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リコム騒動の舞台裏㊦ 露呈した「表示主体者」の死角

2010年 3月18日 10:36

 シャンピニオンエキスの機能性の「合理的根拠」を巡り、健康食品販売会社7社への排除命令では「根拠がない」と断じる一方、リコムの審判請求には「機能性自体を判断していない」と玉虫色の決着で幕を引いた一連の騒動。このように公取委の判断が分かれる背景には小売業者を対象にせざるを得ない景品表示法の運用の難しさがある。

 景表法運用の難しさ。その根幹には「表示主体者」の捉え方がある。要は"誰が表示を作成し、表示を行った責任者なのか"という点だ。この判断は個別の事案によって常に相違があり、一貫性はみられない。これは過去の事例にみてとれる。

 例えば2004年、「ルーマニア製」のズボンを「イタリア製」と表示して販売していたケースでは、小売業者5社と共に卸元の八木通商もその責任を問われている。不当表示の背景に品質表示に関する八木通商の管理ミスがあったためだ。
 
 ただ、この事案については卸元のミスによる誤表示にも関わらず、小売業者まで重い処分を受けるのはおかしいという趣旨で小売業者五社が審判請求を行っている。
 
 一方で同年、レトルトカレーの産地表示を巡り、セシールとベルーナが排除命令を受けた事案では、表示主体者は小売業者とされ、卸元のジャルックスは不問に付されている。この件では、卸元にも注意責任があったとしてセシールが損害賠償を求める訴えを起こしてもいる。
 
 このように個別の事案により分かれる「表示主体者」の判断が引き金となって紛争に発展するケースもあり、その判断は非常に難しいものであることがうかがえる。
 
 今回のケースを振り返ると、処分を受けた事業者の中で公取委に異論を唱えた事業者はいない。
 
 一方で、「表示主体者」ではないリコムは「処分を受けた7社に独自に追加試験を実施したところもあるだろうが、根幹には当社の試験データがあるはず」と、自社保有の試験データの正当性を主張して審判請求を行っている。過去に紛争に発展した事例があることを踏まえれば、企業としての信頼を回復するため、正当性を主張せざるを得なかった事情もあるだろう。

 だが公取委は「排除命令はあくまで七社の提出資料を基に判断している」として、「表示主体者」ではないリコムの主張に対する判断を避けている。

 これは景表法の問題点を改めて浮き彫りにしたものでもあるだろう。「表示主体者」の判断は個別の事案ごとの調査のレベルが影響しており、公取委の裁量に委ねられることを避けられない。これが景表法の運用を複雑にし無用な混乱を招く元になってもいる。

 一方で、健食の販売事業者にとっても対岸の火事とはいえない。健食表示を行う際、製造元や卸元が示すデータを「根拠」とするケースは少なくないためだ。

 昨年9月以降、景表法を所管する消費者庁は、「そもそも販売事業者は自らが扱う商品の根拠を持つ責任がある。(機能性を)第三者機関で確認していれば客観的な判断は可能なはず。(表示に根拠づけをするのではなく)裏付けに沿った表示をすれば問題は起きない」(表示対策課)と、審判請求を巡る騒動について話す。

 今回の騒動は、小売業者に自らの取り扱う商品について、製造元や卸元に依存しないチェック体制の強化を強く求めている。一方で、景表法を運用する消費者庁に「表示主体者」を巡る問題について、前例を踏まえた対応を突きつけてもいる。

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