集英社は、新聞広告の活用やウェブ上の各種キャンペーンなどで新規客の開拓が順調に進んでいる。今期(2015年5月)は、ハイブランドを扱う「ミラベラ」で新たにメンズ商材の扱いを始めるなど攻めの一手を打つ。
前期では、消費増税対策として3月発行の雑誌で通販ページを増やしたり、送料無料や返品・交換無料キャンペーンなどを実施して駆け込み需要をとり込んだ。
主力のファッション誌「エクラ」では3月発刊号で通販ページを通常の36ページから56ページに拡大。20ページ増やしたほどの売り上げ拡大にはつながらなかったものの、高額商品のテストや、既存顧客よりも若い層向けの施策も実施して一定の成果を得たようだ。
高額品についてはスイスの時計ブランド「ベダ&カンパニー」とコラボした30万円以上の腕時計を販売し10本以上が売れるなど、購買力の高い顧客層の存在が改めて確認できた。一方の新規顧客開拓では送料無料、返品・交換無料キャンペーンで通販への不安を払拭した。また、色違い・サイズ違いの商品との交換を希望する消費者に対し、配送会社が新しい商品を届けるのと同時に玄関口で交換商品を引き取る取り組みを実施。二度手間にならない同サービスは昨年秋にテストしたところ顧客から支持され、売り上げへのインパクトもあったため再び導入した。今後もセール期以外は実施する考え。
雑誌社ならではの企画では、服と一緒に雑誌を購入すると送料無料になるキャンペーンも反響があ
り、ファッション商材だけでなく、雑誌の"ついで買い"を促せる施策となっているようだ。
同社は認知拡大を目指して新聞広告も活用する。何度か「エクラプレミアム」の15段カラー広告を毎日新聞に掲載しているが、今年3月にもテストを実施。新聞を活用した衣料品通販専業との差別化を図るため、誰もが知っているブランドとのコラボ商品を投入したことが奏功した。
従来は、雑誌で有名なスタイリストを前面に出すなどしていたが、3月の広告では人気ブランド「セオリーリュクス」とのコラボ商品で勝負。価格より分かりやすさを重視したほか、キャンペーンの告知を小さくまとめるのではなく、「送料無料」「返品・交換無料」「クーポン使えます」の文字を目立たせるなど通販としては王道の手法が効いたようだ。
また、同社はオリジナル商品も好調だ。雑誌「Lee」のオリジナルブランド「トゥエルブクローゼット」では、襟にワイヤーが入ったギンガムチェックシャツ、スタイリストの福田麻琴さんとコラボしたバッグなどが大ヒットした。最近では、雑誌「マリソル」の独自ブランド「エムセブンデイズ」で新しいカテゴリーとして通勤服をクローズアップ。「日経ウーマノミクス・プロジェクト」と組み、互いの会員にアンケートをとって1000人以上の働く女性の声を反映させた通勤服が売れているという。
今期は、昨年8月にジュピターショップチャンネルから譲り受けた通販サイト「ミラベラ」を強化し、柱事業のひとつに育成する。今年2月末には譲受前と同水準の約100ブランド体制を整え、本格始動しているが、15年1月に「ミラベラ・オム」を開設し、メンズ商材の販売を始める。
女性向け商材は集英社の雑誌「シュプール」と連携を深め、雑誌ウェブサイトとのコンテンツ連動などを図っているが、メンズでは同社の男性ファッション誌「ウオモ」内に「ミラベラ・オム」の名称で初めて通販ページを設ける。
開設時のブランド数は約20で、レディースで取り引きがある企業のメンズラインや新規ブランドを扱い、レディースとメンズで回遊できるサイトを目指す。これに先駆け、今年10~11月には人気ブランドとのコラボ商品などを展開し、新規会員を集める。
ターゲットは可処分所得の高い40歳程度の男性。国内にはメンズのハイブランドを扱う通販サイトは少ないことから、雑誌社のセレクト力と企画力で勝負する。課題である男性客の開拓につなげる狙いもあり、15年5月期にはレディースとメンズを合わせたミラベラ事業で10億円弱の売上高を目標とする。
なお、同社の通販売上高は前期の36億円弱(見込み)に対し、今期は45億円を目指す。