「ネットショップ担当者フォーラム2012」(インプレスビジネスメディア主催)が12月6~7日に都内で開催され、JFRオンラインの榎本朋彦社長は基調講演で、通販サイトでの顧客との絆作りをテーマに講演した。同講演から一部抜粋して紹介する。
◇
当社、JFRオンラインは2011年3月にJフロントリテイリンググループの通販事業を再編して始動した企業だ。カタログ通販がメーンだが、ネット販売の強化は次の成長には避けて通れない課題と認識している。
百貨店の歴史からすると、ネット販売は誕生から20年足らずのビジネスで、まだまだ成長過程。実際、儲かっていない企業がほとんどで、成長に中身(利益)が伴っていないのが実情だろう。
企業側は、ネットを活用して広く浅く消費者にアプローチしたいのに対し、消費者は膨大な情報の中から正確かつ必要なものだけを欲しがるというギャップが
生じており、企業は顧客の本質に迫りきれていない。顧客のロイヤルティを高める手段が確立しておらず、攻め口を見極められないために価格競争に陥っている
のではないか。
百貨店のネット販売に目を向けても、11年度の百貨店各社のネット販売売上高合計は283億円強で、百貨店売り上げ全体の1%にも満たない。米国では百貨店のEC化率は4・7%で、日本とはだいぶ差がある。
百貨店は長年かけて積み上げてきた信頼に基づく「のれん」と「対面販売」が強みなのに対し、ネット販売は「システム力」と「非対面販売」で成長してい
る。一見するとまったく別の商売と考えがちだが、そうではない。消費者が買い物をするときに求めるものは店舗でもウェブでもそんなに変わらないはずだ。
強い顧客のロイヤルティ作りはネット販売事業の強化には不可欠。当社でも、オンライン会員に登録しているだけの顧客よりも、化粧品通販サイトや携帯メー
ルでも会員登録している重複会員の方が客単価は高く、グループを挙げて顧客を深耕することの重要性が数字にも表れている。
また、当社では顧客の「流入増」よりも「流出減」に重きを置いている。なぜなら、売り上げや買い上げ頻度に対する上位顧客の貢献度は高く、新客開拓のコストよりも流出防止コストの方が、効用が高いからだ。
今後、顧客に対するデジタルなアプローチは多様化してくるし、もちろん対応していかないといけない。ただ、アナログのアプローチも同様に重要になる。
実店舗の例になるが、消費者は行列に並んで商品を購入するのは嫌だと言うが、実際には並んでいる店で買う方を好む。また、店頭の販売スタッフに声をかけ
られるのを嫌うものの、放っておかれるのも嫌だと言う。消費者というのは、わがままな存在であるということ前提に、ホスピタリティーをもってパーソナルに
対応できる力が求められている。
当社も、ネット販売が「業界」ではなく「業態」として成り立つまでに、百貨店ならではの高いロイヤルティの構造を構築したい。
多くのネット販売実施企業にとって、百貨店の考え方は参考にならないかもしれないが、大丸の企業理念である「先義後利」(※道義を先にして利益を後回しにすること)は事業を行う上で大切な心構えだ。恐らく、顧客への向き合い方としては、ネット販売でも大差はないはずだ。
◇
当社、JFRオンラインは2011年3月にJフロントリテイリンググループの通販事業を再編して始動した企業だ。カタログ通販がメーンだが、ネット販売の強化は次の成長には避けて通れない課題と認識している。
百貨店の歴史からすると、ネット販売は誕生から20年足らずのビジネスで、まだまだ成長過程。実際、儲かっていない企業がほとんどで、成長に中身(利益)が伴っていないのが実情だろう。
企業側は、ネットを活用して広く浅く消費者にアプローチしたいのに対し、消費者は膨大な情報の中から正確かつ必要なものだけを欲しがるというギャップが 生じており、企業は顧客の本質に迫りきれていない。顧客のロイヤルティを高める手段が確立しておらず、攻め口を見極められないために価格競争に陥っている のではないか。
百貨店のネット販売に目を向けても、11年度の百貨店各社のネット販売売上高合計は283億円強で、百貨店売り上げ全体の1%にも満たない。米国では百貨店のEC化率は4・7%で、日本とはだいぶ差がある。
百貨店は長年かけて積み上げてきた信頼に基づく「のれん」と「対面販売」が強みなのに対し、ネット販売は「システム力」と「非対面販売」で成長してい る。一見するとまったく別の商売と考えがちだが、そうではない。消費者が買い物をするときに求めるものは店舗でもウェブでもそんなに変わらないはずだ。
強い顧客のロイヤルティ作りはネット販売事業の強化には不可欠。当社でも、オンライン会員に登録しているだけの顧客よりも、化粧品通販サイトや携帯メー ルでも会員登録している重複会員の方が客単価は高く、グループを挙げて顧客を深耕することの重要性が数字にも表れている。
また、当社では顧客の「流入増」よりも「流出減」に重きを置いている。なぜなら、売り上げや買い上げ頻度に対する上位顧客の貢献度は高く、新客開拓のコストよりも流出防止コストの方が、効用が高いからだ。
今後、顧客に対するデジタルなアプローチは多様化してくるし、もちろん対応していかないといけない。ただ、アナログのアプローチも同様に重要になる。
実店舗の例になるが、消費者は行列に並んで商品を購入するのは嫌だと言うが、実際には並んでいる店で買う方を好む。また、店頭の販売スタッフに声をかけ られるのを嫌うものの、放っておかれるのも嫌だと言う。消費者というのは、わがままな存在であるということ前提に、ホスピタリティーをもってパーソナルに 対応できる力が求められている。
当社も、ネット販売が「業界」ではなく「業態」として成り立つまでに、百貨店ならではの高いロイヤルティの構造を構築したい。
多くのネット販売実施企業にとって、百貨店の考え方は参考にならないかもしれないが、大丸の企業理念である「先義後利」(※道義を先にして利益を後回しにすること)は事業を行う上で大切な心構えだ。恐らく、顧客への向き合い方としては、ネット販売でも大差はないはずだ。