小学館(本社・東京都千代田区、相賀昌宏社長)は通販事業が成長軌道に乗り、黒字体質を確立している。今年9月~12月には百貨店などに期間限定店を相次ぎ開設し、通販ブランド「大人の逸品」の認知度向上を図る。
同社は、月刊の男性誌「DIME(ダイム)」と「BE―PAL(ビーパル)」「サライ」の3誌に毎号、通販ページ(4~6ページ)を設けてオリジナルアイテムや仕入れ商品を読者に提案。3誌の発行部数は合計50万部に上る。
また、年4回程度、通販カタログ「大人の逸品」(B5判・100ページ)を付録として3誌に入れている。加えて、過去の購入者など15万人の優良顧客に配布するダイレクトメールは年6回で、「大人の逸品」と50~70代女性向けの通販カタログ「佳人手帳」を一緒に届けている。
3誌の中でも「サライ」の読者が商品を一番購入しているため、カタログの商品構成も同誌の読者層(60~70代)を対象にした商材が多いという。
同社の通販は元々、雑誌で紹介する商品を買える場所が限られていたため、読者サービスの一環としてスタート。「読者は何か良いモノはないかと雑誌を見ており、購入意欲が高い消費者でもある」(廣田晋通販事業室室長)ということが確認できたためカタログ発行回数とページ数を増やした結果、この5年間で通販売り上げが倍増し、黒字体質を築いたという。
小学館は通販事業室のほか、3誌に通販担当の編集者を配置。バイイングやフルフィルメントなどを担う小学館集英社プロダクションと共同で通販事業を展開している。
顧客は85%が男性客。「DIME」には商品の申し込み用紙をつけておらず、雑誌の発刊と同時に更新する通販サイトに送客している。「BE―PAL」は5割、「サライ」も2割強の顧客がネット経由で購入している。
MD面は、他では買えないオリジナル商品を充実。消費者も量販店にあるようなモノではなく、ストーリーのある商品を購入する傾向が強く、最近では、自宅で本格的な鉄板焼きが楽しめる「極厚鉄板」や、作務衣がヒット。客単価は1万5000円程度という。
リアル展開では、リゾートホテル「リゾナーレ八ヶ岳」(山梨県)に「DIME」と「BE―PAL」、ホテルを運営する星野リゾートがコラボし、休日の過ごし方を提案する店舗「休日研究所」を3年前に開設。バーカウンターでお酒を飲みながらリラックスした状態で商品を選んでもらい、代金はチェックアウト時に一緒に支払えるようにするなど、遊び心のある店舗運営も行っている。
この「休日研究所」のコンセプトに共感したのが老舗百貨店の松屋で、2011年と12年には同社の要請を受けて銀座松屋の紳士服売り場に「休日研究所」の期間限定店を出店した。今年は6月10~25日まで、父の日商戦に合わせて「男の雑貨道」というネーミングで銀座松屋に出店。ハンカチやネクタイといった父の日の定番アイテムではなく、金属板を組み立てるとカブトムシになるキットや、芝生を素足で歩く感覚が得られる草サンダルなど一風変わったアイテム30点を販売したという。
出版社の"目利き力"は他の大手小売りにも魅力的なようで、今秋からは三越伊勢丹の8店舗と東急ハンズ2店舗に「大人の逸品」の看板を掲げ、キャラバン形式で売り場を設けることになった。
三越伊勢丹は9~12月にかけて立川伊勢丹、浦和伊勢丹、JR京都伊勢丹、仙台三越、府中伊勢丹、新潟伊勢丹、相模原伊勢丹、松戸伊勢丹の各店紳士服売り場で2週間程度開催。東急ハンズは9月に三宮店、11月に名古屋店の「男の書斎コーナー」でそれぞれ3週間程度開設する。
期間限定店の取り組みは誌面とも連動。例えば東急ハンズ三宮店の販売員には「大人の逸品レビュー隊」として参加してもらい、誌面やウェブ上で商品を紹介する。
一方のウェブ施策については、今年6月1日に通販サイトをリニューアルして利便性の改善に努め
ているが、今後は出版社として読み物、エッセーなどのコンテンツを展開し、滞在しやすいサイト設計を目指す。
また、8月をメドに通販サイトにラジオ機能を実装。ジャズを聴きながら書斎感覚で気持ちよく買い物をしてもう。曲目はスタンダードナンバーのほか、オリジナル曲も用意するという。
小学館では、新たなウェブ施策や期間限定店を通じた認知度向上などにより、通販売上高は13年2月期の14億円弱に対し、今期(14年2月期)は16億円を計画する。