭人氏は"新生ジャパネット"の現状についてこう話す。
「社員にそれぞれの部門でプロになって欲しい」という髙田新社長の考えのもと、ジャパネットグループは今期から体制を一新。販売を行う「ジャパネットたかた」と受注を担う「ジャパネットコミュニケーションズ」という既存のグループ2社と広告代理業務を行う「ジャパネットメディアクリエーション」、物流業務を行う「ジャパネットロジスティクス」、修理・アフターサービス業務を担う「ジャパネットサービスパートナーズ」を加えた5つの事業会社と、それら会社の管理系業務を担う持ち株会社「ジャパネットホールディングス」という6社による事業遂行体制として、新たな一歩を踏み出した。
その動向が注目されていた"新生ジャパネット"だが出足は順調なようだ。業績面では「『(前社長の)髙田明』という大きな存在が抜けた中では善戦している。悪くない出足」(髙田旭人社長)とし、順調に推移しているようだ。髙田社長によれば今期上期(1~6月)の業績は3月までは前年の消費増税前の駆け込み購入の反動が影響したものの、4月以降は回復を見せ、掃除機やタブレットなどの売れ筋のほか、夏場に向けて特にエアコンの売れ行きがけん引する形で、前年上期の実績には若干、届かなかったものの、ほぼ横ばいで着地した模様で概ね順調な出足となっているようだ。
一方で期待される新体制移行後の実成果についてはどうか。「(新体制移行後に)すぐ成果が出るとは思っていない。人材育成などもまだまだこれから」(髙田旭人社長)とするが、広告代理業や映像制作などを担当する「ジャパネットメディアクリエーション」をグループ化したことで、これまでよりも「我々が出したい想いやメッセージを迅速かつ的確に反映できる」(同)ような企業CMやキャンペーンCMを打てるようになったほか、新設した「ジャパネットサービスパートナーズ」で手掛けるジャパネットたかたで販売した商品の修理サービス(=
写真)についても「KPI(重要業績評価指標)として最も重視している」(同)という顧客からの修理依頼数に占める自社で修理できる割合である"自社修理率"は立ち上げからわずか半年という短期間で約4割に達するなど一定の成果を上げつつあるようだ。
また、「ジャパネットロジスティクス」が手がける昨年末から開始した関東圏(1都7県)を対象とした「当日配送」についても現在は週2~3回程度、実施しているが「(当日配送を実施した日は)明らかにベースの売り上げが上がることは実感している」(髙田旭人社長)として売り上げへのインパクトは大きいようだ。
下期からはさらに攻勢をかける。出足についても7月単月売上高はエアコンの売れ行きを軸に前年7月を上回って推移する見通しで、「下期は特に良いスタートが切れている」(同)とする。8月からは休止していた東京オフィス内の撮影スタジオを再稼働。昨秋から髙田明前社長の指揮のもと、番組制作の再強化を図るため、長崎・佐世保の本社スタジオで番組制作を一本化してきたが、「すでに今のメンバーで番組制作がしっかり回せ始め、前社長にはアドバイスをもらうという関係に思いのほか、早く移行し始めた」(同)ことなどで本社では主軸の29分尺など長尺番組の制作に特化して、再度、新しい訴求方法や可能性を探るために8月から一部の雑貨などで放映を始める同社では初となる「司会者のいない番組」、要はインフォマーシャル型番組のほか、60秒や90秒の短尺の番組については東京スタジオで制作することにした。
また、経営の一線からは退いたものの、知名度は高く同社の顔と言える存在の髙田明前社長に「良いモノを選び、伝えるという"選ぶ力"と"伝える力"が当社の軸。これを前社長に徹底的にサポートしてもらう」(同)その一環として、6月下旬からは髙田明氏が出演する新コーナー「おさんぽジャパネット」(=写真)をスタート。同氏が日本各地を巡りながら各地の優れた商品を紹介する内容で、初回は東京・柴又を訪れ帝釈天を訪れたり、同地区近隣で銀食器を製造販売する上田銀器工芸を訪ね、髙田明氏自ら銀食器を作る工程に携わるなどし、魅力を伝えつつ、およそ15万円程度の銀スプーンを紹介・販売するという実験的なコーナーをBS枠などで放映したが、下期も福井・鯖江を巡る第2弾のコーナーも放映予定で主力のテレビ通販とブランディングの強化も進める。
さらにカタログの発行スパンや企画ページを増やすなど期初から様々な改善に着手してきた紙媒体についても成果が出つつあるよう。特に誕生日を迎えた顧客に送付するダイレクトメールは4枚綴りの凝った形式とし、特別感を醸成しつつ、掲載する商品やプレゼントなど試行錯誤を繰り返しながら入れ替えを行い、「かなりの成果を上げつつある」(同)。また、6月から一部顧客に限定して送付した食品カタログもクリエイティブの異なる2種類の紙面を送付するなどトライアルを開始しており、今後はテレビとの連動を含め強化していく。
新たな展開として初の実店舗新設などのアイデアも挙がっているよう。店内では同社が通販展開する商品を並べつつ、顧客が商品を試して購入できたり、スタジオ機能を併設し、店内での顧客の生の声を収録して通販番組にも活用したりといった考えもあるよう。また、「ジャパネットサービスパートナーズ」で顧客から引きとった修理後の再生品の販路としても検討しているようだ。
「これからの企画の成否と商品次第で上振れも下振れもする」(同)とし、売り上げにはこだわらない意向を示しつつも、通期(2015年12月)の売上高については前年実績(1538億円)を超えられるよう様々な施策を行っているようだ。
動き始めたばかりの"新生ジャパネット"。「早く土台と環境と組織を固め、それぞれの会社、社員がそれぞれすべきことを自発的に回るようにしたい。そうすれば『世の中に埋もれた良い商品を発掘し、その最大限の価値を伝える』というジャパネットの強みをさらに磨けるようになる」(髙田旭人社長)とし、胎動期を乗り越え、次のステージを目指す。
髙田旭人社長に聞く「新生ジャパネットの現状と今後」"新生ジャパネット"の現状と今後について、髙田旭人社長に聞いた。(聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)
"髙田明"抜けた中では善戦――新体制で挑む初年度だが、半年が経過した。手ごたえは。
「上期(1~6月)の売上高は消費増税の影響で3月までは厳しく、4月以降は取り返すという他の企業と同じ形だ。前年比では若干の減収となっているが、"髙田明"という存在が抜けた中では善戦していると言える。夏場に向けてエアコンの売り上げも伸びてきているなど、直近数カ月の動きはよい。今後の企画や商品次第だろうが、通期では前年実績(1538億円)を超えられるようがんばりたい」 ――利益面は。
「売り上げに応じて一定の利益を得ているが、新体制で臨んでいる今期は社内でも様々な変化を起こしたいということもあり、これまであまりできていなかった社内環境への投資をかなり行っている。例えばデスクトップPCを一部の部署の社員をのぞいてすべてノートPCにしたり、メールソフトを使いやすいものに変えたり、デスクを一新して、荷物の収納量を減らして社員の『断捨離』を進めたり(笑)。日々の業務を円滑に進めるための投資で業務上の利益の数字は若干、減ると思う。また、6社体制となったため、バックオフィス系の部署が一時的に二重構造となる部分もあり、その点も利益面に影響している」――その6社体制による業務執行だが、成果は出ているのか。
「正直、これからだろう。(業務ごとに)6社に会社を分けたのは『(所属する社員が)自分はこのカテゴリのプロだ』という意識を持って、仕事に臨んでもらいたいと思って実施したわけだが、半年ですぐどうこうなるわけでないとは思っている。ただ、今期の全社的な目標である『不易流行』(※いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと)の下のサブテーマとして『当事者意識』と『相互理解』というキーワードを皆に伝えてそれも徐々に浸透し、プロ意識が芽生え始めた社員も増えてきている。今後に期待したい」――グループ会社の中でも特に修理・アフターサービスを担う「ジャパネットサービスパートナーズ」の進捗が気になるが状況は。
「当社で購入いただいたお客様の問題をすべてスピーディーにクリアにすることを目指したいという想いで設立したため、商品の修理や整備を行うチームと商品に関する問い合わせなどの電話を受けるチームを併設しており、人員の定着やスキル構築に思ったよりも時間がかかっている。ただ、修理のKPI(重要業績評価指標)として重視しているものの一つとしてお客様からの修理依頼件数のうち、何%を自社で修理できるかという『自社修理率』だが、現状は約4割となっている。半年という短いスパンの中では評価できる。
今は掃除機や炊飯器がメーンだが、パソコンなどもメーカーの研修を受けて自社で修理できる体制が整いつつあり、修理可能商品増えてきたし、修理のスピードもここにきてようやく短縮できてきた。まだ誇れるレベルではないが前には進んでいる。
修理は再生品の販売にもつながってくる。故障が原因で返品された商品も修理すれば問題なく使用できるわけでそうした『再生品』の販売についても、可能性があると考えている。実際、春ごろに修理品の掃除機を約1万円でラジオショッピングで販売するトライアルを行ってみたが、売れることは実証できた。そうした再生品は国内の通販で売っていくほうがよいか。または『店舗』を開設する方がよいのか。または他社との提携や、ネット販売を使い海外で販売するなどのアイデアも挙がっており、どのような方法をとるかなど現在、様々な可能性を検討しているところだ」東京でも番組制作を再開――経営の一線から退いた創業者で前社長の髙田明氏だが、今年1年は「全力でテレビ通販に取り組みたい」と話していたが、通販番組の出演もすでにだいぶ絞っている印象だ。
「予想よりも早く現在のメンバーが組織として、しっかりと番組制作を回せるようになってきたこともあり、前社長には中心でがんばってもらうよりも『アドバイスをもらう』という形で協力してもらっているという関係に思いのほか早くなってきたということもあり、(髙田明氏の番組出演は)減ってきている。それ以外にも(社長交代後に)講演依頼など様々な話が増え、"ジャパネット以外の仕事"がすごく忙しくなっていることもあるが(笑)。
そうしたこともあるため、前社長や社内でも話し合い、マネジメントなどを含めて、私の下で番組制作についても担当することにして、様々なやり方なども模索した方がよいのではないかという結論に達した。前社長の指揮の下で、番組制作の再強化を図ろうと東京オフィス内の撮影スタジオを昨年11月に一度休止させ、制作チームも異動し、番組制作は佐世保で一本化していたが、8月からは東京スタジオを再び稼働させ、一部の制作チームや全媒体の制作や戦略をコントロールする部署である『メディアミックスチーム』も東京オフィスに移した。もう一度、番組制作の拠点を本社の長崎・佐世保と東京で行うことにし、両拠点で新たな制作方法などを模索して、よりよい形にしていければと考えている」――いずれは社長が常勤する東京に番組制作も一本化していくのか。
「それはない。佐世保には様々なノウハウや優秀なメンバーもおり、そこはそのまま活かしていく。当面、佐世保では29分の長尺番組や生番組の制作を担当。東京では60秒や90秒の短尺番組を担当する。特に東京では土地柄を活かして、ロケを多用した番組など新しいチャレンジを積極的に行っていきたい。例えば当社としては初めてとなるMC(司会者)のいないインフォマーシャル型の番組の制作も今後、行っていくつもりだが、これらも東京で手掛けていく。なお、インフォマーシャルは8月中旬からオンエアするが第一弾は『プレス&シール マジックラップ』(※非常に気密性の高いラップ)の予定だ」 ――髙田明前社長のジャパネットグループにおける役割は今後、どうなるのか。
「当社の軸は2つだ。数ある商品の中から、『これが一番よい』という"選ぶ力"とその選んだ理由を分かりやすく説明する"伝える力"だ。私は社長就任後はその2つの軸をより強固なものにしていくために、これまであまり手を入れてこなかった組織やルールの作り込みをやってきたし、今後もやっていくつもりだが、その間にこの2つの軸が弱まってしまったら"ジャパネット"ではなくなってしまう。
そうならないよう前社長にはその2つの軸に関することをサポートしてもらう。先の番組制作への助言もそうだし、また、BSフジの当社の番組枠で6月27日に初めてオンエアしたのだが、『おさんぽジャパネット』という新コーナーを始めた。前社長が全国各地を巡りながら、各地の優れた商品を紹介するもので、初回は東京・柴又をぶらりと歩きながら、ふらっと煎餅屋さんに立ち寄ったりして。その後に近隣に店を構える宮内庁御用達の銀食器を製造販売する上田銀器工芸さんを訪ねて、製造工程なども体験しつつ、15万円程度の銀スプーンを紹介、販売する内容だった。実験的な試みだが『良いものを選んで、その良さを伝える』という"ジャパネットの軸"そのものであり、面白いトライアルだと思っている。
第二弾も決まっており、福井・鯖江を巡る内容だ。前社長には『おさんぽジャパネット』のほか、ポーランドやデンマークなどの羽毛布団の製造現場へロケに行ってもらったりもしている。実際に現場に足を運んでジャパネットの羽毛布団は何が優れていて、どういうこだわりで作られているのかを伝えてもらいたいと。羽毛布団を販売する今冬にオンエアする予定だが楽しみにしていてほしい」 ――髙田明前社長は経営の一線から退いたとはいえ、"ジャパネットの顔"で、知名度も抜群だ。前社長がそうした役割を担うというのは非常に理にかなっていると思う。
「色々なところを回って様々なものを見て、そうしたものの良さを伝える、というのは本人がもともとやりたかったことでもある。先ほどの『おさんぽジャパネット』で紹介する商品選びはまったく私はタッチしていない。父が自由にやっている(笑)。父もやりたいし、会社としても、やって欲しいと。非常に良い形だと思う」「来年は新しいこと、どんどんやる」――様々な媒体を活用・連動させ通販展開を行うメディアミックス戦略の今後の方向性は。
「昨年までは主に前社長がテレビと紙媒体を、副社長だった私がインターネット、商品を見てきたが、今年からは全メディアを私が見ることになったため、テレビ、ラジオ、インターネット、紙といった各メディアを横串でどう一体感を表現するかということをテーマとして注力し始めている。個別のメディアに関しては様々な施策を打ち始めている。テレビは佐世保と東京の2拠点で番組制作を行う体制に改めてより強化していく。紙媒体では色々なチャレンジをすでに始めている。カタログでは発行スパンやページ数を変えたり、企画を増やしたりなどし、よい結果が出てきている。
面白い取り組みとしては、当該月に誕生日を迎えるお客様に送付するダイレクトメール(DM)だ。今年2月から通常のDMとは変え、4枚綴りで1枚1枚めくっていく凝った形式にした。掲載商品も人気商品をそろえ、価格もお得感のある特別価格で紹介しているが、毎月、売れ行きを見ながら、掲載商品の入れ替えを細かく行ったり、特定の商品を購入した方に3~4点の中から1つをプレゼントとしてお渡しする企画『選べる誕生日セット』も同じく反応を見ながら商品の入れ替えを行っていることなどで明確な結果が出てきている。4枚綴りのDMの形式は割高になるため、採用するか悩んだが、これにより特別感が醸成できたことは大きいと思う。
新しいチャレンジとしては食品ギフト専用カタログ『ジャパネット美味倶楽部 夏の贈り物』を創刊した。6月に一部のお客様に絞って、商品同梱で数万部だけ配布した。当社は家電中心でお客様の年間購入回数は多くなく、もう少しお客様との接点を持ちたいこともあり食品を強化したのだが、普通に食品を販売するのでは面白くない。このカタログでは『本当にお世話になった人に厳選した特別なものを贈る』というコンセプトのもと、全国からカニやウニなど海産物や松坂牛などの高級牛肉、マンゴーやメロンなどのフルーツ13点を厳選して掲載した。美味しさが伝わるように掲載する写真もこだわった。掲載商品は同じだが、コピーや価格の表記の仕方などジャパネットらしい表現を用いたものと、当社の色を極力出さないシンプルな内容の2パターンのカタログを作成し、配布するテストも行った。当社が食品を販売しているというイメージがなかったことなどもあり、『まだまだこれから』という結果だったが、トライアルとしては様々なことが分かった。今後もテレビと連動させつつ、継続していきたい」――以前から自身が統括してきたネット販売の状況は。
「各メディアの一体感に注力している中で、当社の通販サイトの"個性"をどう出していくべきなのか。双方向性やリアルタイム性、ロングテールなどネットの特性を活かし、個性を出せば出すほど、ネットだけが尖り、他媒体とのバランスが崩れ、一体感が損なわれる可能性もある。そのあたりも含めて、当社らしいネットの役割を模索しているところだ」――今年から6社体制とした理由の1つに各事業会社で積極的に若手や外部の人材を一定レベルの役職に登用し、未来のジャパネットを支える人材を育成する狙いがあった。人材育成の進捗は。
「この半年で"スイッチが入った"と思う社員は確実に増えてきており、今後が楽しみなメンバーも出てきている。部長職やシニアリーダーの数は昨年の2倍くらいにはなっている。仮に現時点ではそのレベルに到達していない人材でも可能性がある者には積極的に責任あるポジションに就かせて経験を積ませて育成していきたい。人材に関してはこの1年は胎動期だと思っている。積極的に採用活動を行い、優れた社員も多く入ってくる一方で、もちろん、環境が変わることで退職する人もいる。大きな変革の際には当然、起こり得ることだが、この1年は整備期間と考えて、しっかり取り組んでいきたい」 ――下期(7~12月)の出足はどうか。
「非常によいスタートが切れている。中でもエアコンの売れ行きが好調で7月月次売上高は前年同月を上回っている。エアコン以外でも例えばタブレットの売れ行きなどもすごくいい。また、テレビに関しても、『4K』など期待できる商品が出てくるなど再び波を感じている。改めてきちんと良い商品を厳選して拡販を強化していきたい」 ――改めて今後の方向性を伺いたい。
「今年は新しいことというよりは、これまでやってきたことを伸ばすための試みや仕組み作りを行ってきた。これまで商品や番組、MCというところで勝負していたがそこにマーケティングや企画の要素を入れたりなどだ。しかし、来年は創立30周年となる記念の年ということもあり、『ジャパネットが新しくなってきた』と思ってもらえるようなことをどんどんしていきたいと思う。例えば、『クルーズ旅行』などの販売も検討している。実は今年のキャンペーンでお客様100人に7日間のクルーズ旅行へご招待したのだが皆様から非常にご好評いただけ、手ごたえを感じている。バイヤーにも話しているが『店で売れている』という理由で当社でも販売し、当社がシェアを取っても意味がないと思っている。それでは"ジャパネットらしさ"がないからだ。どこでも買えるものでは価値は生めないが、当社が徹底的に調べ、これがよいと厳選できるものであれば、マンションでも車でも良いものであれば何であれ、自信を持って皆様に優れた商品とその価値を伝えていきたい。
私は髙田明という経営者が1つの商品にこだわって、またそれをどう伝えればよいかに全力で取り組んでいる姿をずっと見てきた。私も早くそういう経営者になりたいと思うし、父のそうした姿勢は今後も変えず、むしろより強固なものにしていきたい。そのために私は早く土台、環境、組織を固めて、それぞれの会社、社員がすべきことを自発的に行い、回っていくようにしたい。そうなれば『世の中に埋もれた良い商品を発掘し、その最大限の価値を伝える』ということにこれまで以上に最大の力を注げる会社になっていけるはずだ。皆の力でそうなっていきたいと思う」
"新生ジャパネット"が順調な出足を見せているようだ。期初に創業者の髙田明氏の長男で副社長だった髙田旭人氏が新社長に就任。同時に販売・受注・広告代理・物流・修理およびアフターサービスをそれぞれが手がける専門会社と、それらグループ会社の管理業務を行う持ち株会社の6社での事業を遂行する体制に変えるなど大変革を断行。その動向が注目されていたが、新体制として臨んだ初年度となる今期の上期(1~6月)の業績は堅調なスタートを切れたよう。また、新体制の下で新たなチャレンジも進めているようだ。
「会社が変革している真っ最中であり、胎動期と言える。まだまだこれからだが、成果も見え始めている」。1月16日付で創業者の髙田明氏に変わり、社長に就任した髙田旭人氏は"新生ジャパネット"の現状についてこう話す。
「社員にそれぞれの部門でプロになって欲しい」という髙田新社長の考えのもと、ジャパネットグループは今期から体制を一新。販売を行う「ジャパネットたかた」と受注を担う「ジャパネットコミュニケーションズ」という既存のグループ2社と広告代理業務を行う「ジャパネットメディアクリエーション」、物流業務を行う「ジャパネットロジスティクス」、修理・アフターサービス業務を担う「ジャパネットサービスパートナーズ」を加えた5つの事業会社と、それら会社の管理系業務を担う持ち株会社「ジャパネットホールディングス」という6社による事業遂行体制として、新たな一歩を踏み出した。
その動向が注目されていた"新生ジャパネット"だが出足は順調なようだ。業績面では「『(前社長の)髙田明』という大きな存在が抜けた中では善戦している。悪くない出足」(髙田旭人社長)とし、順調に推移しているようだ。髙田社長によれば今期上期(1~6月)の業績は3月までは前年の消費増税前の駆け込み購入の反動が影響したものの、4月以降は回復を見せ、掃除機やタブレットなどの売れ筋のほか、夏場に向けて特にエアコンの売れ行きがけん引する形で、前年上期の実績には若干、届かなかったものの、ほぼ横ばいで着地した模様で概ね順調な出足となっているようだ。
一方で期待される新体制移行後の実成果についてはどうか。「(新体制移行後に)すぐ成果が出るとは思っていない。人材育成などもまだまだこれから」(髙田旭人社長)とするが、広告代理業や映像制作などを担当する「ジャパネットメディアクリエーション」をグループ化したことで、これまでよりも「我々が出したい想いやメッセージを迅速かつ的確に反映できる」(同)ような企業CMやキャンペーンCMを打てるようになったほか、新設した「ジャパネットサービスパートナーズ」で手掛けるジャパネットたかたで販売した商品の修理サービス(=写真)についても「KPI(重要業績評価指標)として最も重視している」(同)という顧客からの修理依頼数に占める自社で修理できる割合である"自社修理率"は立ち上げからわずか半年という短期間で約4割に達するなど一定の成果を上げつつあるようだ。
また、「ジャパネットロジスティクス」が手がける昨年末から開始した関東圏(1都7県)を対象とした「当日配送」についても現在は週2~3回程度、実施しているが「(当日配送を実施した日は)明らかにベースの売り上げが上がることは実感している」(髙田旭人社長)として売り上げへのインパクトは大きいようだ。
下期からはさらに攻勢をかける。出足についても7月単月売上高はエアコンの売れ行きを軸に前年7月を上回って推移する見通しで、「下期は特に良いスタートが切れている」(同)とする。8月からは休止していた東京オフィス内の撮影スタジオを再稼働。昨秋から髙田明前社長の指揮のもと、番組制作の再強化を図るため、長崎・佐世保の本社スタジオで番組制作を一本化してきたが、「すでに今のメンバーで番組制作がしっかり回せ始め、前社長にはアドバイスをもらうという関係に思いのほか、早く移行し始めた」(同)ことなどで本社では主軸の29分尺など長尺番組の制作に特化して、再度、新しい訴求方法や可能性を探るために8月から一部の雑貨などで放映を始める同社では初となる「司会者のいない番組」、要はインフォマーシャル型番組のほか、60秒や90秒の短尺の番組については東京スタジオで制作することにした。
また、経営の一線からは退いたものの、知名度は高く同社の顔と言える存在の髙田明前社長に「良いモノを選び、伝えるという"選ぶ力"と"伝える力"が当社の軸。これを前社長に徹底的にサポートしてもらう」(同)その一環として、6月下旬からは髙田明氏が出演する新コーナー「おさんぽジャパネット」(=写真)をスタート。同氏が日本各地を巡りながら各地の優れた商品を紹介する内容で、初回は東京・柴又を訪れ帝釈天を訪れたり、同地区近隣で銀食器を製造販売する上田銀器工芸を訪ね、髙田明氏自ら銀食器を作る工程に携わるなどし、魅力を伝えつつ、およそ15万円程度の銀スプーンを紹介・販売するという実験的なコーナーをBS枠などで放映したが、下期も福井・鯖江を巡る第2弾のコーナーも放映予定で主力のテレビ通販とブランディングの強化も進める。
さらにカタログの発行スパンや企画ページを増やすなど期初から様々な改善に着手してきた紙媒体についても成果が出つつあるよう。特に誕生日を迎えた顧客に送付するダイレクトメールは4枚綴りの凝った形式とし、特別感を醸成しつつ、掲載する商品やプレゼントなど試行錯誤を繰り返しながら入れ替えを行い、「かなりの成果を上げつつある」(同)。また、6月から一部顧客に限定して送付した食品カタログもクリエイティブの異なる2種類の紙面を送付するなどトライアルを開始しており、今後はテレビとの連動を含め強化していく。
新たな展開として初の実店舗新設などのアイデアも挙がっているよう。店内では同社が通販展開する商品を並べつつ、顧客が商品を試して購入できたり、スタジオ機能を併設し、店内での顧客の生の声を収録して通販番組にも活用したりといった考えもあるよう。また、「ジャパネットサービスパートナーズ」で顧客から引きとった修理後の再生品の販路としても検討しているようだ。
「これからの企画の成否と商品次第で上振れも下振れもする」(同)とし、売り上げにはこだわらない意向を示しつつも、通期(2015年12月)の売上高については前年実績(1538億円)を超えられるよう様々な施策を行っているようだ。
動き始めたばかりの"新生ジャパネット"。「早く土台と環境と組織を固め、それぞれの会社、社員がそれぞれすべきことを自発的に回るようにしたい。そうすれば『世の中に埋もれた良い商品を発掘し、その最大限の価値を伝える』というジャパネットの強みをさらに磨けるようになる」(髙田旭人社長)とし、胎動期を乗り越え、次のステージを目指す。
髙田旭人社長に聞く「新生ジャパネットの現状と今後」
"新生ジャパネット"の現状と今後について、髙田旭人社長に聞いた。(聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)
"髙田明"抜けた中では善戦
――新体制で挑む初年度だが、半年が経過した。手ごたえは。
「上期(1~6月)の売上高は消費増税の影響で3月までは厳しく、4月以降は取り返すという他の企業と同じ形だ。前年比では若干の減収となっているが、"髙田明"という存在が抜けた中では善戦していると言える。夏場に向けてエアコンの売り上げも伸びてきているなど、直近数カ月の動きはよい。今後の企画や商品次第だろうが、通期では前年実績(1538億円)を超えられるようがんばりたい」
――利益面は。
「売り上げに応じて一定の利益を得ているが、新体制で臨んでいる今期は社内でも様々な変化を起こしたいということもあり、これまであまりできていなかった社内環境への投資をかなり行っている。例えばデスクトップPCを一部の部署の社員をのぞいてすべてノートPCにしたり、メールソフトを使いやすいものに変えたり、デスクを一新して、荷物の収納量を減らして社員の『断捨離』を進めたり(笑)。日々の業務を円滑に進めるための投資で業務上の利益の数字は若干、減ると思う。また、6社体制となったため、バックオフィス系の部署が一時的に二重構造となる部分もあり、その点も利益面に影響している」
――その6社体制による業務執行だが、成果は出ているのか。
「正直、これからだろう。(業務ごとに)6社に会社を分けたのは『(所属する社員が)自分はこのカテゴリのプロだ』という意識を持って、仕事に臨んでもらいたいと思って実施したわけだが、半年ですぐどうこうなるわけでないとは思っている。ただ、今期の全社的な目標である『不易流行』(※いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと)の下のサブテーマとして『当事者意識』と『相互理解』というキーワードを皆に伝えてそれも徐々に浸透し、プロ意識が芽生え始めた社員も増えてきている。今後に期待したい」
――グループ会社の中でも特に修理・アフターサービスを担う「ジャパネットサービスパートナーズ」の進捗が気になるが状況は。
「当社で購入いただいたお客様の問題をすべてスピーディーにクリアにすることを目指したいという想いで設立したため、商品の修理や整備を行うチームと商品に関する問い合わせなどの電話を受けるチームを併設しており、人員の定着やスキル構築に思ったよりも時間がかかっている。ただ、修理のKPI(重要業績評価指標)として重視しているものの一つとしてお客様からの修理依頼件数のうち、何%を自社で修理できるかという『自社修理率』だが、現状は約4割となっている。半年という短いスパンの中では評価できる。
今は掃除機や炊飯器がメーンだが、パソコンなどもメーカーの研修を受けて自社で修理できる体制が整いつつあり、修理可能商品増えてきたし、修理のスピードもここにきてようやく短縮できてきた。まだ誇れるレベルではないが前には進んでいる。
修理は再生品の販売にもつながってくる。故障が原因で返品された商品も修理すれば問題なく使用できるわけでそうした『再生品』の販売についても、可能性があると考えている。実際、春ごろに修理品の掃除機を約1万円でラジオショッピングで販売するトライアルを行ってみたが、売れることは実証できた。そうした再生品は国内の通販で売っていくほうがよいか。または『店舗』を開設する方がよいのか。または他社との提携や、ネット販売を使い海外で販売するなどのアイデアも挙がっており、どのような方法をとるかなど現在、様々な可能性を検討しているところだ」
東京でも番組制作を再開
――経営の一線から退いた創業者で前社長の髙田明氏だが、今年1年は「全力でテレビ通販に取り組みたい」と話していたが、通販番組の出演もすでにだいぶ絞っている印象だ。
「予想よりも早く現在のメンバーが組織として、しっかりと番組制作を回せるようになってきたこともあり、前社長には中心でがんばってもらうよりも『アドバイスをもらう』という形で協力してもらっているという関係に思いのほか早くなってきたということもあり、(髙田明氏の番組出演は)減ってきている。それ以外にも(社長交代後に)講演依頼など様々な話が増え、"ジャパネット以外の仕事"がすごく忙しくなっていることもあるが(笑)。
そうしたこともあるため、前社長や社内でも話し合い、マネジメントなどを含めて、私の下で番組制作についても担当することにして、様々なやり方なども模索した方がよいのではないかという結論に達した。前社長の指揮の下で、番組制作の再強化を図ろうと東京オフィス内の撮影スタジオを昨年11月に一度休止させ、制作チームも異動し、番組制作は佐世保で一本化していたが、8月からは東京スタジオを再び稼働させ、一部の制作チームや全媒体の制作や戦略をコントロールする部署である『メディアミックスチーム』も東京オフィスに移した。もう一度、番組制作の拠点を本社の長崎・佐世保と東京で行うことにし、両拠点で新たな制作方法などを模索して、よりよい形にしていければと考えている」
――いずれは社長が常勤する東京に番組制作も一本化していくのか。
「それはない。佐世保には様々なノウハウや優秀なメンバーもおり、そこはそのまま活かしていく。当面、佐世保では29分の長尺番組や生番組の制作を担当。東京では60秒や90秒の短尺番組を担当する。特に東京では土地柄を活かして、ロケを多用した番組など新しいチャレンジを積極的に行っていきたい。例えば当社としては初めてとなるMC(司会者)のいないインフォマーシャル型の番組の制作も今後、行っていくつもりだが、これらも東京で手掛けていく。なお、インフォマーシャルは8月中旬からオンエアするが第一弾は『プレス&シール マジックラップ』(※非常に気密性の高いラップ)の予定だ」
――髙田明前社長のジャパネットグループにおける役割は今後、どうなるのか。
「当社の軸は2つだ。数ある商品の中から、『これが一番よい』という"選ぶ力"とその選んだ理由を分かりやすく説明する"伝える力"だ。私は社長就任後はその2つの軸をより強固なものにしていくために、これまであまり手を入れてこなかった組織やルールの作り込みをやってきたし、今後もやっていくつもりだが、その間にこの2つの軸が弱まってしまったら"ジャパネット"ではなくなってしまう。
そうならないよう前社長にはその2つの軸に関することをサポートしてもらう。先の番組制作への助言もそうだし、また、BSフジの当社の番組枠で6月27日に初めてオンエアしたのだが、『おさんぽジャパネット』という新コーナーを始めた。前社長が全国各地を巡りながら、各地の優れた商品を紹介するもので、初回は東京・柴又をぶらりと歩きながら、ふらっと煎餅屋さんに立ち寄ったりして。その後に近隣に店を構える宮内庁御用達の銀食器を製造販売する上田銀器工芸さんを訪ねて、製造工程なども体験しつつ、15万円程度の銀スプーンを紹介、販売する内容だった。実験的な試みだが『良いものを選んで、その良さを伝える』という"ジャパネットの軸"そのものであり、面白いトライアルだと思っている。
第二弾も決まっており、福井・鯖江を巡る内容だ。前社長には『おさんぽジャパネット』のほか、ポーランドやデンマークなどの羽毛布団の製造現場へロケに行ってもらったりもしている。実際に現場に足を運んでジャパネットの羽毛布団は何が優れていて、どういうこだわりで作られているのかを伝えてもらいたいと。羽毛布団を販売する今冬にオンエアする予定だが楽しみにしていてほしい」
――髙田明前社長は経営の一線から退いたとはいえ、"ジャパネットの顔"で、知名度も抜群だ。前社長がそうした役割を担うというのは非常に理にかなっていると思う。
「色々なところを回って様々なものを見て、そうしたものの良さを伝える、というのは本人がもともとやりたかったことでもある。先ほどの『おさんぽジャパネット』で紹介する商品選びはまったく私はタッチしていない。父が自由にやっている(笑)。父もやりたいし、会社としても、やって欲しいと。非常に良い形だと思う」
「来年は新しいこと、どんどんやる」
――様々な媒体を活用・連動させ通販展開を行うメディアミックス戦略の今後の方向性は。
「昨年までは主に前社長がテレビと紙媒体を、副社長だった私がインターネット、商品を見てきたが、今年からは全メディアを私が見ることになったため、テレビ、ラジオ、インターネット、紙といった各メディアを横串でどう一体感を表現するかということをテーマとして注力し始めている。個別のメディアに関しては様々な施策を打ち始めている。テレビは佐世保と東京の2拠点で番組制作を行う体制に改めてより強化していく。紙媒体では色々なチャレンジをすでに始めている。カタログでは発行スパンやページ数を変えたり、企画を増やしたりなどし、よい結果が出てきている。
面白い取り組みとしては、当該月に誕生日を迎えるお客様に送付するダイレクトメール(DM)だ。今年2月から通常のDMとは変え、4枚綴りで1枚1枚めくっていく凝った形式にした。掲載商品も人気商品をそろえ、価格もお得感のある特別価格で紹介しているが、毎月、売れ行きを見ながら、掲載商品の入れ替えを細かく行ったり、特定の商品を購入した方に3~4点の中から1つをプレゼントとしてお渡しする企画『選べる誕生日セット』も同じく反応を見ながら商品の入れ替えを行っていることなどで明確な結果が出てきている。4枚綴りのDMの形式は割高になるため、採用するか悩んだが、これにより特別感が醸成できたことは大きいと思う。
新しいチャレンジとしては食品ギフト専用カタログ『ジャパネット美味倶楽部 夏の贈り物』を創刊した。6月に一部のお客様に絞って、商品同梱で数万部だけ配布した。当社は家電中心でお客様の年間購入回数は多くなく、もう少しお客様との接点を持ちたいこともあり食品を強化したのだが、普通に食品を販売するのでは面白くない。このカタログでは『本当にお世話になった人に厳選した特別なものを贈る』というコンセプトのもと、全国からカニやウニなど海産物や松坂牛などの高級牛肉、マンゴーやメロンなどのフルーツ13点を厳選して掲載した。美味しさが伝わるように掲載する写真もこだわった。掲載商品は同じだが、コピーや価格の表記の仕方などジャパネットらしい表現を用いたものと、当社の色を極力出さないシンプルな内容の2パターンのカタログを作成し、配布するテストも行った。当社が食品を販売しているというイメージがなかったことなどもあり、『まだまだこれから』という結果だったが、トライアルとしては様々なことが分かった。今後もテレビと連動させつつ、継続していきたい」
――以前から自身が統括してきたネット販売の状況は。
「各メディアの一体感に注力している中で、当社の通販サイトの"個性"をどう出していくべきなのか。双方向性やリアルタイム性、ロングテールなどネットの特性を活かし、個性を出せば出すほど、ネットだけが尖り、他媒体とのバランスが崩れ、一体感が損なわれる可能性もある。そのあたりも含めて、当社らしいネットの役割を模索しているところだ」
――今年から6社体制とした理由の1つに各事業会社で積極的に若手や外部の人材を一定レベルの役職に登用し、未来のジャパネットを支える人材を育成する狙いがあった。人材育成の進捗は。
「この半年で"スイッチが入った"と思う社員は確実に増えてきており、今後が楽しみなメンバーも出てきている。部長職やシニアリーダーの数は昨年の2倍くらいにはなっている。仮に現時点ではそのレベルに到達していない人材でも可能性がある者には積極的に責任あるポジションに就かせて経験を積ませて育成していきたい。人材に関してはこの1年は胎動期だと思っている。積極的に採用活動を行い、優れた社員も多く入ってくる一方で、もちろん、環境が変わることで退職する人もいる。大きな変革の際には当然、起こり得ることだが、この1年は整備期間と考えて、しっかり取り組んでいきたい」
――下期(7~12月)の出足はどうか。
「非常によいスタートが切れている。中でもエアコンの売れ行きが好調で7月月次売上高は前年同月を上回っている。エアコン以外でも例えばタブレットの売れ行きなどもすごくいい。また、テレビに関しても、『4K』など期待できる商品が出てくるなど再び波を感じている。改めてきちんと良い商品を厳選して拡販を強化していきたい」
――改めて今後の方向性を伺いたい。
「今年は新しいことというよりは、これまでやってきたことを伸ばすための試みや仕組み作りを行ってきた。これまで商品や番組、MCというところで勝負していたがそこにマーケティングや企画の要素を入れたりなどだ。しかし、来年は創立30周年となる記念の年ということもあり、『ジャパネットが新しくなってきた』と思ってもらえるようなことをどんどんしていきたいと思う。例えば、『クルーズ旅行』などの販売も検討している。実は今年のキャンペーンでお客様100人に7日間のクルーズ旅行へご招待したのだが皆様から非常にご好評いただけ、手ごたえを感じている。バイヤーにも話しているが『店で売れている』という理由で当社でも販売し、当社がシェアを取っても意味がないと思っている。それでは"ジャパネットらしさ"がないからだ。どこでも買えるものでは価値は生めないが、当社が徹底的に調べ、これがよいと厳選できるものであれば、マンションでも車でも良いものであれば何であれ、自信を持って皆様に優れた商品とその価値を伝えていきたい。
私は髙田明という経営者が1つの商品にこだわって、またそれをどう伝えればよいかに全力で取り組んでいる姿をずっと見てきた。私も早くそういう経営者になりたいと思うし、父のそうした姿勢は今後も変えず、むしろより強固なものにしていきたい。そのために私は早く土台、環境、組織を固めて、それぞれの会社、社員がすべきことを自発的に行い、回っていくようにしたい。そうなれば『世の中に埋もれた良い商品を発掘し、その最大限の価値を伝える』ということにこれまで以上に最大の力を注げる会社になっていけるはずだ。皆の力でそうなっていきたいと思う」